2001年度専門委員会関係活動報告
SC34専門委員会(文書の処理と記述の言語: Document Processing and Description Languages)

小町 祐史 (松下電送システム(株))

1. 概要

1.1 担当範囲と組織構成

SC34は, 広義の文書情報の交換に用いられる文書データの構造記述, ハイパリンク記述, スタイル指定, フォーマット済み文書記述およびそれらに必要なフォント情報に関する標準化を行う.議長は, J. Mason(US).13ヶ国のPメンバと4ヶ国のOメンバが参加して, 次のWGが組織されている.

WG1(マーク付け言語) -- コンビナ: C. Goldfarb(US)
SGMLに代表される情報記述言語およびそれに関連するサブセット, API, 試験, 登録などの規格を担当する.

WG2(情報表示) -- コンビナ: 小町祐史(日本)
文書のフォーマティング, フォント情報交換, フォーマット済み文書記述およびそれらのAPIを規定する規格を担当する.

WG3(情報関連付け) -- コンビナ: S. Pepper(Norway)
文書情報のリンク付け, 番地付け, 時間依存情報表現, 知識処理および対話処理を規定する規格を担当する.

1.2 国際会議と参加状況

SC34総会およびWG1, WG2, WG3会議(2001年05月19日〜24日,Berlin, Germany):
8ヶ国から19名(日本から5名)が参加した.
DIS 22250-1 Ballot Resolution会議(2001年08月08日〜09日, 新潟):
2ヶ国から4名(日本から3名)が参加した.
SC34総会およびWG1, WG2, WG3会議(2001年12月08日〜13日,Orlando, USA):
8ヶ国から20名(日本から4名)が参加した.

1.3 投票等

FDIS投票 1件
(ISO/IEC FDIS 13240)
DTR投票 2件
(ISO/IEC DTR 22250-2*, ISO/IEC DTR 19758*)
CD投票 3件
(CD 19756, CD 19757-0, CD 19757-2)
PDAM投票 1件
(PDAM1 to ISO/IEC 19179)
NP投票 2件
(Topic Map Constraint Language, Document Schema Definition Language)
PTC投票 2件
(TC1 to ISO/IEC 13250, TC1 to ISO/IEC 15445)
規格出版 3件
(TC1 to ISO/IEC 10180, ISO/IEC TR 22250-1, ISO/IEC 13240)
*: 投票期限は2001年度(5月)であるが, 投票案の国内審議は2000年度に行った.

1.4 日本担当のEditorの変更

2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 WG1(マーク付け言語)

(1) 文書スキーマ定義言語(DSDL)

ISO/IEC 13250およびISO 8879を支援する文書スキーマ定義言語(DSDL)のNP提案が投票で承認された.このNPには規格素案の添付がなかったため, 日本はこの規格で規定しようとしている内容が不明確であるとして, Q.2以降をabstainとした.

英が提案する内容に対して各国の反対があり, 再構成の議論の結果, XML Schema, RELAX名前空間, RELAX NG(Grammar-oriented schema languages)等の既存のスキーマ関連規定を含むマルチパートの規格としてDSDLを構成することになった.

パート0は, DSDL全体に関する規定を与える. パート1はRELAX名前空間に基づき, パート2はRELAX NGに基づく.パート3はXML Schema Part2に基づく.パート4はSchematronに基づき, パート5はXML Schema Part1及びPart2に基づく.

エディタに関する議論の結果, Ken Holmanがパート0(Overview), James Clarkと村田真がパート2(RELAX NG)のエディタに指名された.パート1(Framework)については, Ken Holman, James Clarkおよび村田真が名乗りをあげ, 参加者の合意が得られた.

12月の会議での議論に基づいて, パート0のCDテキストが作成され, パート2については, OASISの規定文書"RELAX NG"をそのままCDテキストとして利用することになった.それらは, それぞれISO/IEC CD 19756-0, -2としてCD投票にかけられ, 承認されて次の段階に進むことになった.

(2) 規格文書のDTD(TR 9573-11)改訂

エディタ(小町祐史)はTR 9573-11改訂のためにISO中央事務局とリエゾンワークを行い, 改訂計画を文書化してSC34に提出した.SC34は, エディタに対してその計画に従ってPDTRを作成することを指示した.

この改訂計画は, TR 9573-11の翻訳として国内で公表された標準情報TR X 0004及びそれに対するスタイル指定の標準情報TR X 0013をマージしてJISとして制定するという日本規格協会における関連活動と同期し整合している.

この改訂案に対しては, 国際のSC34メンバから次の要望が提出されている.

2.2 WG2(情報表示)

(1) SPDL(ISO/IEC 10180, 標準ページ記述言語)

これまでに日本などから提出されていたDefect Reportに応えるために作成された技術訂正Cor.1の案は, 2001年4月を期限とする投票にかけられ, 承認された.5月の会議において, SC34はコメント対処を受理し, Cor.1の最終テキストを受理した.

TC1は, 2001年10月に発行された.

(2) DSSSL(ISO/IEC 10179, 文書スタイル意味指定言語)

以前よりカナダなどから提案されていたDSSSLの拡張要求に応えるために作成されたPDAM1の投票が行われ, 承認された.日本はこのPDAM1テキストに対して, technicalおよびeditorialなコメントを提出している.

12月の会議において, SC34は, PDAM1に対するコメント対処を受理し, エディタ(海田茂)に対して, それに従ってFDAM1テキストを作成し, それをセクレタリに送付することを指示している.

(3) フォント関連オブジェクトの登録(ISO/IEC 10036)

ISO Technical Management Boardは, ISO/IEC 10036に基づくフォント関連オブジェクトの登録機関としてGLOCOM(東京, 六本木)を任命する決定を行い, その旨が2001年7月にISO中央事務局からGLOCOMに通知された.

これを受けて, GLOCOMはフォント関連オブジェクトの登録活動を開始し, 2001年度内に99,000件を上回るグリフの登録要求を受け付けている.

この活動に基づき, ISO/IEC 10036に対する技術訂正Cor.2の要求が出されている.

2.3 WG3(情報関連付け)

(1) ISMID(ISO/IEC 13240, マルチメディア対話形文書)

ISMIDは,ユーザを含む環境との対話によって動的に内容表示を変化させるマルチメディア対話型文書の交換アーキテクチャを,ISO/IEC 10744:1997のHyTimeを使って規定する.このFDISテキストが9月の投票で承認され, 国際規格として発行された.FDISに関して, 日本は, 以前の投票での日本コメントがすべて反映されていることを確認し, 賛成投票を行った.

(2) TM(ISO/IEC 13260, トピックマップ)

ISO/IEC 13260に対する技術訂正Cor.1の案に対して, 9月に投票が行われ, 承認された.このCor.1には, トピックマップのJIS化作業において明らかになった修正すべき内容が含まれる.

(3) HTML(ISO/IEC 15445, ハイパメディアマーク付け言語)

ISO/IEC 15445に対する技術訂正Cor.1の案に対して, 11月に投票が行われ, 承認された.このCor.1の案に対して, 日本はeditorialなコメントを付けて賛成した.

(4) TM(トピックマップ)関連規格

2001年4月のNP/CD投票およびNP/PDTR投票によって, TM照会言語(ISO/IEC CD 18048)およびTM概念モデル(ISO/IEC PDTR 18049)が承認され, 9月のNP/CD投票によってTM制約言語(ISO/IEC 19756)が承認された.さらにTMデータモデルに関しては, 9月にコメント提出が求められている.日本はいずれに対しても多くのコメントを提出している.

これらの多くの関連規格の関係を整理し, 今後のプロジェクト作業を明らかにするため, 12月の会議ではTM roadmapを作成した.

2.4 Fast-Track提案

(1) RELAX Core(ISO/IEC TR 22250-1)

5月にDTR投票が終了し, 承認された.DTR投票において提出された各国のコメントに対応するため, 8月にballot resolution会議を開催し, disposition paperを作成した.

disposition paperに基づく最終テキストは, 9月に提出され, 2月にITTFから発行されている.

(2) RELAX Namespace(ISO/IEC TR 22250-2)

標準情報TR X 0044の英語版を, fast-track手続きを用いて, 10月にJTC1に提出した(エディタは, 村田真).

JTC1は, 11月に総会を開いて, fast-trackに関するこれまでの6ヶ月投票を改め, 30日レビューとそれに続く5ヶ月投票のルールを決定した.JTC1は, この新ルールを過去に遡ってRELAX NamespaceとDSSSL Libraryに適用した.日本は, この新ルールを評価しているが, それを過去の事象に適用することに疑義を提示し, 過去の事象にルールを適用することがすべてのルールを破壊する危惧をコメントした.

JTC1はISO中央事務局と相談し, 新ルールの過去への適用を適正としたことが, 後日JTC1から報告された.30日レビューについては特にコメントはなく, 2002年5月を期限とする5ヶ月投票に入った.

RELAXは, XML(拡張可能なマーク付け言語)ベースの言語の構文を記述するための機構を提供する.この原案は, RELAX Core(TR X 22250-1)に続くパート2に位置付けられ, RELAX Coreによる記述をいくつか組み合わせることによって,複数の名前空間を扱う.

(3) DSSSL Library(ISO/IEC TR 19758)

標準情報TR X 0010の英語版を, fast-track手続きを用いて, 10月にJTC1に提出した(エディタは, 長村玄および小町祐史).30日レビューについては特にコメントはなく, 2002年5月を期限とする5ヶ月投票に入った.

DSSSL Libraryは, 標準一般化マーク付け言語 SGML(ISO 8879)又はXMLで記述された複雑な構造化文書に対して, DSSSLを用いてフォーマット指定を行う場合に用いるDSSSLライブラリを提供する.このライブラリを用いることによって, DSSSL及び組版に関する専門的な知識を必要とせずに, フォーマットのDSSSL指定を行うことを可能にする.

この内容は, JTC1又はSC34のPメンバでない東南アジア諸国の文書にも密接な関係があるため, 2001年11月にCICC(国際情報化協力センター)の主催でネパールで開催された15th AFSIT(Asian Forum for the Standardization of Information Technology)でその参加者に紹介し, 議論とコメントをいただいた.それらは, ballot resolution会議で考慮する予定である.