1999年度専門委員会関係活動報告
SC34専門委員会(文書の処理と記述の言語: Document Processing and Description Languages)

小町 祐史 (松下電送システム(株))

1. 概要

1.1 国際会議と参加状況

SC34総会(1999年4月19日〜23日,Granada, Spain):
9ヶ国から20名(日本から2名)が参加した.
SC34総会(1999年11月29日〜12月3日,Philadelphia):
5ヶ国から13名(日本から1名)が参加した.

1.2 投票件数等

FDIS投票 2件
(ISO/IEC FDIS 13250, ISO/IEC FDIS 15445)
FCD投票 1件
(ISO/IEC FCD 13240)
PDAM投票 2件
(PDAM3 to ISO/IEC 9541-1, PDAM1 to ISO/IEC 9541-2)
PTC投票 1件
(TC to ISO/IEC TR 9573-13)
Periodic Review 2件
(Periodic Review ISO/IEC 9541-3, Periodic Review ISO/IEC 10180)
規格出版 2件
(ISO/IEC 13250, TC2 to ISO 8879)

2. 各WGのプロジェクトの活動

2.1 WG1 マーク付け言語

(1) SGML(ISO 8879, 標準一般化マーク付け言語)

SGML改訂の議論を継続して行っている.改訂版の主要部分のテキストを作成し, SGMLの構文解析モデルに関する議論を行って, モデルの一部であるトークナイザの役割を表形式で表現してその機能を確認した.

(2) SMDL(ISO/IEC 10743, 標準音楽記述言語)

DIS投票で承認されているにもかかわらず, 諸般の事情によって出版が遅れているので, 早急に対応をとることが議長から事前に指示され, 最終テキストの作成が課題となった.そこでエディタを含む数名が11月の会期中に議論を行い, DIS投票コメントを反映した最終テキストの作成作業を行った.

注1: SMDL
 SMDLは, HyTimeの応用であって, 音楽情報の交換を目的とする.HyTimeに対して, 音楽構成子を表す特定の体系形式を追加している.

(3) SGMLシステム適合性試験(ISO/IEC 13673)

これもDIS投票で承認されているにもかかわらず, 諸般の事情によって出版が遅れているため, 議長からの指示に基づいて, 最終テキストの作成を行った.エディタを含む数名が11月の会期中に議論を行い, DIS投票コメントを反映した最終テキストを完成した.

2.2 WG2 情報表示

(1) フォントサービス(ISO/IEC TR 15413)

DTR投票のコメント対処の文書を作成し, SC34の承認を得た後, 最終テキストを作成して11月にセクレタリアートに提出した.TRの出版はまだ行われていない.

注2: フォントサービス
 フォント情報交換規格が規定するフォントリソースにアクセスするためのサービスインタフェースを規定する.1998年11月に,TRをターゲットとするプロジェクトが認められ,DISテキストを編集し直したDTRテキストの配布が承認されて, 1999年3月期限の投票でISO/IEC DTR 15413が承認された.

(2) フォント情報交換(ISO/IEC 9541)

AM3 to ISO/IEC 9541-1およびAM1 to ISO/IEC 9541-2の2件について, PDAM投票結果に示されたコメントへの対処を行い, それを反映したDAMテキストを作成した.これらのDAMテキストについては, DAM処理のためにセクレタリアートに送付することが承認されている.

注3: AM3 to ISO/IEC 9541-1
 フォントリソースのデータ構造を規定するISO/IEC 9541-1に対して, 多言語文書の記述に用いられるフォント属性を追加する.
注4: AM1 to ISO/IEC 9541-2
 ISO/IEC 9541-1のAMで追加したフォント属性の交換フォーマットを規定する.

(3) フォント関連オブジェクトの登録

Unicode Consortiumは, ISO/IEC 10036の登録業務をAFIIから引き継ぐことをISOに要求し, 承認された.その際にISO/IEC 10036に規定されたすべての業務を引き継ぐことを確認する日本からの要求が提出されたが, Unicode Consortiumからの回答がなかった.その後, Unicode Consortiumは登録要求が少ないことを理由として, この業務を終了することを宣言し, ISO/IEC 10036の廃止をSC34に求めてきた.

11月のSC34総会で本件の議論を行い, ISO文書の廃止をリエゾン組織が求めるのは手続きとして不適切であり, 次の定期見直しにおけるNational Bodyの回答に基づくべきであることを確認した.さらにISO/IEC 10036の登録業務を日本のどこかの組織が引き継いでくれないかとの打診があり, 2000年6月までにその決定を求めることになった.

(4) SPDL(ISO/IEC 10180, 標準ページ記述言語)

SPDLの見直し期限が近いため, SC34議長は11月のSC34総会前にエディタに会い, 彼らが今後ともSC34に参加できないことを確認し, SPDLが業界で利用されていないことも確認した.しかし, SPDLが各国の国内規格に採用されていること, SPDLのコンセプトはDPA(ISO/IEC 10175)などに導入され, DPAのライト版であるIPP(Internet Printing Protocol)を採用したプリンタが市場に出ていることも確認した.

そこで, SPDLのメンテナンスを行うエディタを求めることとし, 2000年における5年毎の定期レビューでは, National Bodyがメンテナンスのエディタを提供することを条件として, ISO/IEC 10180:1995を再確認することを勧告した.

(5) DSSSL(ISO/IEC 10179, 文書スタイル意味指定言語)

カナダから既存のDSSSLを拡張してDSSSL-2を作る提案があり, エディタを引き受ける用意があることが通知されていたが, 11月の会議には急な予定が入って参加できなかったため, この議論は次回に延期されている.

2.3 WG3 情報関連付け

(1) TM(ISO/IEC 13250, トピックマップ)

4月の会議では, FCD投票のコメントをレビューし, 対処文書を承認した.日本のコメントはすべて受理された.日本からの追加コメントについても議論し, 新テキストに反映されることになった.

新テキストに対するFDIS投票は, 11月期限で行われ, 承認された.国際規格ISO/IEC 13250は, 2000年1月に出版された.

注5: TM
 いくつものハイパリンクをもつ電子文書においてはインデクス対象を一貫性をもって記述する必要があり,この規格は,関連する文書セットとそこでのインデクス対象としての共通トピックを識別するための体系形式を規定し,関連するトピック間の関係を規定する.
 この課題に関するこれまでの議論は,1994年から始まったGCAの"Conference on the Application of HyTime"において行われてきた.日本は当時からこのConferenceに参加して,動向を把握してきた.議論に際しては,市販のHyTimeエンジンを内蔵した処理系(EnLIGHTen)による動作デモが行われている.
 1996年には本件のNPに関する審議が行われ,CDと共にNPの投票を行うことが決まり, 1999年2月期限のFCD投票の結果,ISO/IEC FCD 13250が承認された.

(2) PDML(プロダクトデータマーク付け言語)

PDM(product data management)システム, ERP(engineering resource planning)システムおよびその他の情報管理システムの間のプロダクトデータ情報交換を容易にするために, TC184/SC4とリエゾンをとりつつXMLを用いてPDMLを開発するというNP提案が4月のSC34総会に提出された.

その後, TC184/SC4においてWD 10303-28(Product data representation and exchange: Implementation methods: XML representation of EXPRESS-driven data)の作業が開始されたため, PDMLに関するNP提案は取り下げられた.

(3) ISMID(ISO/IEC 13240, マルチメディア対話形文書)

4月の会議でUSおよびUKのコメントをレビューし, 対処文書を作成した.これに基づいてFCDテキストが作成され, 9月期限のFCD投票によって承認された.FCD投票コメントへの対処と新テキスト作成は, まだ行われていない.

注6: ISMID
 ISMIDは,ユーザを含む環境との対話によって動的に内容表示を変化させるマルチメディア対話型文書の交換アーキテクチャを,ISO/IEC 10744:1997のHyTimeを使って規定する.
 マルチメディア対話型文書は,ハイパリンク文書であるSGML及びHTMLの機能に加えて,文書に対するその読者の動作(刺激)に対応して,動的に文書内容の表示の仕方(例えば,体裁,表示順序,リンクの たどりなど)を変える文書のことである.この変化を生成するためには,刺激に対する応答の動作をスクリプトとして記述するのだが,これにはISO/IEC 10179:1992 DSSSL,既存のスクリプト言語など,様々な言語を使用できるように工夫されている.対話的な,電子マニュアル,電子カタログ,電子教材など,幅広い応用が見込まれている.

(4) ISO-HTML(ISO/IEC 15445, ハイパテキストマーク付け言語)

4月の会議では, FCD投票のコメントをレビューし, 対処文書を承認した.日本のコメントはすべて受理された.著作権表示についてのUKコメントに対応するため, エディタがISOと相談した結果が示され, 規格文書からは外すことになった.

新テキストに対するFDIS投票は, 11月期限で行われ, 承認された.国際規格ISO/IEC 15445のPDFテキストは, 2000年1月に公開されているが, ハードコピー出版物はまだ発行されていない(2000年4月現在).

注7: ISO-HTML
 W3C(World Wide Web Consortium)のHTML4.0勧告の節2, 5〜15, 17, 24の規定をそのまま追認する.
 この課題は1996年5月に提案され, 同年10月を期限とするNP投票の後, エディタは各National bodyとリエゾン組織からHTMLエキスパートを招集し, Online会議を行って, CDを用意した.
 1997年7月を期限とするCD投票では, 日本はW3CのHTMLと異なる内容であることを理由に反対した.対処の会議ではこの日本のpositionが歓迎され, CDテキストを大きく修正してW3CのHTML勧告をそのまま参照する体裁にすることが指示された.1998年7月には修正案がグループ内でのレビューを受け, そのコメントを反映したものが,1999年2月にFCD投票にかけられ, ISO/IEC FCD 15445が承認された.

(5) HyTime(ISO/IEC 10744, ハイパメディア及び時間依存情報の構造化言語)

第2版のHyTime(ISO/IEC 10744:1997)が出版された後, XML(Extensible Markup Languagde)への整合を考慮した修正原案(PDAM1)が提案された.これは, 1998年3月を期限とする投票を受け, 1998年5月に投票結果のコメント対処を行ない, DAM1テキストを作成したが, その内容検討はなお継続中である.1998年5月には, 技術訂正案(PTC1)も作成されたが, その投票はまだ行われていない.

注8: AM1 to ISO/IEC 10744:1997
 HyTimeは, 体系サポート宣言を定義し, SGML文書がどの体系を使用しているかを宣言することを可能にする.体系は記法として宣言し, その体系に関する特性はその記法のデータ属性によって表現する.しかし, データ属性をサポートせず, DTDをもたないSGML文書(例えば, XML文書)においては, 記法宣言を書けず, 体系を使用できない.そこで, このPDAM1は, 体系使用宣言処理命令(architecture use declaration processing instruction)という処理命令を用いて, 体系サポート宣言と等価な宣言を書くことを可能にする.
注9: PTC1 to ISO/IEC 10744:1997
 3., 6., 7., 8., 9., A., C.の記述の一部を訂正する.