標準情報(TR)  TR X 0022:1999

資源記述の枠組み(RDF) モデル及び構文規定

Resource Description Framework (RDF)
Model and Syntax Specification



序文

この標準情報(TR)は, 1999年2月にWorld Wide Web Consortium(W3C)から公表された Resource Description Framework (RDF) Model and Syntax Specification勧告を翻訳し, 技術的内容を変更することなく作成した標準情報(TR)である。

1. 適用範囲

WWWは,元来,人間が使用するために構築された。 WWWにおけるすべてのデータは 計算機で読むことができる が, 計算機が理解できる とは限らない。 ウェブ上のすべてを自動化することは非常に困難だが,ウェブが含む情報の量を考えると, 手動で管理することはできない。この規定では,ウェブに含まれるデータを記述するために, メタデータ を使うことを提案する。 メタデータとは,"データについてのデータ"とする。 例えば,図書目録は,出版物について記述しているので,メタデータである。 特にこの規定では,メタデータとは,"ウェブ資源を記述するデータ"とする。 "データ"と"メタデータ"との区別は,絶対的なものではない。 その区別は,特定のアプリケーションによって最初に与えられるが, 同じ資源が同時に両方の方法で解釈されることも少なくない。

資源記述の枠組み(Resource Description Framework,以降RDF)は, メタデータを処理するための基盤とする。 特に,計算機が理解可能なウェブ上の情報を交換するアプリケーションに対して,RDFは, それらの間の相互運用性を提供する。RDFは,ウェブ資源を自動的に処理できる機能を促進する。 例えば,次の様々なアプリケーション領域で使用できる。

a)  高機能な検索エンジン機能を提供する 資源の探索
b)  特定のウェブサイト,ページ又は電子図書館で使用可能な,内容と内容の関係とを記述する カタログの作成
c)  知識共有及び知識交換を促進する 知的ソフトウェアエージェント
d)  内容の格付け
e)  一つの論理的な"文書"を表現する ページの集まりの記述。
f)  ウェブページの 知的財産権 の記述。
g)  ユーザの プライバシに関する個人の好み の表現。
h)  ウェブサイトの プライバシ保護方策 の表現。
電子署名 付きのRDFは,電子商取引,協調作業などのアプリケーションで必要な, "信用の輪(Web of Trust)"を構築するために重要である。

この規定では,RDFメタデータを記述するモデルを示し,さらに, 独立に開発されたウェブサーバとクライアントとの相互運用性を最大とする, このメタデータを符号化し転送するための構文を示す。 この規定で示す構文には,拡張可能なマーク付け言語 (Extensible Markup Language,以降XML)[XML]を使用する。 RDFの目的の一つに,XMLに基づいたデータのセマンティクスを, 標準化され相互運用可能な方法で規定することがある。 RDFとXMLとは相補的とする。RDFはメタデータのモデルであって, 転送及びファイル格納で要求される符号化の問題(国際化,文字集合など)の多くは, 参照によって対処するだけとする。これらの問題に対しては,RDFはXMLに依存する。 XMLはRDFの一つの可能な構文でしかなく,同じRDFデータモデルを表現する他の方法が考案されてもよい。 このことを理解しておくことも重要である。

RDFのゴールは広く,それは,特定のアプリケーション領域について仮定せず, どんなアプリケーション領域のセマンティクスをも(あらかじめ)定義せずに, 資源を記述する機構を定義することにある。 この機構の定義は,アプリケーション領域に依存しないが, 任意の領域の情報を記述するのに適していることが望ましい。

この規定に続いて,この枠組みを補う他の規定が作成されることになっている。 最も重要なことは,メタデータの定義を容易にするために, 多くのオブジェクト指向プログラミング及びモデル化システムと同様に, クラスシステムをもたせようとしていることにある。 (通常は特定の目的又は領域のために書かれた)クラスの集まりを スキーマ という。 クラスは階層的に組織化され,下位クラスへの洗練によって拡張可能性を提供する。 これによって,既存のスキーマから少しだけ違ったスキーマを生成するために, "車輪を再発明する"必要は無くなる。 基底スキーマに増加的修正を与えるだけでよい。 スキーマの共有可能性によって,RDFは,メタデータ定義の再利用性をサポートする。 RDFの増加的拡張可能性のために,メタデータを処理するエージェントは, 未知のスキーマの出所を追跡し,既知のスキーマにたどり着き, メタデータの意味のある動作が元来は処理する設計がされていなくても, その動作を実行できる。 RDFの共有可能性及び拡張可能性によって,メタデータの著者は, 他者によってなされた仕事をもとに, 多重継承を使用して,定義を"混合"したり, そのデータに複数のビューを与えたりできる。 さらに,複数の情報源からの複数のスキーマに基づいたRDFインスタンスデータを生成すること (すなわち,異なる型のメタデータを"差し挟む"など)ができる。 スキーマそれ自体がRDFで定義されていてもよい。この規定と対になる規定 [RDFSchema]は, RDFスキーマを記述するための特性及びクラスの組みを示す。

多くの団体が集まってメタデータの表現及び転送の基本原理を合意した結果として, RDFは,次のいくつかの異なる出所からの影響を受けた。

a) HTMLメタデータ及びPICSという形で,ウェブ標準化の団体
b) 図書館の団体
c) SGML及びより重要なXMLという形で,構造化文書の団体
d) 知識表現(Knowledge Representation,以降KR)の団体

RDF設計に貢献したこれ以外の技術領域も存在する。 これには,オブジェクト指向プログラミング, モデル化言語,及びデータベースが含まれる。 RDFは,KRの領域から影響を受けてはいるが,推論 のための機構を規定しないことに, この分野に精通している人は注意。 RDFは,単純なフレームシステムとして特徴付けることができる。 推論機構は,このフレームシステムの上に構築できる。

2. 基本的なRDF

以降 省略