3.1 ユーザ要求

1994年以降、WWWを使って情報を発信する事例が急増している。WWWは、企業情報、商品情報などを発信するメディアとして用いられており、電子商取引のメディアとしても有望視されている。

しかし、WWW上で提供される情報は膨大であるため、また、様々な種類の情報が区別されることなく一つの媒体上に存在するため、ユーザが目的の情報にたどり着くことは困難となっている。

このような問題に対し、インターネット普及初期からWWW上の情報選択の効率化のためのサービスが展開されている。その仕組みとして現時点で有力なのは、Yahoo!が最初に始めたジャンル別にURLを整理(カテゴリ化)していくアプローチと、AltaVistaなどが始めた全文検索を実現するアプローチの二つがある。しかし、どちらも一長一短である。ジャンルによる樹形図的分類では、実際は分類不能なリソースが存在することや、既定の分類以外の基準によって一覧できないことなどの問題が残る。全文検索は、検索結果のノイズが高いことが従来から指摘されている。データマイニングなどの手法によって全文検索の効率を向上する研究は盛んに行なわれているが、ユーザの必要を満たすには至らない。

いずれのアプローチを採っても、WWWから類似した情報だけを横断的に選びだすような、きめ細かな検索は困難である。例えば、「ミニディスクプレーヤの商品情報のページばかりを見たい」という具体的な要求には応えることができない。

しかし、実際の買い物をする場合は、このような要求は普通に生じるものである。買い物の場面では、人間は、情報を単に平面的にブラウズするだけでなく、ある基準(商品名、価格、品質など)に従って情報を取捨選択している。全文検索のようにWWW全体を対象にするのではなく、対象とする範囲が狭くなったとしても、確実な情報が入手できることが望まれている。
 

3.2 検討

そこで、カテゴリ化や全文検索とは異なるアプローチが求められる。一つの解決策として、現在、ネットワーク上の情報管理の技術として、メタデータが注目されている。これは、ウェブページなどのネットワークオブジェクトのもつ属性に関する記述をオブジェクト自体とは別に与えるものである。様々な情報が相乗りするメディアであるインターネットでは、ある意図に適うオブジェクトだけを検索によって取り出すということは事実上不可能であるが、そのネットワークオブジェクトがもつ属性を記述しておくことで、そのような検索も可能になる。

この技術は、WWWの商品情報のナビゲーションにも応用可能である。目的の商品に関するページをWWWでナビゲートするためには、検索エンジンのような機能では不十分であり、あらかじめ記述された属性情報を利用する必要がある。但し、それぞれの情報提供者が全く独自にメタデータを記述していては、メタデータを記述する意味がない。そこで、メタデータの標準的な辞書、および異なるメタデータを交換するための仕組み、またこれらを標準化することが同時に必要とされている。
 


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