from IPSJ-TS 0013:2011


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5.3 書体分類および分類ノード

ISO/IEC 9541-1のAnnex Aの書体デザイン分類はデザインだけを分類基準としているわけではなく,分類基準に歴史的経緯を含む。純粋なデザインの上位概念としての"印象"に基づく分類もあり得る。分類ノードの名前は書体名ではない。しかし書体名も書体分類のノード名も固有名詞であり得る。これらの状況把握に基づき,書体分類と分類ノードを検討して,図4に書体分類を示し,図5に対応書体を示す。

a) この書体分類は,ベースとして日本事務機械工業会・実装規約小委員会が開発した日本語フォント実装規約の分類を用い,ISO/IEC 9541の分類との整合性も考慮している。

b) 日本語フォント実装規約の分類に倣って,分類は3階層としている。そのため,とくにディスプレイタイプの分類ではデザインの特徴を分類上で細分化していないが,今後は階層を増やす必要があると思われる。

c) 用途が明確な書体,たとえば新聞用書体,映画字幕書体は,分類上区分している。しかし,OCR書体,ステンシル書体については,単に同種のものであればよいという判定はできず,個々の書体特性に依存するものと考え,分類を分けていない。

フォントベンダによっては学参書体を別分類とし,書体名称に用いているが,"学参用"を特化する弊害を避けて,ここでは無視している。

d) 明朝体,角ゴシック体,丸ゴシック体に関して,クラシックとモダンとの区別を新設している。スタンダードは規定しない。何がスタンダードなのかという基準を決められないからである。オールド,ニューという呼称も採用しない。オールドという表現は多用されていて違和感は少ないが,ニューはこの区分表現に馴染まない。

ここでは,アナログ時代の様式を踏襲しているものをクラシックとし,デジタル時代に入ってから出現した様式をモダンに区分しているが,その中間的特徴を備えたものもあり,明確な基準は設定できていない。

ディスプレイタイプの分類においては,アナログ時代から存在するデザインと,デジタルフォント全盛になってから生まれたデザインとがあるが,これらはクラシックとモダンとに区別しない。それは,ユーザ要求がないことによる。

e) アナログ時代の書体を覆刻した明朝体(漢字)は,クラシックである。原則として背勢処理がなされている明朝体は,クラシックに分類する。

明朝体の定義はさまざまであるが,ここでは三角形のウロコをもつことを必す(須)としている。カタオカデザインワークスの丸明オールドは三角形のウロコをもたず,モトヤのアポロもウロコをもたないという特徴によって,ユービックのユニスクェアは角ウロコをもたないという特徴によって,それぞれ明朝体には分類しない。一方,リョービイマジクスのナウ-Mは明朝体に分類している。

モトヤ明朝はごくわずかな背勢処理がなされているストロークもあるが,実用文字サイズでの視認性を配慮し,モダンに分類している。

f) 明朝体(かな)については,アナログ時代の書体を覆刻したもの,および古い書家の作品をアレンジしたものをクラシックに分類する。デジタル時代になってから誕生した書体であっても,縦組適性重視の思想をもつものはクラシックとする。横組適性重視の書体はすべてモダンとしている。

リョービイマジクスの良寛,小町,行成などは,明朝体およびゴシック体と混植される前提で設計された字形デザインであるが,あくまでも形状特徴から筆字体クラシックに分類している。

g) 角ゴシック体(漢字)についても,背勢処理がなされ,原則として墨溜りをもつゴシック体はクラシックに分類する。ふところの設計など,全体のイメージを活字時代のゴシック体に近似させる手法は,現代には馴染まないため,背勢処理以外の要素によってクラシックとモダンとを峻別することはしていない。

大日本スクリーンのヒラギノ角ゴシックは,背勢処理はなされているが墨溜りをもたないため,モダンに分類する。

h) 丸ゴシック体(漢字)については,アナログ時代のふところの狭い書体はほとんど見向きがされず,ふところの広いデザインが主流になっているため,アナログ時代のもの以外をすべてモダンとした。したがって,分類例では写研の丸ゴシック体だけがクラシックである。

カタオカデザインワークスの丸丸ゴシックは,コーナ円の径が極めて大きく,特異な印象をもつ書体になっているため,丸ゴシック体には分類していない。

i) ゴシック体のバリエーションとも看做せる書体の中に,右ハライが"先細り"にデザインされているものがある。モリサワのフォーク,フォントワークスのぶどうがその例である。同様に明朝体のバリエーションとも看做せるダイナコムウェアの麗雅宋などである。これらはゴシック系,明朝系とはいえないため,ディスプレイ系書体に分類する。

j) ディスプレイ書体において,特にサンセリフPOPは,きわめて多様なデザインの書体が割り当てられる。商用キャッチコピー用書体は,目立つこと,新規性が高いことなどが求められるために,分類は大規模にならざるを得ない。

したがって,本来であれば固有分類対象になるアウトライン,シャドーなども,すべてこの分類の中に入ることになる。これらを組み合せたアウトライン・シャドーなどの書体も出現するからである。若干異なるが,モリサワのカクミンは明朝体と角ゴシック体の中間書体と位置づけられるが,この分類ではセリフPOPに分類している。

k) 独立かなにおいて,分類上はサンセリフを設けたが,現時点では該当書体はない。

1.0.0 伝統デントウ書体ショタイ(漢字のあるもの)漢字カンジのあるもの) 4.0.0 Serifs
  1.1.0 明朝体ミンチョウタイ   4.12.0 Mincho
    1.1.1 クラシック 4.12.1 Old Style
    1.1.2 モダン 4.12.2 New Style
    1.1.3 新聞シンブン明朝ミンチョウ  
  1.2.0 カクゴシックタイ   5.0.0 San Serifs
    1.2.1 クラシック  
    1.2.2 モダン  
    1.2.3 新聞シンブンゴシック  
  1.3.0 マルゴシックタイ   5.5.0 Geomesric
    1.3.1 クラシック  
    1.3.2 モダン  
  1.4.0 ヒツ書体ショタイ   6.3.0 Soft Brush
    1.4.1 楷書体カイショタイ 6.3.1 Kaisho
    1.4.2 教科書キョウカショタイ 6.3.2 Kyokasho
    1.4.3 行書体ギョウショタイ 6.3.3 Gyosho
    1.4.4 草書体ソウショタイ 6.3.4 Sosho
    1.4.5 隷書体レイショタイ 6.3.5 Miscellaneous
    1.4.6 篆書体テンショタイ 6.3.5 Miscellaneous
    1.4.7 硬筆コウヒツ手書テガフウ  
  1.5.0 宋朝ソウチョウタイ   6.5.0 Soucho
  1.6.0 インタイ    
2.0.0 ディスプレイ書体(漢字のあるもの)書体ショタイ(漢字のあるもの) 7.0.0 Ornamentals
  2.1.0 江戸エド文字モジ    
  2.2.0 トウセン    
    2.2.1 セリフPOP  
    2.2.2 ゴシックタイケイ  
    2.2.3 サンセリフPOP  
    2.2.4 硬筆コウヒツ  
  2.3.0 トウセン    
    2.3.1 明朝体ミンチョウタイケイ  
    2.3.2 硬筆コウヒツ手書テガフウ  
  2.4.0 字幕ジマク書体ショタイ    
3.0.0 かな書体ショタイ(独立)独立ドクリツ 6.4.0 Kana
  3.1.0 伝統デントウ書体ショタイ    
    3.1.1 フデ字体ジタイクラシック 6.4.1 Old Style
    3.1.2 筆字体モダン 6.4.2 New Style
    3.1.3 明朝体ミンチョウタイクラシック  
    3.1.4 明朝体ミンチョウタイモダン  
    3.1.5 ゴシックタイクラシック 6.4.1 Old Style
    3.1.6 ゴシックタイモダン 6.4.2 New Style
  3.2.0 トウセン    
    3.2.1 セリフ  
    3.2.2 サンセリフ  
    3.2.3 硬筆コウヒツ  
  3.3.0 トウセン    

図4 書体分類

1.0.0 伝統デントウ書体ショタイ(漢字のあるもの)漢字カンジのあるもの)  
  1.1.0 明朝体ミンチョウタイ    
    1.1.1 クラシック 秀英シュウエイ明朝ミンチョウダイ日本ニホン印刷インサツ
        凸版トッパン明朝ミンチョウ凸版トッパン印刷インサツ
        精興社セイコウシャ書体ショタイ精興社セイコウシャ
        石井イシイナカ明朝ミンチョウ写研シャケン
        ホンラン明朝ミンチョウ写研シャケン
        リュウミン(モリサワ)
        A1明朝ミンチョウ(モリサワ)
        ジョミン(モリサワ)
        TBクラシック明朝ミンチョウ(タイプバンク)
        イワタ明朝体ミンチョウタイオールド(イワタ)
        ヒラギノ明朝ミンチョウ大日本ダイニホンスクリーン)
        ユウ明朝体ミンチョウタイ(字游工房)
        筑紫チクシ明朝ミンチョウ(フォントワークス)
        マティス(フォントワークス)
        明朝体ミンチョウタイ(ニィス)
    1.1.2 モダン モトヤ明朝ミンチョウ
        イワタ明朝体ミンチョウタイ(イワタ)
        見出ミダしミンMA31(モリサワ)
        ヒカリアサ(モリサワ)
        ファイン(リョービイマジクス)
        ナウ-M(リョービイマジクス)
        TB明朝ミンチョウ(タイプバンク)
        JTCウィンM(ニィス)
        小塚コヅカ明朝ミンチョウ(アドビシステムズ)
        平成ヘイセイ明朝体ミンチョウタイ
    1.1.3 新聞シンブン明朝ミンチョウ イワタ新聞シンブン明朝体ミンチョウタイPro(イワタ)
  1.2.0 カクゴシックタイ    
    1.2.1 クラシック 凸版トッパンゴシック(凸版トッパン印刷インサツ
        石井イシイゴシック(写研シャケン
        ゴシックBBB(モリサワ)
        フトゴB-101(モリサワ)
        モトヤゴシック(モトヤ)
        ゴシックタイオールド(イワタ)
        リョービゴシック(リョービイマジクス)
    1.2.2 モダン ゴナ(写研シャケン
        シンゴ(モリサワ)
        ネオツデイ(モリサワ)
        ゴシックMB101(モリサワ)
        シンゴシックタイB(イワタ)
        シーダ(モトヤ)
        ナウ-G(リョービイマジクス)
        ヒラギノカクゴシック(大日本ダイニホンスクリーン)
        ニューロダン(フォントワークス)
        ロダンPro(フォントワークス)
        筑紫チクシゴシック(フォントワークス)
        JTCウィンS(ニィス)
        小塚コヅカゴシックPro(アドビシステムズ)
        平成ヘイセイカクゴシックタイ
    1.2.3 新聞シンブンゴシック イワタ新聞シンブンゴシックタイPro(イワタ)
        毎日マイニチ新聞シンブンゴシック(モリサワ)
  1.3.0 マルゴシックタイ    
    1.3.1 クラシック 石井イシイナカマルゴシックタイ写研シャケン
    1.3.2 モダン ナール(写研シャケン
        シンマルゴ(モリサワ)
        じゅん(モリサワ)
        モトヤマルベリ(モトヤ)
        シリウス(リョービイマジクス)
        ヒラギノマルゴシック(大日本ダイニホンスクリーン)
        JTCウィンR1(ニィス)
        ホソマルゴシックタイ(ダイナコムウェア)
        TBマルゴシック(タイプバンク)
        平成ヘイセイマルゴシック
  1.4.0 ヒツ書体ショタイ    
    1.4.1 楷書体カイショタイ コウランホソ楷書カイショ写研シャケン
        正楷セイカイショCB1(モリサワ)
        正楷セイカイショ(モトヤ)
        正楷セイカイ書体ショタイ(イワタ)
        弘道軒清朝シンチョウタイ(イワタ)
        グレコStd(フォントワークス)
        DFカオ楷書カイショ(ダイナコムウェア)
        DF文徽ブンキメイカラダ(ダイナコムウェア)
        DF徽宗宮キソウミヤ(ダイナコムウェア)
        DF痩金体ソウキンタイ(ダイナコムウェア)
        DF北魏ホクギ楷書カイショ(ダイナコムウェア)
    1.4.2 教科書キョウカショタイ 石井イシイナカ教科書キョウカショタイ写研シャケン
        イワタ教科書キョウカショタイ(イワタ)
        モトヤ教科書キョウカショ(モトヤ)
        ユトリロPro(フォントワークス)
    1.4.3 行書体ギョウショタイ 岩蔭イワカゲ行書ギョウショ写研シャケン
        ヒラギノ行書ギョウショ(大日本スクリーン)
        江川エガワ活版カッパン三号サンゴウ行書ギョウショ(大日本スクリーン)
        ショウミナミ行書体ギョウショタイ(ダイナコムウェア)
        JTC曲水キョクスイMYU(ニィス)
    1.4.4 草書体ソウショタイ DF草書ソウショ霜月シモツキ(ダイナコムウェア)
        JTCタンサイ草書ソウショノウ」(ニィス)
    1.4.5 隷書体レイショタイ ラン隷書レイショタイ写研シャケン
        イワタ隷書体レイショタイStd(イワタ)
        ハナ牡丹ボタン-DB(リョービイマジクス)
        DFカクヤスシ(ダイナコムウェア)
    1.4.6 篆書体テンショタイ DFシンテンカラダ(ダイナコムウェア)
        JTCタンサイ篆書テンショ(ニィス)
    1.4.7 硬筆コウヒツ手書テガフウ 日立ヒタチつれづれぐさStd R(タイプバンク)
        DF金文キンブンカラダ(ダイナコムウェア)
        クレーPro(フォントワークス)
  1.5.0 宋朝ソウチョウタイ   イワタ宋朝ソウチョウタイ(イワタ)
        ハナ胡蝶コチョウ(リョービイマジクス)
        DFシン宋朝ソウチョウタイ(ダイナコムウェア)
  1.6.0 インタイ   タンイン写研シャケン
        モトヤインタイ(モトヤ)
        コウインタイ(ダイナコムウェア)
        JTCインタイウタ」(ニィス)
2.0.0 ディスプレイ書体(漢字のあるもの)書体ショタイ(漢字のあるもの) スズ江戸エド写研シャケン
  2.1.0 江戸エド文字モジ   織田オダ勘亭流カンテイリュウ写研シャケン
        勘亭流カンテイリュウ(モリサワ)
        勘亭流カンテイリュウユウ工房コウボウ
        DF寄席ヨセ文字モジ(ダイナコムウェア)
        いなひげ(写研シャケン
        古今コキンヒゲStd EB(ダイナコムウェア)
        DFカゴ文字モジ(ダイナコムウェア)
  2.2.0 トウセン    
    2.2.1 セリフPOP カクミン(モリサワ)
        DF優雅ユウガソウ(ダイナコムウェア)
        DF麗雅レイカソウ(ダイナコムウェア)
    2.2.2 ゴシックタイケイ ゴナO(写研シャケン
        ナールSH(写研シャケン
        スーボ(写研シャケン
        DFひびゴシックタイ(ダイナコムウェア)
        マルマルゴシック(カタオカデザインワークス)
    2.2.3 サンセリフPOP 石井イシイファンテール(写研シャケン
        ナミン(写研シャケン
        ミンカール(写研シャケン
        フォーク(モリサワ)
        DFブラッシュRD(ダイナコムウェア)
        DFブラッシュSQ(ダイナコムウェア)
        DF POP 2 タイ(ダイナコムウェア)
        DFソウゲイタイ(ダイナコムウェア)
        キアロ(フォントワークス)
        ロゴJr(視覚シカクデザイン研究所ケンキュウショ
        メガマル視覚シカクデザイン研究所ケンキュウショ
    2.2.4 硬筆コウヒツ手書テガフウ ナカフリー(写研シャケン
        DFクラフトユウ(ダイナコムウェア)
        DFてがきマコト(ダイナコムウェア)
        DFペン字体ジタイ(ダイナコムウェア)
  2.3.0 トウセン    
    2.3.1 明朝体ミンチョウタイケイ アポロ(モトヤ)
        アドミーン(視覚デザイン研究所)
        マルミンオールド(カタオカデザインワークス)
    2.3.2 硬筆コウヒツ手書テガフウ ナカフリー(写研シャケン
        はるひ学園ガクエン(モリサワ)
         
  2.4.0 字幕ジマク書体ショタイ   映画エイガ字幕ジマク書体ショタイ(キネマ・フォント・ラボ)
3.0.0 かな書体ショタイ(独立)独立ドクリツ  
  3.1.0 伝統デントウ書体ショタイ    
    3.1.1 フデ字体ジタイクラシック 良寛リョウカン(リョービイマジクス)
        小町コマチ(リョービイマジクス)
        行成ユキナリ(リョービイマジクス)
        弘道ヒロミチノキ(リョービイマジクス)
    3.1.2 筆字体モダン iroha-31 nire(カタオカデザインワークス)
    3.1.3 明朝体ミンチョウタイクラシック 秀英シュウエイ(モリサワ)
        リュウミンオールドがな(モリサワ)
        アンチックAN(モリサワ)
        築地ツキジ(リョービイマジクス)
        築地ツキジタイ仮名カナ大日本ダイニホンスクリーン)
        ユウ明朝体ミンチョウタイかな(ユウ工房コウボウ
    3.1.4 明朝体ミンチョウタイモダン りょうDisplay(アドビシステムズ)
        コミクス(ニィス)
        マルミンYoshino(カタオカデザインワークス)
        ことのは(朗文堂ロウブンドウ
    3.1.5 ゴシック体クラシック TB築地ツキジ(タイプバンク)
    3.1.6 ゴシックタイモダン ネオツデイがな(モリサワ)
        りょうゴシック(アドビシステムズ)
  3.2.0 トウセン    
    3.2.1 セリフ  
    3.2.2 サンセリフ サンクスR(ニィス)
        ロゴアール(アドビシステムズ)
    3.2.3 手書テガフウ ゼンゴN(モリサワ)
        ひまわり(フォントワークス)
        マルミンFuji(カタオカデザインワークス)
  3.3.0 トウセン   DFクラフトワラベ(ダイナコムウェア)

図5 対応書体