1.4.2 SC34 RELAX標準化状況

小町 祐史
松下電送システム(株)

(1) 背景

文書型定義(DTD)はパーサで構文解析できないため, DTDを処理するツールを作りにくく, しかも基本的なデータ型を扱うことができない。そこで, この問題を解決できる言語が強く望まれていた。既にいくつかの提案が出されていたが, それらの共通機能を実現する標準的な規定として, XML正規言語記述(Regular Language Description for XML, RELAX)が考案された。

この活動は, 村田らによる小グループのものであったが, その成果を国際的な規定に位置付けるために, まず国内の標準情報(TR)としてオーソライズしてから, それをFast-track手続きによってISO/IEC JTC1に提出するという戦略を採用した。TR化の活動は, 日本規格協会のINSTACにおいて1999年から開始された。

(2) RELAXコア

最初の規定は, 単一の名前空間だけを扱うRELAXコアであり, TR X 0029として2000年5月に公表された。このTRは, XML文書の正規集合を記述するための言語を規定し, その文法は, XML文書で使用可能なタグ名, 属性名, 許される文字列, それらの可能な組合せを扱う。

TR X 0029の英語版は, 通産省工業技術院(当時)からISO中央事務局にFast-track提案され, ISO中央事務局がJTC1に対して2001年5月を期限とするDTR投票(DTR 22250-1)を指示した。

この投票に触発されて, それまで進捗がはかばかしくなかったW3CのXML Schemaの活動に大きな進展かあり, 急遽Recommendationが公表されるに至った。W3CのXML Schemaの公表を著しく加速化したことは, このDTR投票の副作用であったかも知れない。同時期に, J. ClarkがTREX(Tree Regular Expressions for XML)を発表したため, RELAXとTREXとの整合作業が進められて, RELAX NG(RELAX New Generation)としてOASISから発表された。

DTRは賛成多数で可決されたが, 各国からの投票コメントに対処するため, 2001年8月にBallot resolution会議を新潟の国際大学で開催し, Disposition paperを作成すると共に, 最終テキストの準備を行った。最終テキストは2001年9月に提出され, ISO/IEC TR 22250-1として2002年2月に発行された。

(3) RELAX名前空間

RELAX名前空間による記述は,幾つものRELAXコアによる記述を組合わせることによって,複数の名前空間を扱う。一部の名前空間について,RELAXコア以外の言語によって記述することもできる。

この規定は, TR X 0044として, 2001年7月に公表された。その英語版は, 情報規格調査会からJTC1にFast-track提案され, 2002年5月を期限とするDTR投票が開始された(JTC1 N6616, N6643)。このDTR 22250-2は, 賛成多数を得て可決された。Ballot resolutionは, 2002年12月を予定している。

(4) DSDL(文書スキーマ定義言語)への組込み

日本提案のRELAXに対する対抗策としてUKは, 文書スキーマ定義言語(DSDL)のNP提案をSC34に提出してきた。NP提案は承認されたが, 提案の後にUKから提出された作業ドラフトは, J. Clark, 村田らのエキスパートのレビューに耐えるものでなかったため, 2001年12月のSC34会議において, DSDLをマルチパート化して, XSL Schema, RELAX NGなどの既存の複数のスキーマ言語を含む規格とする方針が承認された。

DSDLのパート2としてRELAX NGが位置付けられ, OASISの仕様書の表紙だけをISOの体裁にしたCDテキストが, 2002年3月を期限とする投票にかけられた。これは反対なしで承認され, 2002年5月のSC34会議においてCD投票コメントの反映が行われて, 改訂テキストが配布された。

2002年5月のSC34会議では, DSDLのパート構成がさらに見直され, RELAX名前空間がDSDLの一部となることがほぼ決まった。この作業が早く進めば, ISO/IEC TR 22250-2の発行に代えて, DSDL(ISO/IEC 19757)のそのパートの発行を急ぐ方が適切かもしれない。