JIS X 4167-3:2003
(ISO/IEC 10175-3:2000)

文書印刷応用 (DPA)
第3部: 管理の抽象サービス定義及び手続き
解説



この解説は,本体及び附属書に規定した事柄,並びにこれらに関連した事柄を説明する ものであって,規格の一部ではない。


1. 制定の趣旨

プリンタはその高機能化と低価格化が進み, 家庭内にもカラープリンタが普及している。関連する業界も, 印刷業界だけでなく, 事務機械, 情報機械, 家電, 写真, 出版, コンビニ等に及んでいる。特にコンビニは, 大衆のオンデマンド出版基地として新たな活動を展開しはじめている。

このように大量普及したリソースをインタネットで結び相互に利用する要求は高まっており, 既に標準情報(TR)として公表されているインタネット印刷プロトコル(IPP)[1], [2]はこの要求への一つの解であった。IPP対応のプリンタは既に市場に出ているが, その結果, ネットワーク印刷管理に対する機能要求が多くの利用者が出され, DPAのJIS化への要望が高まっている。

このJIS制定により, カスタム出版, オウン出版, オンラインプリクラ等の新たな印刷大衆化への動向を加速化できることが期待され, 出版業界, 印刷業界, 新聞業界等の活性化が期待される。


2. 制定の経緯

一連のDPAのJIS化のための調査研究は, IPPの標準情報(TR)の原案作成を行った, (財)日本規格協会の情報技術標準化研究センター(INSTAC)に設けられた電子出版技術調査研究委員会で開始された。

原国際規格(ISO/IEC 10175)はISO/IEC JTC1/SC18が担当したものであり, JTC1/SC18の活動はその後JTC1/SC34に移されて今日に至っている。JTC1/SC34が開発した国際規格のJIS化作業は, INSTACの文書処理及びフォントの標準化調査研究委員会(DDFD)で行われている。

そこで2002年度になってから, 電子出版技術調査研究委員会でのDPAに関する活動内容をDDFDの作業グループ1(WG1)に移し, そこでJIS原案の作成を行った。DDFDのWG1は, ISO/IEC 10175の各パートを翻訳(要約)してJIS原案を作成し, 2002年9月に経済産業省に提出している。


3. 規定概要

DPAは, 分散環境における印刷プロトコルの規格であって, 次の内容を規定している。

DPAオブジェクトは, DP-Server内のオブジェクトであって, DP-User/DP-Administratorからの操作によって, 問合わせ/操作が行われる。

DPAの第3部は, 次の内容を規定する。


4. 引用規格及び対応JIS

解説表1は, JIS本体の附属書にある原国際規格の引用規格(Normative references)に対応するJISがある場合, これを表したものである。

なお, 国際規格の名称は, 原国際規格に記述されているため省略している。

解説表1 引用規格及び対応JIS

国際規格番号JIS番号JIS名称備考
ISO/IEC 7498-1:1994JIS X 5003:1987開放型システム間相互接続の基本参照モデル全訳規格
ISO/IEC 8824:1990JIS X 5603:1990 開放型システム相互接続の抽象構文記法1(ASN.1)仕様全訳規格
ISO/IEC 8825:1990JIS X 5604:1990 開放型システム相互接続の抽象構文記法1(ASN.1)の基本符号化規則仕様全訳規格
ISO/IEC 10175-1:1996JIS X 4167-1:2003 文書印刷応用(DPA) 第1部: 抽象サービス定義及び手続き要約規格


5. 用語

用語に関しては, この規格が要約規格であることから, JIS本体においては, 訳の対象から省略されている。原国際規格における用語(specific terminology)には, ISO/IEC 10179-1に規定する用語(specific terminology)を適用する。それと対応する日本語訳を解説表2に示す。

解説表2 訳語一覧

原国際規格箇条番号原国際規格における用語対応日本語
3.2.1administrator, system administrator管理者, システム管理者
3.2.2assured reproduction area確実な再現領域
3.2.3attribute属性
3.2.4attribute type属性型
3.2.5available利用可能
3.2.6busy stateビジー状態
3.2.7composition and layout process組版割付けプロセス*
3.2.8compulsory attribute必す(須)属性
3.2.9Control-Attribute-Package(CAP)制御属性パッケージ(CAP)
3.2.10document文書*
3.2.11document copy文書複写
3.2.12document-format文書様式
3.2.13document production instruction文書作製命令*
3.2.14document set文書集合
3.2.15final form document最終形式文書*
3.2.16imposition面付け
3.2.17initial-value-job初期値ジョブ
3.2.18job copyジョブコピー
3.2.19job result setジョブ結果集合
3.2.20logical medium論理媒体
3.2.21logical pronter論理プリンタ
3.2.22logical resource論理資源
3.2.23medium媒体*
3.2.24non-compulsory attribute非必す(須)属性
3.2.25object statesオブジェクト状態
3.2.26non-request state非要求状態
3.2.27output device出力装置
3.2.28pageページ
3.2.29page imageページ像*
3.2.30page description languageページ記述言語*
3.2.31physical medium物理媒体
3.2.32physical page物理ページ
3.2.33physical printer物理プリンタ
3.2.34physical resource物理資源
3.2.35presentation提示*
3.2.36print-access-protocol印刷アクセスプロトコル
3.2.37print-client印刷クライアント
3.2.38print-job印刷ジョブ
3.2.39print operation management instruction(PMI)印刷操作管理命令(PMI)
3.2.40print operation parameters(POP)印刷操作パラメタ(POP)
3.2.41print-request印刷要求
3.2.42print-server印刷サーバ
3.2.43print-service印刷サービス
3.2.44print-system印刷システム
3.2.45printing印刷
3.2.46privilege-attribute-certificate(PAC)特権属性証明書(PAC)
3.2.47ready-stateレディー状態
3.2.48Reference Coordinate System参照座標系*
3.2.49resource資源*
3.2.50revisable (form) document編集可能(形式)文書*
3.2.51service requestサービス要求
3.2.52sheetシート
3.2.53signature署名
3.2.54SPDL documentSPDL文書*
3.2.55supported支援された
3.2.56unavailable state利用不可能状態
3.2.57user利用者

備考 "*"を付した訳語は, 関連規格のJIS X 4154において採用された訳語と同じ。


6. 参考文献

[1] TR X 0017:2002, インタネット印刷プロトコル(IPP) 1.1: 符号化及びトランスポート, 2002-04

[2] TR X 0024:2001, インタネット印刷プロトコル(IPP) 1.1: モデル及び機能定義, 2001-12


7. 原案作成委員会

原案作成委員会である(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の"文書処理及びフォントの標準化調査研究委員会"(DDFD)は, 学識経験者, メーカ及び利用者で構成され, その委員会の中に実際の翻訳作業を行う作業グループ1(DDFD-WG1)が設置されている。それらの構成員を解説表3及び解説表4に示す。

解説表3 文書処理及びフォントの標準化調査研究委員会 構成表
氏名 所属
(委員長) 池田 克夫 大阪工業大学
(幹事) 鯵坂 恒夫 和歌山大学
(幹事) 小町 祐史 松下電送システム株式会社 (SC34専門委員会委員長)
安達 淳 株式会社沖データ
内山 光一 株式会社東芝
小笠原 治 社団法人日本印刷技術協会
高沢 通 大日本スクリーン株式会社
高橋 亨 株式会社日立製作所
岩田 悟志 経済産業省商務情報政策局
木戸 達雄 経済産業省産業技術環境局
大久保 彰徳 株式会社リコー
宮本 義昭 日本ユニシス株式会社
(オブザーバ) 高橋 昌行 経済産業省産業技術環境局
(事務局) 内藤 昌幸 財団法人日本規格協会

解説表4 作業グループ1(DDFD-WG1) 構成表
氏名 所属
(主査) 小町 祐史 松下電送システム株式会社 (SC34専門委員会委員長)
(幹事) 内山 光一 株式会社東芝
(幹事) 高橋 亨 株式会社日立製作所
安達 淳 株式会社沖データ
今郷 詔 株式会社リコー
小笠原 治 社団法人日本印刷技術協会
奥井 康弘 株式会社日本ユニテック
内藤 求 株式会社シナジーインキュベート
内藤 広志 大阪工業大学
野口 高成 ネクストソリューション株式会社
渡部 賢一 財団法人日本規格協会
(オブザーバ) 浅利 千鶴 浅利会計事務所
大久保 彰徳 株式会社リコー
高橋 昌行 経済産業省産業技術環境局
(事務局) 内藤 昌幸 財団法人日本規格協会