電子出版技術および将来型文書統合システム標準化

Electronic Publishing Technology and Advanced Integrated Documents Standardization

小町 祐史
パナソニック コミュニケーションズ(株)

平成15年度情報技術標準化調査研究成果報告会, 2004-06-03


A. 電子出版技術 (EPCom)

A.1 活動範囲

スタイル指定情報を含む電子文書の交換性確保に対する要求に応えて,JTC1だけでなくIETF,W3Cなどで標準化活動が展開されている。これらの動向を調査し,電子出版業界だけでなく電子文書の一般利用者にとって必要な国内規定の開発を行うと共に,関連する国際標準化をも実施する。


A.2 委員会構成

2003年度には, 次の委員会構成と作業分担で活動を行った。

電子出版技術調査研究委員会: 活動計画の立案, 成果のレビューと承認

作業グループ1 (WG1): スタイル指定言語のJISおよびTRの原案作成, 文書交換プロトコルのTR原案作成
作業グループ2 (WG2): スタイル指定言語ライブラリのTR原案作成, 電子出版に関連する新作業課題検討
備考 WG1は,2002年度までのWG1,WG3が統合された作業グループであり, WG2は,2002年度までのWG2,WG4が統合された作業グループである。

A.3 活動内容

A.3.1 TRの原案作成

昨年度までの活動によって, 原案作成した次のTRの公表までの対応(解説の作成, 校正, その他)を行った。

昨年度末から2003年6月までの活動によって, 原案を完成した次のTRの公表までの対応を行った。

TR X 0059 XSLTライブラリの改正については, TR X 0059:2002が目次生成, 索引生成だけのライブラリであるので, 追加項目への利用者要求に応えて, 追加ライブラリ項目の選定とライブラリ作成とを行った。

TR X 0089 XMLパス言語においては, 原規定に示されていないconcat関数における記法"*"の意味を, 解説に記述した。原規定の内容を忠実に標準情報(TR)の規定内容とするために, 備考的記述として本文中には含めず, 解説に示すことにした。

TR X 0010 日本語組版のDSSSLライブラリ(追補1)に関しては, 表組の現状を調査し,基本的な表組のスタイルを規定してこれをDSSSLライブラリ化した。

MIMEに関しては, 関連するMIME4(RFC2048), MIME5(RFC2049)についても翻訳原案を作成した。

A.3.2 JIS X 4168 CSS1の原案作成

JIS X 4168は, W3C勧告の1999-01版に従うが, 既にそれに対するErrataがW3Cから公表されているので, それに合わせて規定内容の修正を行った。

JIS Z 8125で定義される用語を使うため, その専門委員会審議での承認の後, 用語の整合を行った。

A.3.3 XSL 1.0に関するW3Cへの提案

W3CのXSL規定を翻訳してTR X 0088の原案を作成する際に明らかになった問題点を整理し, 修正要求としてW3Cに提案した。さらにXSLの実装に対する利用者要求に応えるために必要となったXSLの規定の拡張内容をまとめ, 拡張規定としてW3Cに提案した。

A.3.4 NewsMLのTR/TS化支援

新聞協会からの委員によってIPTCにおけるNewsMLのステータス報告を受けると共に, NewsMLの翻訳をレビューし, それを国内でTR/TS化することのIPTCの承認をとるための新聞協会の活動を支援した。TR/TS化に関する新聞協会の合意とIPTCの承認は既にとれ, NewsML ver.1(1.0〜1.2)の公表のための準備が進められている。

A.3.5 PDFとその処理系に関する動向調査

TR X 0026 ポータブル文書フォーマット(PDF)の改正の必要性を調査するため, 前年度と同様に, PDFとその処理系に関する利用者要求と動向把握が担当委員によって継続された。

A.3.6 Amendments to ISO/IEC TR 19758

TR X 0010, 日本語組版のDSSSLライブラリ 追補1の内容に, 基本組体裁のライブラリを追加して, ISO/IEC TR 19758のPDAM1テキストを作成した。

CICC/DocSII委員会とリエゾンをとり, CICC/DocSII委員会が調査した多言語組版の利用例をレビューして, DSSSLライブラリ化の検討を行った。その結果は, ISO/IEC TR 19758のPDAM2テキストに反映されている。

A.3.7 電子出版の枠組みの検討

電子出版に関する最新情報をもとに現状把握を行い,ビジネスモデルを検討した。この内容の一部を11月にロンドンで開催されたIEC/TC100/AGSにJEITAのAV関連委員会から提出し,国際標準化への足がかりをつくった。

A.3.8 原稿校正標準マーク付け言語(SPML)

電子出版の新しい枠組みを形成する規定の一つとして,以前にGLOCOMが開発したSPML(Standard Proofreading Markup Language)を検討し,規格案としての有効性を確認した。


A.4 成果

A.4.1 JIS, TR, TSの原案

A.4.2 TRの原案(2002年度からの継続)

A.4.3 国際提案, その他


A.5 今後の課題

A.5.1 2003年度課題のフォロー

(1) JIS X 4168 CSS1

情報技術専門委員会承認後のJSAによる発行の支援を行う。

(2) XSLTライブラリ

TR X 0059:2002を改正して, TS X 0059:2004とするための作業を行う。情報技術専門委員会への対応および情報技術専門委員会承認後のJSAによる発行の支援を行う。

(3) Extension to XSL

W3Cにおける今後の改版への対応, および国内の実装に伴う拡張要求に関するW3Cとの調整等を行うことが望まれる。拡張要求は, 今後も必要に応じてW3Cに提出する。

(4) NewsMLのTS(又はJIS)化支援

新聞協会におけるNewsMLのTS(又はJIS)化の作業を支援する。

(5) MIMEの第4部, 第5部

翻訳原案をTSとして公表するための作業を行う。

(6) CICC/DocSII委員会とのリエゾン

CICC/DocSII委員会とリエゾンをとり, Amendments to ISO/IEC TR 19758のDAMテキスト, 最終テキストの作成支援を行う。

(7) 原稿校正標準マーク付け言語(SPML)

分散環境での校正作業を効率的にかつ正確に実行するため,電子化された原稿に対する,処理系に依存しない標準的な原稿校正マーク付けを規定する。主な規定項目は, 記法, 基本概念, 文書変更構造, および文書型定義。

A.5.2 2003年度に必要性が指摘された課題

(1) PDF subsetの規定

携帯電話等のモバイル端末のアプリケーションを前提に,ユースケースを作成し,それに必要な機能項目を明確にして,PDF subsetの基本プロファイル, オプションプロファイルを開発する。

(2) 漢数字表記の規定

漢数字の表記には揺れが多いため, 幾つかの表記を整理して, 電子化文書における推奨表記を明らかにする。

(3) TR X 0010のTS化

TR X 0010:2000 日本語組版のDSSSLライブラリの内容に, TR X 0010追補1の規定, およびISO/IEC TR 19857関連規定の内容を加えて, TS原案を作成する。

(4) E-Publishing/E-Book関連規定

E-Publishing/E-Bookの市場を拡大するため, ビジネスモデルの検討に基づき, 次のようなE-Publishing/E-Book関連規定の検討を行う。この活動は, JEITAのAV関連委員会とのリエゾンのもとに実施する。



B. 将来型文書統合システム標準化 (AIDOS)

B.1 活動範囲

既存の電子文書体系の上に構築される文書統合システムのためのモデル化を行い,それに必要な標準化を実施する。これまでに,DOMに関する一連のTR原案,トピックマップ関連TRの原案,ウェブオントロジ言語OWLの翻訳素案等を作成すると共に,XML化情報検索プロトコルとしてのZINGへの拡張案を国際提案し,セマンティックウェブ,オントロジ技術,メタデータ,ワークフロー管理に関する調査研究報告をまとめている。


B.2 委員会構成

2003年度には, 次の委員会構成と作業分担で活動を行った。

統合システム標準化調査研究委員会: 活動計画の立案, 成果のレビューと承認

作業グループ1 (WG1): DOM, トピックマップに関するTRの原案作成, XML化情報検索プロトコルの検討
作業グループ2 (WG2): メタモデル, セマンティックウェブ等に関する調査研究

B.3 活動内容

B.3.1 TRの原案作成

昨年度から引き継いだTR原案

は, いずれも2003年7月の情報技術専門委員会で審議され, 承認された。それらに関する解説を, 専門委員会承認後に作成し, 日本規格協会に提出した。

B.3.2 XML化情報検索プロトコル

次のような議論の後, ZINGに対する拡張要求をまとめた。

関連技術の調査研究結果は, 次の資料としてまとめた。

B.3.3 図書検索利用者への指針

図書検索利用者の要求の充足のための指針の必要性が提起され, その指針の原案作成を行った。

B.3.4 現状把握および提言

セマンティックウェブ・オントロジ技術・将来型文書等に関する現状把握および提言をWG2成果レポートとしてまとめた。その構成を次に示す。

1.まえがき

2.セマンティックWebの最新状況
 2.1 RDF仕様の最新動向
 2.2 RSS
  2.2.1 開発の経緯及び版
  2.2.2 RSS 1.0(RDF Site Summary)の概要
  2.2.3 RSS 0.9x及びRSS 2.0
  2.2.4 使用状況
  2.2.5 まとめ
 2.3 OWL:Webオントロジ言語
  2.3.1 OWLとは
  2.3.2 OWLの仕様
  2.3.3 OWL関連のツール
 2.4 トピックマップ
  2.4.1 標準化動向
  2.4.2 技術動向
  2.4.3 最近の事例
  2.4.4 その他

3.オントロジ技術の現状と応用
 3.1 TV視聴者プリファレンス
  3.1.1 はじめに
  3.1.2 電子番組表
  3.1.3 パーソナルビデオレコーダ(PVR)
  3.1.4 テレビ王国
  3.1.5 視聴者嗜好プリファレンスの今後の課題
 3.2 エコネット・白物系
  3.2.1 生活家電機器をとりまく動向
  3.2.2 セマンティックWEB技術適用における課題
  3.2.3 まとめ 
 3.3 ネットワーク管理
  3.3.1 はじめに
  3.3.2 ネットワーク管理の問題点
  3.3.3 メタデータ技術の利用
 3.4 Agentcities におけるオントロジー技術の応用
  3.4.1 はじめに
  3.4.2 アプリケーションとそこで用いられるオントロジー関連の技術
  3.4.3 オントロジー記述言語及びコンテント言語の選択
  3.4.4 オントロジーサービスの開発
  3.4.5 サービスの記述とその実行
  3.4.6 おわりに
 3.5 IEC/TC100への提案
  3.5.1 Background
  3.5.2 Proposals
  3.5.3 Other important items

4. 将来型文書への考察
 4.1 ワークフロー管理とオフィス文書
  4.1.1 はじめに
  4.1.2 ワークフロー管理
  4.1.3 オフィス文書と情報伝達
  4.1.4 将来文書に対するワークフローの役割
  4.1.5 おわりに
 4.2 Voice BrowserとMultimodal Interactionに関する動向
 4.3 個人や家庭における情報管理と文書
  4.3.1 背景40
  4.3.2 情報集合から人間関係の問題へ
  4.3.3 情報技術に対して無防備な社会
  4.3.4 サイバースペースにおける社会的ルールの確立
  4.3.5 過去の技術からの教訓
  4.3.6 国立公文書館の碑文
4.4 電子政府・電子自治体とXML
  4.4.1 電子政府・電子自治体の目標
  4.4.2 行政システムの現状と問題点
  4.4.3 書面主義とデータ主義
  4.4.4 非改ざん性、原本性、本人性の確保

5.あとがき

B.3.5 オントロジ記述言語

W3Cのウェブオントロジ言語(OWL)の勧告が公表(2004年2月)されたので, 訳語の検討を行い, 次のパートについて翻訳素案を作成した。


B.4 成果

B.4.1 TRの原案(2002年度からの継続)

B.4.2 国際提案, その他


B.5 今後の課題

B.5.1 TS X 0091:2004 XML化情報検索プロトコル

日本語図書館情報の統合検索を容易にするため, XML化情報検索プロトコルZINGに対して, 日本語(及び多言語)環境に必要な規定を追加する。

B.5.2 オントロジ記述言語

W3CのOWL(ウェブオントロジ言語)を検討し, 必要に応じて, TSとしての公表を図るとともに, 自然言語の差異に伴う二次的な属性の差異を明らかにし, その扱いの指針(日本語プロファイルなど)を示す。

B.5.3 AV機器およびシステムへのオントロジ応用

2003年度までの検討に基づき, 次のようなオントロジ応用規定の検討を行う。この活動は, JEITAのAV関連委員会とのリエゾンのもとに実施する。