JIS X 6281:2005

120 mm再生専用形光ディスク(CD-ROM)
解説



この解説は,本体及び附属書に規定した事柄,並びにこれらに関連した事柄を説明するものであって,規格の一部ではない。

この解説は,財団法人日本規格協会が編集・発行するものであり,この解説に関する問合せ先は,財団法人日本規格協会とする。


1. 改正の趣旨

原規格のISO/IEC 10149は,その第1版が1989年に発行された後,第2版が1995年に発行された。国内では,第1版のISO/IEC 10149:1989に対応するJIS X 6281-1992が発行されて以来,改正が行われていなかった。今回のJIS X 6281の改正は,大きな市場を獲得しているCR-ROMの国内での規定内容を国際規格に一致させ,既に実装されている内容に一致させることを主眼とする。

ISO/IEC 10149:1989からISO/IEC 10149:1995への改正に際して変更された内容を,解説表1に示す。

解説表1 ISO/IEC 10149:1989からISO/IEC 10149:1995への改正における変更内容

変更箇所変更内容
Foreword para 3, Subcommittee ...を追加。
para 4を追加。
6 Frammability --> Inframmability
8.2 1 --> α
13.2 Coded representation of user data --> Bit coding
13.2.1〜13.2.2.3を削除。これに伴ってFigure 9も削除。
14, Figure 11 横罫を追加。(編集上の誤り)
15 as shown in figure 13 --> as follows
22 bn --> bn
(下付き添字にするのを止めた。しかしFigure 14では下付き添字が残っている。)
22.3.5 as shown in figure 18 --> as follows
Annex B, Figure B.1 Caption ("Scrambler")を追加。
Annex D Table D.1 (concluded)を追加。


2. 改正の経緯

改正原案の作成は,財団法人光産業技術振興協会(OITDA)に設置された光ディスク標準化委員会のフォーマット分科会において,2002年度に開始された。2002年度には要約JISとしての改正原案を完成し,光ディスク標準化委員会でレビューを受けた。その後,要約JISの制度が廃止されたため,全訳で改正原案を提出することが要求され,2003年度から全訳版の作成に着手した。

改正前のJIS X 6281-1992のテキストが電子化されていなかったため,まずそれを電子化し,その電子化テキストに対してISO/IEC 10149:1989からISO/IEC 10189:1995への変更箇所を反映していくという手順で作業を推進した。図は電子的に新たに作成し,文字列はJIS X 6281-1992をOCRで読取って修正し,テキストノードの構造化を行った。改正原案は2004年2月に完成し,光ディスク標準化委員会での承認を受けた。

光ディスク標準化委員会での承認を受けた改正原案に対して,編集上の軽微な修正を施した原案を2004年4月にOITDA事務局から日本規格協会(JSA)に提出した後,関連特許の調査をPhilipsに依頼し,2004年6月には2件の特許に関する声明書をいただいた。OITDA事務局はこの声明書を7月にJSAに提出している。その後,JSAからの要求に応じて,改正原案の図に関するEPSファイルを提出した。

2004年11月には,規格調整分科会(情報関係)でこの改正原案に対する審議が行われ,規格調整委員からのコメントを反映した修正版が2004年12月始めにJSAに提出された。その原案は,2005年10月の情報技術専門委員会で審議され,JISとしての改正が承認された。

2.1 改正の方針

改正原案を作成した原案委員会は,前版のJIS X 6281-1992の原案作成委員会とは異なり,前版における翻訳方針等についての継承がとれなかったので,前版に散見された翻訳の省略,意訳,節の細分化(解説表2を参照)は止めて,節構成,段落構成に至るまで原規格にできるだけ忠実な翻訳とした。原規格では,Figure 9が欠番になっているが,この改正JISでも図9は欠番とした。

解説表2 JIS X 6281-1992におけるISO/IEC 10149:1989との構成の差異

ISO/IEC 10149:1989 JIS X 6281-1992
  3., 5.1.4, 8.6, 10., 11.5, 20.3, F.1, F.2 に追加記述。
18 Control Bytes - F3-Frames and Sections 18. F3フレームとセクション
18.1 F3フレーム
18.2 セクション
(18 のpara 2を分割。)
19 は,2 sentencesから成る。 19 は,文を含まない。
  19.1 を(1), (2), (3), (4)に分割。
  20.4 情報トラックの連結
(追加)
21 Addressing system in the Information Area 21. 情報領域でのアドレッシングシステム
21.1 セクションアドレス (21 のpara 1)
21.2 セクタアドレス (21のpara 2以降)
  附属書G
(追加)

3. 審議中に問題となった事項

3.1 訳語

訳語については,前版(JIS X 6281-1992)の出版から多くの年月を経過しているため,関連規格の出版等によって訳語の変化が見られ,最近定着している訳語への変更を行った。ただし,見出し等に使われている主用な訳語については,混乱を避けるために前版の訳語を踏襲した。

解説表3 前版(JIS X 6281-1992)の訳を修正した訳語

原語訳語前版での訳語備考
8-bit to 14-Channel bit conversion8ビットから14チャネルビットへの変換8/14変換
8-to-14EFM8-14
address番地アドレス
addressing番地付けアドレシング
audio data音声データ音声情報情報はinformationの訳語。
byte positionバイト位置番地番地は,addressの訳語としてこの規格で採用している。
circular tolerance zone円形公差区域円形公差領域
code word符号語コードワード
coding符号化コーディング,コード化訳語として符号化が定着。
control field制御フィールド制御領域領域は,areaの訳語としてこの規格で採用している。
data streamデータストリームデータ転送
decoder復号器デコーダ
deflection偏位変位deviation−偏差,displacement−変位,
distance−変位
digitalディジタルディジタル,デジタルディジタルに統一。
duty cycleデューティサイクル半値幅
encoder符号化器エンコーダ
encoding符号化エンコーディング
error誤りエラー
error correction誤り訂正エラー訂正
extreme value極値ピーク値
fieldフィールド領域領域は,areaの訳語としてこの規格で採用している。
geometry幾何幾何学"学"ではない。
identification number識別番号認識番号
indexインデクスインデックス
information interchange情報交換情報互換互換はcompatibleの訳語。
information storage情報記憶情報蓄積storage mediaの訳語として記憶媒体が定着。
interleaveインタリーブインターリブ,インタリーブ
low-pass filter低域フィルタローパスフィルタ
material材質材料
matrix行列行列式
merging併合マージン片仮名表記のマージンは,通常は余白(margin)の意味で使われる。
operating environment動作環境使用環境
parity symbolパリティ記号パリティシンボル
peak-to-peak valuepeak-to-peak値ピーク値
physical address物理番地物理的番地
power spectrumパワースペクトル出カスペクトル
pupilひとみ(瞳)
radial半径方向ラジアル,半径方向
running time走行時間経過時間経過時間は,elapsed timeの訳語としてこの規格で採用している。
scrambledスクランブル化したスクランブル後の
scramblingスクランブル化スクランブリング
setting設定セッティング
start開始開始点
storage test保存試験保存性テスト
tableテーブル
table of contents目次内容のテーブル
testing environment試験環境測定環境測定は,measurementの訳語としてこの規格で採用している。
tolerance許容範囲許容差,許容値,許容範囲
user利用者ユーザ
weight重さ質量
wordワード


この規格で採用したその他の訳語を解説表4に示し,今後の関連規格の作成に際しての参考とする。

解説表4 訳語一覧

原語訳語備考
360°tern360度分の経路
8-to-14 encodingEFM符号化
accessアクセス
addressable番地付け可能な
beginning始点startは,開始とする。
birefringence複屈折
bit rateビットレート
bottom
burrsバリ
circularly polarized円偏光
clampingクランプ
clamping areaクランプ領域前版のJISのとおり。(JIS S 8605-1993では,保持部。)
column
condensation結露
copyコピー前版のJISのとおり。
cross-over pointクロスオーバポイント
depressionくぼみ
deviation偏り
diagonal
diffract回折する
digital sum valueディジタル合計値
dimensional characteristics寸法特性
distance変位
end終端
entrance surface入射面
first transition area第1領域前版のJISのとおり。
index of refraction屈折率
information layer情報層
inscribe内接する
lead network進み回路網
lozenge菱形
measurement測定
moduloを法として(adv)
noise雑音
normal法線 (adj. 垂直な)
normal incidence垂直入射
ONE“1”
ONE Channel bitチャネルビット“1”
optical stylus光学ヘッド
outer rim外縁
pause休止区間
polarization偏光
presetプリセット
radial runout半径方向振れ
rateレート
Reed-Solomon product-like codeリードソロモン積符号前版のJISのとおり。
reference plane基準面
retardationリターデーション前版のJISのとおり。
rim area周縁
row
second interval第2期間前版のJISのとおり。
second transition area第2領域前版のJISのとおり。
sectionセクション前版のJISのとおり。
severity厳しさJIS C 0027による。
spiralら(螺)旋となる
spiral lineら(螺)旋状の線
subdivision細分
sync同期信号前版のJISのとおり。ただしsync headerは,
前版のJISに合わせて同期ヘッダとする。
top
unrecorded part未記録部分
wave front error波面収差
ZERO“0”
ZERO Channel bitチャネルビット“0”
zone区域

3.2 章・節構成

原規格では,Figure 1〜8が本文のそれらへの参照位置とは異なる12.6.2の後に置かれていて,参照が不便であった。JISの前版でもそれを踏襲していた。この改訂版では,それらへの最初の参照箇所の直後に置いて,参照を容易にした。

3.3 前版に対する主な修正

3.3.1 前版での未翻訳箇所

前版では,次の未翻訳箇所があったので,今回の改正ではそれらにも翻訳を施した。

1, para 1, sent 1

3, para 1

4, para 1

4.14, 定義文の後半

5.2, para 1

8, para 1, para 2, para 3, para 4

12, para 1

12.1, para 2, sent 3

12.5.2, para 1

12.6.2, para 3

20, para 2, para 3

13以降には,前版での未翻訳箇所が多いのでその記載を省略する。

3.3.2 前版における訳文に対する主要な修正

前版における訳文に対する主要な修正を次に示す。

6, 
[前版]マッチの炎によって着火してもよいが 
[修正]マッチの炎から着火するとき

8.5, 
[前版]
ディスク底面は,基準面Pからh8〜h9の範囲にあり,ディスク上面は,基準面Qから
h10〜h11の範囲とする。
[修正]
ディスク底面は,基準面Pからh8まで高くてよく,基準面Pからh9まで低くてよい。
ディスク上面は,基準面Qからh10まで高くてよく,基準面Qからh11まで低くてよい。
(前版の表現を使うと,ディスク底面は,基準面Pから-h9〜+h8の範囲にあり,
ディスク上面は,基準面Qから-h11〜+h10の範囲になる。)

複数箇所, 
i.e.の訳が,e.g.の訳になっているので,それを修正

13以降の修正については,その記載を省略する。

3.3.3 その他の修正

その他の修正の要点を次に示す。

shall,shouldの訳し分け。
以上,より大きいの使い分け。
以下,より小さいの使い分け。
文中での引用規格をIEC, ISOからJISに変更。
unordered listをa), b),...のordered listに変更。
図題を図の上から下に変更。
図D.1に図題“8ビットから14チャネルビットへの変換”を追加。

3.3.4 原規格ISO/IEC 10149:1995の誤り

改正原案作成に際して,原規格ISO/IEC 10149:1995における次に示す明らかな誤りについては,訂正して翻訳した。

8.1
[原規格]see 8.5
[正]see 8.4

8.8の2行上
[原規格]h15
[正]h15

11.4
[原規格]see clause 20 
[正]see clause 19

14, Figure 11
[原規格]rules under Sync, User Data, EDC, Intermediate, P-Parity, Q-Parity
[正]no rules

19.4
[原規格]confi-guration 
[正]configuration

21
[原規格]clause 16
[正]clause 18

22 Figure 14
[原規格]bn 
[正]bn

22.3.3.2
[原規格]Index O1 
[正]Index 01

22.3.4.4
[原規格]see 21.3.3.3 
[正]see 22.3.3.3

22.3.5.1
[原規格]ENA/UPC
[正]EAN/UPC

Annex B
[原規格]see Appendix E
[正]see Annex E

Annex B
[原規格]pre-set
[正]preset

C.1
[原規格]F1-frames
[正]F1-frames

C.8
[原規格]F1-frames
[正]F1-frames


4. 原案作成委員会

この規格の原案は,財団法人光産業技術振興協会に設置された光ディスク標準化委員会のフォーマット分科会で作成され,光ディスク標準化委員会のレビューを受けた。これらの委員会の委員構成(2003年度末)を,それぞれ解説表6及び解説表5に示す。

解説表5 光ディスク標準化委員会の構成

氏名所属
(委員長)小町 祐史パナソニックコミュニケーションズ株式会社
(副委員長)入江 満大阪産業大学
(副委員長)菅谷 寿鴻株式会社東芝
布施 剛之ソニー株式会社
横川 文彦パイオニア株式会社
入江 英之DVDフォーラム
小川 博司ソニー株式会社
金澤 安矩日立マクセル株式会社
高橋 正悦株式会社リコー
田中 誠一財団法人デジタルコンテンツ協会
田辺 隆也日本電信電話株式会社
土屋 洋一三洋電機株式会社
徳丸 春樹日本放送協会
戸島 知之NTTエレクトロニクス株式会社
中根 和彦三菱電機株式会社
八谷 祥一株式会社ガイア・システム・ソリューション
藤本 健文日本フィリップス株式会社
山下 経株式会社日立製作所
山田 昇松下電器産業株式会社
渡部 賢一財団法人日本規格協会
谷口 裕則経済産業省産業技術環境局
(事務局)増田 岳夫財団法人光産業技術振興協会
(事務局)伊藤 和弘財団法人光産業技術振興協会
(事務局)川井 隆志財団法人光産業技術振興協会

解説表6 フォーマット分科会の構成

氏名所属
(統括)小町 祐史パナソニックコミュニケーションズ株式会社
(副統括)高橋 正悦株式会社リコー
(副統括)八谷 祥一株式会社ガイア・システム・ソリューション
石井 正則日本電気株式会社
伊藤 精悟株式会社東芝
工藤 芳明大日本印刷株式会社
小出 大一日本放送協会
後藤 芳稔松下電器産業株式会社
沢田 要川鉄情報システム株式会社
菅谷 寿鴻株式会社東芝
徳光 健司株式会社日立製作所
中根 和彦三菱電機株式会社
吉岡 誠有限会社aIPid
渡部 賢一財団法人日本規格協会
谷口 裕則経済産業省産業技術環境局
(事務局)増田 岳夫財団法人光産業技術振興協会
(事務局)川井 隆志財団法人光産業技術振興協会