4.2 Font WG

4.2.1 背景

文書情報処理の普及によって, 国際間での文書交換の必要性に加えて文書版面の体裁保存の要求が高まり, 送り手と受け手との間のフォント情報の共有が強く求められるようになってきた。そこで必要になるフォント情報交換の規格については, 既に次のものが制定され, または検討されていることが, 1998年度までの調査研究によって明らかになっている。

(1) ISO/IEC JTC1
ISO/IEC 9541-1, Font information interchange, Part 1 Architecture
  (JIS X 4161, フォント情報交換 体系)
ISO/IEC 9541-2, Font information interchange, Part 2 Interchange format
  (JIS X 4162, フォント情報交換 交換様式)
ISO/IEC 9541-3, Font information interchange, Part 3 Shape representation
  (JIS X 4163, フォント情報交換 形状表現)
(2) W3C
Web Font (WD-font-970721)

1998年度の活動におけるMLIT等での議論は, 多言語文書(注1)の交換の必要性が今後さらに増加することを確認するものであり, そこで提案された利用者要求は, これまでのフォント情報交換の規格によって必ずしもに充分に満たされるものではなかった。そこで, フォント情報交換を規定するISO/IEC 9541に機能追加を行うAmendmentを作成するプロジェクトを, 1998年11月にISO/IEC JTC1/SC34において立ち上げて, AM3 to ISO/IEC 9541-1(注2)および AM1 to ISO/IEC 9541-2(注3)に対応するPDAMテキスト(PDAM3, PDAM1)を作成する作業を1998年度末までに行った。

  注1: 多言語文書
多言語文書交換とは, 通常次の意味で使われているが, ここでは(2)の意味でこの言葉を用いる。
(1)複数の言語で書かれた複数の文書の交換。ただし一つの文書は単一の言語で記述されている。
(2)文書中に複数の言語が混在する, 例えば1ページ内, 1パラグラフ内, 1行内に複数の言語部分が存在する文書の交換。
(3)主要対象言語を異にするオペレーティングシステムに基づくシステム間での文書交換。例えば日本語Windows環境で作成された日本語文書をスペイン語Windowsの環境でレビューする。

  注2: AM3 to ISO/IEC 9541-1
フォントリソースのデータ構造を規定するISO/IEC 9541-1に対して, 多言語文書の記述に用いられるフォント属性を追加する。

  注3: AM1 to ISO/IEC 9541-2
追加したフォント属性の交換フォーマットを規定する。

今年度はこの活動を継続して, 2件のAmendmentの完成に向けてステップを進める。

4.2.2 活動課題

ISO/IEC Directivesに規定する作業手続きを考慮して, 1999年度には次の課題の推進を予定し, 2件のDAM投票の開始までを目標とした。

4.2.3 本年度の活動

(1) SC34 PleneryおよびSC34/WG2, 1999/04/19-23, Granada

1998年度に作成された2件のドラフトを1999年4月のSC34/WG2会議においてレビュー/修正し, それらのテキストをPDAM投票にかけることを1999年4月のSC34 Plenaryで承認した。

SC34のResolution(SC34 N0062)の関連部分の抜粋を次に示す。

"Resolution 4: SC 34 Texts for Ballot"

JTC 1/SC 34 approves the following texts for PDAM/FPDAM/CD/FCD registration and ballot:

ISO/IEC 9541-1/PDAM 3
(SC34 N0071)
Information Technology - Font Information Interchange - Part 1: Architecture - Amendment 3: Multilingual Extensions to font resource architecture
ISO/IEC 9541-2/PDAM 1
(SC34 N0072)
Information Technology - Font Information Interchange - Part 2: Interchange Format - Amendment 1: Support for Font Technology Advances

この会議では, SC34/WG2はCICCの活動の重要性を認識し, CICCとLiaisonを結ぶ決定を行った。SC34/WG2のRecommendation(SC34 N0075)の関連部分の抜粋を次に示す。

Recommendation 4. Liaison

WG2 accepts the liaison requests WG2 N06 and N07 and establishes the following liaisons:

Organization Liaison Representative from WG2 Liaison Representative to WG2
CICC Y. Okui Takayuki K. Sato
CJK DOCP Y. Komachi C. C. Hsieh

(2) PDAM投票 1999/08期限

2件のPDAMテキストは賛成多数で承認された。つまり投票した10ヶ国の中で, Abstainingを表明したフランスとUSAを除く8ヶ国がFavour(Australia, China, Denmark, Ireland, Italy, Japan, Netherlands, Norway)を投じ, 日本からコメントが添付された。

それぞれのSummary of voting(SC34 N0094およびSC34 N0095)に掲載された日本のコメントを次に示す。

ISO/IEC JTC 1/SC 34 N 94

Summary of Voting on SC 34 N 71, ISO/IEC 9541-1:1991/PDAM 3, Information Technology - Font Information Interchange - Part 1: Architecture - Amendment 3: Multilingual extensions to font resource architecture  

COMMENTS

Japan

The National Body of Japan approves the PDAM3 to ISO/IEC 9541-1 (SC34 N0071) with the following comments.

(1) D.1, Figure 5, 6 and 7
Illustrated examples should be separated with each other.
(2) D.2 Figure 8
Illustrated examples should be separated with each other.

ISO/IEC JTC 1/SC 34 N 95

Summary of Voting on SC 34 N 72, ISO/IEC 9541-2:1991/PDAM 1, Information Technology - Font Information Interchange - Part 2: Interchange Format - Amendment 1: Support for font technology advances 

COMMENTS

Japan

The National Body of Japan approves the PDAM3 to ISO/IEC 9541-1 (SC34 N0071) with the following comments.

(1) 1.
The meaningless "=" at line ends should be removed.
(2) 2.
The meaningless "=" at line ends should be removed.

(3) SC34 PlenaryおよびSC34/WG2, 1999/11/29-12/03, Philadelphia

PDAM投票の結果を受けて, コメント対処文書および新テキストを1999年11月のSC34/WG2で審議し, 新テキストをDAM投票にかけることを1999年11月のSC34 Plenaryで承認した。

Plenaryで承認されたWG2のRecommendation(SC34 N0122)の関連部分の抜粋を次に示す。

1. DAM3 to ISO/IEC 9541-1: Multilingual extensions to font resource architecture

WG2 accepts WG2 N19 and WG2 N21 as disposition of comments on PDAM3 and DAM3 text respectively and forwards the DAM3 text to the SC34 Secretariat for processing.

2. DAM1 to ISO/IEC 9541-2: Support for font technology advances

WG2 accepts WG2 N20 and WG2 N22 as disposition of comments on PDAM1 and DAM1 text respectively and forwards the DAM1 text to the SC34 Secretariat for processing.

これらのDAMテキストは,それぞれSC34 N0115, SC34 N0116として公表されている。

(4) DAM投票

1999年11月のSC34 Plenaryの決定に従い,2件のFDAM手続きが開始された。

(5) ISO以外での活動

ISO/IEC JTC1/SC34のメンバ国の文書では, この拡張の必要性を感じ, その利点を必ずしも享受しない国が多いので, 次の国際的な会議の場を利用して, JTC1/SC34のメンバ国以外のフォントエキスパートの意見を聞き, DAMテキストに反映させた(14th 日中韓文書処理会議での議論については,DAM投票結果の対処文書等に反映させる)。

4.2.4 今後の課題

ここで開発したAmendmentsによって, フォント情報交換規格は, インタネット環境等での多言語文書情報の電子的配布および交換に寄与することが期待される。

電子的に配布され交換された多言語フォント情報は, 多言語文書として適切なフォーマット指定に基づくレンダリング処理を施されて, 読み易い版面または送り手が望む版面が得られる。多言語文書に関するフォーマットおよびフォーマット指定については, W3C (World Wide Web Consortium)[1], JIS原案作成委員会[2],[3]などで検討が開始されている。しかしそれらの検討は, 極めて使用頻度の高い複数言語だけを含む多言語文書に限定されていて, 東アジアで必要になる多言語文書のサポートは充分ではない。

そこでこのフォント情報交換の多言語拡張につづく今後の課題として次の調査研究が強く望まれる。

文献

附属資料