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1. はじめに:議会情報の利用促進とインターネットの言語環境構築

山内康英
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)
アジア・太平洋議員フォーラム(Asia Pacific Parliamentary Forum: APPF)(1)は、情報技術とりわけコンピュータネットワークが、21世紀の産業社会に与える影響の大きさを考え、1998年からインターネットを利用した立法府間の情報交流プロジェクトに着手した。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)が主催する「APFont研究会」は、アジア・太平洋議員フォーラム日本事務局(2)と協力して、1997年以降、議会情報の利用促進とWebの多言語表示などについて調査研究を行っている。本稿は、このアジア・太平洋議員フォーラムの活動とAPFont研究会の研究内容に関する2000年の度報告書である。この活動は、国際的な政治組織がインターネット利用の推進とその技術的な問題を取り上げた、という点でユニークであり、国際政治における情報技術の利用と言語の問題について、一つのケーススタディになると考えられる。

本研究会の現在のメンバーは以下の通りである。

アジア・太平洋議員フォーラムと国際交流:98年以降の経緯

1998年1月のアジア・太平洋議員フォーラム総会(韓国)は、インターネットを利用した議会間の情報交流に関する決議を採択し、この計画をアジア・太平洋オープン・インフォメーション・ネットワーク(Asia Pacific Open Information Network: APOINT2001)と名付けた。1998年9月の執行委員会(ペルー)では、APPF技術ワーキング・グループの会合を開いて、「APOINT2001プロジェクト」の進捗状況について討議した。この中で、各国が分担して行動計画を策定し、2001年にレビューを行うことが決まった。具体的に取り上げることになった課題としては以下のようなものがある。 ペルー議会は、APPFメンバー国で、議会がWebサイトを持たない国を支援する計画に取り組むことを決め、1998年以降、フィジー、ベトナムなどの議会と協力して、個別に議会Webサイトを立ち上げた。この結果、1999年からAPPFメンバー国の議会は、何らかの形でWebサイトを持つようになっている。

APPF日本事務局は、「APOINT2001プロジェクト」の一環として、ネットワークの多言語環境の整備を担当することを決め、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターが主催するAPfont研究会は、APPF技術ワーキング・グループと協力して、ネットワークの多言語環境について調査研究を行った。

2000年度のAPfont研究会の主要な活動は、以下の通りである。

AAFontの利用促進

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所では、主としてメインフレーム向けに、研究対象となる各国言語の文字情報をデジタル化して「AAFont」を開発している。現時点では、以下の文字が利用できる。Arabic(Arabic、Hausa-Ajami、Persian、Urdu、Pashtu、Uighur and Malayan subsets)、Traditional Mongol、Thai、Khmer、Devanagari、Bengali、Tibetan、Laotian、Burma-Mhong、Tamil、Kannada、Malayalam、Telugu。現在、APFont研究会では、「AAFont」(ビットマップ・データ)をアウトライン・フォントに変換し、インターネットを通じた利用ができるようにする作業を進めている。

Linuxでの利用

Windows以外のOSとしてLinuxを選び、AAFontの利用を例として、Linuxの多言語化のための標準化活動を行っている。

国際グリフ登録システムの開発

AAFontなどの言語や記号(グリフ(glyph))を、ネットワーク上で広く利用するためには、グリフの画像情報をオープンソースとして登録し、識別用の一意的なコードを付与した上で、データベースとしてオンラインで利用可能にする必要がある。(3)ISO/IEC 10036に基づく国際グリフ登録作業は、従来、米国のAFII (Association for Font Information Interchange)が行っていたが、その活動が休止しているために、APFont研究会/GLOCOMでは、ISO/IEC JTC1/SC34に諮って、ISO/IEC10036の内容を一部修正した上で、国際グリフ登録システムを運営するためのデータベース用アプリケーションの開発などを行っている。

  1. アジア・太平洋議員フォーラム(Asia Pacific Parliamentary Forum: APPF)は、国際社会の相互理解の推進を目的として、アジア・太平洋地域の議員が1993年に設立した国際組織である。現在の参加国は、以下の26カ国(1オブザーバー)になっている。タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、ベトナム、ラオス、カンボジア、日本、韓国、中国、ロシア、米国、カナダ、メキシコ、チリ、ペルー、オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、モンゴル、コロンビア、マーシャル諸島、ミクロネシア、フィジー、ブルネイ(オブザーバー)
  2. アジア・太平洋議員フォーラム日本事務局は現在、中曽根事務所が運営している。本研究会の活動にご支援を頂いているアジア太平洋議員フォーラムのメンバー議員各位とりわけ中曽根康弘会長、衆議院、参議院、外務省の担当者各位、中曽根事務所田中茂秘書に御礼申し上げたい。
  3. グローバルフォントサーバの構想については以下を参照。


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