2008年度専門委員会関係活動報告
SC34専門委員会(文書の処理と記述の言語: Document Processing and Description Languages)

小町 祐史 (大阪工業大学)

1. 概要

1.1 担当範囲と組織構成

SC34は, 広義の文書情報の交換に用いられる文書データの構造記述, ハイパリンク記述, スタイル指定, フォーマット済み文書記述およびそれらに必要なフォント情報に関する標準化を行う.議長は,Sam G. Oh(韓国).2008年度末には,37ヶ国のPメンバと19ヶ国のOメンバが参加して, 次のWGが組織されている.

WG1(マーク付け言語) -- コンビナ: 2008年9月まで村田真(日本),それ以降,Alex Brown(英国).
SGML, XMLに代表される情報記述言語およびそれに関連するサブセット, API, 試験, 登録などの規格を担当する.

WG2(文書情報表現) -- コンビナ: 小町祐史(日本)
文書のフォーマティング, フォント情報交換, フォーマット済み文書記述およびそれらのAPIを規定する規格を担当する.

WG3(情報関連付け) -- コンビナ: P. Durusau(US).
文書情報のリンク付け, 番地付け, 時間依存情報表現, 知識処理および対話処理を規定する規格を担当する.

WG4(Office Open XML) -- コンビナ: 村田真(日本).
ISO/IEC 29500(OOXML)のメンテナンスを行い,OOXMLに関連するプロジェクトを傘下に置く.

WG5(文書の相互運用性) -- コンビナ: J. Lee(韓国).
異なるISO/IEC文書ファイルフォーマットで表された文書の相互運用性の原則と指針を開発する.

国内では, 24名の委員(エキスパート7名,オブザーバ1名を含む)で構成されるSC34専門委員会が, 関連する国内意見のとりまとめと国際への対応とを行っている.その傘下に,6名のメンバからなるSC34/WG2小委員会と,8名のメンバで構成されるSC34/WG3小委員会とがあり, それぞれフォント関連技術とトピックマップ関連技術に関する国際標準化の検討を行っている.

1.2 国際会議と参加状況

SC34総会およびWG1, WG3会議(2008年4月5日〜9日,オスロ, ノルウェー):
15ヶ国から37名(日本から6名)が参加した.
SC34/WG2会議(2008年3月31日〜4月1日,オスロ,ノルウェー):
2ヶ国から4名(日本から3名)が参加した.
SC34/Adhoc1会議(2008年7月21日〜22日,ロンドン,英国):
10ヶ国から20名(日本から1名)が参加した.
SC34総会およびWG1, WG2, WG3会議(2008年9月28日〜10月1日,チェジュ, 韓国):
15ヶ国から40名(日本から5名)が参加した.
SC34/WG4会議(2009年1月28日〜30日,沖縄,日本):
7ヶ国から12名(日本から1名)が参加した.
SC34/WG5会議(2009年1月28日〜30日,沖縄,日本):
9ヶ国から20名(日本から3名)が参加した.
SC34総会およびWG1, WG2, WG3, WG4, WG5会議(2009年3月23日〜27日,プラハ, チェコ):
11ヶ国から36名(日本から4名)が参加した.

1.3 投票等

FDIS投票 5件
(FDIS 24754, FDIS 19757-8, FDIS 19757-9, FDIS 13250-4, FDIS 9541-4)
FDAM投票 3件
(FDAM4/9541-1, FDAM2/9541-2, FDAM2/9541-3)
FCD投票 7件
(FCD 19757-7, FCD 9541-4, FCD 13250-5, FCD 13250-6, FCD 18048, FCD 19756, FCD 19757-1)
FPDAM投票 1件
(FPDAM2/9573-3)
CD投票 1件
(CD 13250-1)
NP投票 1件
(NP: ODF/OOXML translation)
規格出版 12件
(29500-1, 29500-2, 29500-3, 29500-4, 24754, 19757-8, 19757-9, 13250-4, 9541-4, Amd.4/9541-1, Amd.2/9541-2, Amd.2/9541-3)

1.4 国際委員会の主な変更点および変更理由

2007年度には次に示すメンバ変更(Pメンバ2カ国減,Oメンバ3カ国増)があった.OOXML(DIS 29500)がSC34に割当てられたことによる2007年度における著しい参加国増加が,2008年度になって一段落した.

OメンバからPメンバへの変更
スロバキア
PメンバからOメンバへの変更
キプロス,カザフスタン
Pメンバからの退会
ルクセンブルク
Oメンバへの新規参加
ポルトガル,セルビア

WG4とWG5の新設に伴い,WG1のコンビナが村田真からAlex Brownに変更になり,WG4のコンビナとして村田真が指名された.

1.5 日本担当のエディタの変更

ISO/IEC 9541-1, 2, 3の第2版の開発開始に伴って,次のエディタが指名された.
9541-1: 小町祐史,鈴木俊哉(co-editor)
9541-2: 小町祐史,鈴木俊哉(co-editor)
9541-3: 鈴木俊哉,小町祐史(co-editor)
19757および9541-4のAmd.のプロジェクトについては,次のエディタが指名された.
19757-2/Amd.1: 村田真
19757-4/Amd.1: 村田真
9541-4/Amd.1: 鈴木俊哉,小町祐史(co-editor)


2. 主なプロジェクトの進捗状況

2.1 WG1(マーク付け言語)

(1) DSDL(文書スキーマ定義言語, ISO/IEC 19757)

XML等で表現されるデータの構造, データ型, データ制約の定義を行うDSDLに関して, 2008年度に議論された主なパートの動向を次に示す.各パートの規定概要については,以前の報告を参照されたい.

a) パート1(概要)

FCD投票の結果を受けて,ターゲットをISからType3のTRに変更し,テキストが提示されたらPDTR投票を開始する.これは,パート1の内容が規定でないことによる.

b) パート2(正規文法に基づく妥当性検証−RELAX NG)のAmd.1

RELAX NG利用者からのモジュール化機能の向上要求に応えて,Amd.1を開発することにした.

c) パート4(名前空間に基づく検証委譲言語(NVDL))のAmd.1

NVDLの名前空間名に基づくディスパチッチ機能が不十分であるとのNVDL利用者の要求に応えて,Amd.1を開発することにした.

d) パート5(データ型)

表題を次のように変更した.
Document Schema Definition Languages (DSDL) -- Part 5: Extensible Datatypes

e) パート6(パスに基づく一貫性制約)

プロジェクトをキャンセルした.

f) パート7(文字レパートリについての検証)

FCD 19757-7コメント対処に基づいてFDISテキストが作成された.その際に,表題を次のように変更した.
Document Schema Definition Languages (DSDL) -- Part 7: Character Repertoire Description Language (CREPDL)

g) パート8(文書スキーマ再命名言語)

実体の宣言機構・改名機構を残すかどうかの問題点を適合性において明記し,機構そのものは残すことにしたFDISテキストが承認されて,規格が出版された.

h) パート9(データ型および名前空間を認識するDTD)

FCD投票結果に基づいて軽微な修正を施したFDISテキストが承認されて,規格が出版された.

i) パート10(検証管理)

プロジェクトをキャンセルした.

j) パート11(スキーマ関連)

スキーマのロケーションに関するヒントを提供する処理命令を標準化する.文書とスキーマを結び付ける必要性が2009年3月に提案され,プロジェクト再分割によってこのプロジェクトが設立された.

(2) 数学用及び科学用の公開実体集合(ISO/IEC TR 9573-13 第2版)

プロジェクトをキャンセルした.

(3) 規格文書交換のための構造記述およびスタイル指定(ISO/IEC TR 9573-11 第2版)のAmd.1

ITU-TのTSAG(Telecommunication Standardization Advisory Group)において参照され,ITU-T文書のXML交換様式との整合を考慮する検討が行われているため,DAMテキストの提出が遅れている.

(4) ODF(オフィス応用のための開放形文書フォーマット,ISO/IEC 26300)

次の作業のために,ISO/IEC 26300のメンテナンスに関するAdhocグループ3を設立し,F. Caveをコンビナに指名した.
− OASISと共同してISO/IEC 26300のメンテナンスの長期計画を立て,その計画案等をSC34総会に提案する.
− ISO/IEC 26300のメンテナンスに関連するすべての活動を調整する.

2.2 WG2(文書情報表現)

(1) フォント情報交換(ISO/IEC 9541)

SC29によって提案されたISO/IEC 14496-22(開放形フォントフォーマット)とISO/IEC 9541(フォント情報交換)との整合のために始められた,ISO/IEC 9541のパート3に対するAmd.とパート4とが完成し,それ以前から作業が続いていたパート1, 2に対するAmd.とともに発行された.

a) パート2(交換フォーマット)のAmd.2

フォント参照の拡張に関する利用者要求に応じて開発されたISO/IEC 9541-2/Amd.2のFDAMテキストが承認され,Amd.2が発行された.

b) パート1(体系)のAmd.4

ISO/IEC 9541-2/Am.2の中で使う幾つかの属性をISO/IEC 9541-1の中で定義するために開発されたISO/IEC 9541-1/Amd.4のFDAMテキストが承認され,Amd.4が発行された.

c) パート3(グリフ形状表現)のAmd.2

Adobe Type1 CharString互換のグリフ形状表現の拡張であるAdobe Type2 CharStringの内容を規定するISO/IEC 9541-3/Amd.2のFDAMテキストが承認され,Amd.2が発行された.

d) パート4(開放形フォントフォーマットとの整合)

ISO/IEC 9541の既存の各パートの修正ではISO/IEC 14496-22との整合に対応できない内容をまとめたISO/IEC 9541-4のFDISテキストが承認され,Amd.2が発行された.

e) ISO/IEC 9541の第2版

これまでの多くのAmd.とCor.の発行の結果,読みにくくなったISO/IEC 9541に関して第2版を発行することをISO中央事務局から勧められ,パート1, 2, 3について第2版の開発を行うことを決めた.

(2) 文書レンダリングシステムを指定する最小要件(ISO/IEC 24754)

レンダリング結果において必要となる文書スタイルを保存したまま文書を交換し合うために,レンダリングシステムが共有しなければならない最小要件をネゴシェーションするための枠組みを規定する.FDISテキストが承認されて,規格が出版された.

(3) UOML(Unstructured Operation Markup Language)

OASISで承認されたこの規定を国際規格にするため,WG2は中国の担当者から手続き上の戦略の相談を受けた.

2.3 WG3(情報関連付け)

(1) TM(トピックマップ, ISO/IEC 13250)マルチパート

TMの規格を再構成してマルチパート化を図る作業が2003年度から継続されているが,2008年度に進捗があったパート6の動向と,2007年12月のWG3会議で策定された作業計画とを示す.各パートの規定概要については,以前の報告を参照されたい.

a) パート1(概要及び基本概念)

CDテキストが承認され,FCD処理のために改訂テキストが用意されている.

b) パート4(正準構文,CXTM)

FDISテキストが承認されて,規格が出版された.

c) パート5(参照モデル,TMRM)

FCDテキストが承認され,FDIS理のために改訂テキストが用意されている.

d) パート6(簡潔構文,CTM)

FCDテキストが承認され,FDIS理のために改訂テキストが用意されている.

(2) TMQL(TM問合せ言語, ISO/IEC 18048)

FCDテキストが承認され,2nd FCD処理のために改訂テキストが用意されている.

TMQLについては,これまで次のように3回のCD投票とFCD投票とが行われており,FCDからFDISへの早期進捗が望まれる.
2001-04, NP/CD投票終了,プロジェクト成立.
2005-05, 2nd CD終了.
2006-10, 3rd CD終了.
2008-11, FCD終了.
2010-06, 2nd FCD予定.

(3) TMCL(TM制約言語, ISO/IEC 19756)

FCDテキストが承認され,2nd FCD処理のために改訂テキストが用意されている.

2.4 WG4(Office Open XML)

(1) OOXML(オフィス開放形XMLファイルフォーマット,ISO/IEC 29500)

OOXMLの各パートが出版された後も多くの欠陥報告が提出されている.欠陥報告に対応してISO/IEC 29500を変更する必要がある.必要な変更の幾つかはCor.の範囲を越えている可能性があり,むしろAmd.によって扱われることが望ましい.そこでWG4は,Cor.とAmd.とを区別するための評価基準を作成した.

a) パート1, 2, 4のAmd.

細分割によってISO/IEC 29500-1, 2, 4のAmd.のプロジェクトを設立した.エディタからテキストを受領した後,FPDAM投票を開始する.

b) NP(ECMA-376:2006とISO/IEC 29500:2008との技術的差異)

欠陥報告としてスイスから提案されたECMA-376:2006とISO/IEC 29500:2008との技術的差異を明示する件は欠陥として扱わないことになったため,スイスはOOXMLへのAmd.としてこの技術的差異を付加することを提案し,NPとして投票を受けることになった.

2.5 WG5(文書の相互運用性)

(1) ODF-OOXML間の変換(ISO/IEC TR 29166)

まだドラフトが示されていないが,TR 29166の表題をODF/OOXML TranslationからODF/OOXML Translation Guidelinesに変更し,それに従って適用範囲も変更することがWG4から提案され,JTC1にその追認を求めることになった.