JIS X 4165:2002
(ISO/IEC 10036:1996, Cor.1:2001)
この解説は,本体及び附属書に規定した事柄,並びにこれらに関連した事柄を説明するものであって,規格の一部ではない。
ISO/IEC 10036の第1版[1]は, グリフ及びグリフ識別子の登録手続きを規定する規格としてISO/IEC JTC1/SC18/WG8(当時。現在はJTC1/SC34。)によって開発され, 1993年に出版された。その当時, 国際規格に対応するJISを検討していた国内の委員会において,“この登録手続きを運用する登録機関が国外にある間は, この国際規格のJIS化は不要であり, その機関が国内に移された際にJIS化を行うこととする。”との通商産業省(当時)の方針が示された。
その後, 2.に示す経緯があり, 2001年に国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)がISO/IEC 10036の登録機関としてISOによって指名された。
GLOCOMによる登録機関活動が2001年に開始されると, 直ちに数万件のグリフ登録要求が国内の組織からGLOCOMに提出され, それと同時に登録手続きの日本語での明示が求められた。
GLOCOMは, 作業の合理化のために登録手続きの電子化の検討を開始し, ISO/IEC 10036:1996に対する電子化を容易にするための修正要求[2]をISO/IEC JTC1/SC34に提出すると共に, 関係者に対してISO/IEC 10036:1996のJIS化の必要性を明らかにした。
(財)日本規格協会の情報技術標準化研究センター(INSTAC)に設けられた"文書処理及びフォントの標準化調査研究委員会"(DDFD)は, JTC1/SC34が開発した国際規格のJIS化作業を, 経済産業省からの要求に基いて行っている。ISO/IEC 10036:1996のJIS化に関するこの要望に応えるため, DDFDは, その2001年度の作業としてこのJIS原案作成を計画し, 活動を推進した。JIS原案は, 2002年5月に経済産業省に提出された。
ISO/IEC JTC1/SC18/WG8においてISO/IEC 9541(JIS X 4161〜4163が, この国際規格に一致している。)が開発されたとき, 同一の書体(typeface)に基づく各形状表現データの集合として定義されるフォントの交換に際して, 各形状表現データを特定するために, 抽象化した形状表現のコンセプトが必要になった。このコンセプトを, 以前からあったグリフという用語(ISO/TR 9544:1988[3]を参照。)で表現し, それを識別するためのグリフ識別子を定義した。
フォント及びフォント情報交換には, 次の要求がある。
そこでフォントの中のオブジェクトを特定するグリフ識別子は, 無限集合に近い集合を形成し, あらかじめ定義された空間に標準化されたマッピングで与えられる文字符号とはなじみ難い。そこで登録手続きを規定し, それに従って登録する機構が必要とされた。
この要求に基づいて, グリフ及びグリフ集合の登録手続きを規定するISO/IEC 10036:1993が発行された。その後, 標準ページ記述言語(SPDL)を規定するISO/IEC 10180[4](JIS X 4154がこの国際規格に一致している。)の開発に際して, フォント関連オブジェクト(フォント属性集合, グリフ指標対応表, フォント参照)の登録が必要になり, ISO/IEC 10036:1993を改訂してそれらの登録手続きを含め, ISO/IEC 10036:1996として発行した。
その後, ISO/IEC 10036:1996に対しては, 次の2件の技術訂正(Cor.)がある。
ISO/IEC 10036:1993が制定された当時, ISOの登録機関は5年以上の登録作業経験を必要とした。ISO/IEC 10036の開発を担当してきたAFII(Association for Font Information Interchange)は, 当時まだこの条件を満たさなかったため, 形式的にANSI(American National Standards Institute)を登録機関とし, AFIIがその作業を代行する形で, 登録作業が開始された。
5年間の登録作業経験を積んでから, AFIIは正式に10036登録機関となり, Los AngelesのAFIIオフィスに活動拠点を置き, 積極的な活動を開始した。その後, AFIIは活動拠点をRIT(ロチェスタ工科大学)に移し, グリフ登録を中心とするその活動を継続したが, 活動の推進を行ってきたUSA在住のほとんどのBoard of Directorが退職したため, AFIIは, ISO/IEC 10036登録機関を引き受けてくれる組織を探した。
AFIIのBord of Directorの一人がUnicode Consortium(UC)のメンバであったため, UCがISO/IEC 10036登録機関になることを, 受諾した[5]。しかし, UCは当初からグリフ識別子だけしか関心がなく, ISO/IEC 10036が規定する他の登録対象の登録については, 意図していなかった。さらに, 登録機関として承認されると, 直ちにUCは, 登録業務を行わないことを表明した。
そこで, JTC1/SC34からの要請に応えて, GLOCOMがISO/IEC 10036登録機関になることを, 受諾した。その後, 関連国内組織での調整, JTC1/SC34での承認, JTC1の承認[6], ISO Councilの手続きを経て, GLOCOMは2001年に登録機関として承認された。
訳語選定に際しては,JIS X 4161〜4163 フォント情報交換に使用している訳語との整合を配慮した。
この規格で採用した主な訳語(3. 定義に示す用語は除く。)を解説表1に示し, 今後の関連規定の作成等に際しての参考とする。
原語 | 訳語 | 備考 |
body | 団体 | |
organization | 組織 | |
formal | 形式的 | |
official | 公式 | |
council | 理事会 | |
glyph index map | グリフ指標対応表 | JIS X 4154に合わせる。 |
font reference font specification | フォント参照フォント仕様 | JIS X 4154に合わせる。 |
duplicate | 複製 | |
copy | コピー | |
review | 審査 | |
search | 調査 | |
fee | 料金 | |
cost | 費用 | |
national body | 参加国 | |
canonical character string from | 正規文字列形式 | JIS X 4172に合わせる。 |
medial form | 中間形式 | |
writing system | 表記システム | |
writing scripts | 表記のスクリプト | |
index value | 指標値 | JIS X 4154に合わせる。 |
projected activity | 活動案 | |
registry | 登録, 記録 | |
discretion | 裁量 |
原規格の表記には,
ISO/IEC 10036:1996に対するCor.2の内容を次に示す。このJIS X 4165には, b), c), d)以外の項目は既に反映されている。
a) Page 2, clause 3.7 Remove the 2nd sentence "ISO/IEC ... by the technical standard." b) Page 3, clause 5.2, paragraph 1 Replace "by mail" with "by postal mail or email". c) Page 4, clause 6, paragraph 1, 2nd sentence Replace "the registrar shall" with "the registrar should". d) Page 4, clause 6.1, paragraph 2, Page 5, clause 6.2, paragraph 2, Page 6, clause 6.3, paragraph 2, Page 7, clause 6.4, paragraph 2, and Page 8, clause 6.5, paragraph 2 Replace "the registration number 'm' in ... inclusive" with "the registration number 'm' of a positive integer". e) Page 6, clause 6.2.1 c) Replace "with shorter glyph identifiers" with "with shorter collection identifiers". f) Page 10, clause B.5, and Page 15, clause C.5 Replace "SPDL font reference" with "ISO/IEC 10180 font reference". g) Page 15, Figure C.4 Replace ".afii61859" and ".afii61863" with "afii61859" and "afii61863" respectively.
[1] ISO/IEC 10036:1993, Information technology — Font information interchange — Procedure for registration of glyph and glyph collection identifiers, 1993-07
[2] ISO/IEC JTC1/SC34 N152, Requirements for TC to ISO/IEC 10036:1996, 2000-05
[3] ISO/TR 9544:1988, Information processing — Computer-assisted publishing — Vocabulary, 1988-07
[4] ISO/IEC 10180:1995, Information technology — Processing languages — Standard Page Description Language (SPDL), 1995-12
[5] ISO/IEC JTC1 N5720, Appointment of the Unicode Consortium as Registration Authority for ISO/IEC 10036, 1999-01
[6] ISO/IEC JTC1 N6340, Approval of JTC 1 N 6233 - Request for JTC 1 Approval of Transfer of Responsibility from AFII to GLOCOM of the Registration Authority for ISO/IEC 10036, 2000-11
原案作成委員会である(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の"文書処理及びフォントの標準化調査研究委員会"(DDFD)は, 学識経験者, 生産者及び利用者で構成され, その委員会の中に設置された作業グループ1(DDFD-WG1)が翻訳作業を行った。それらの構成員をそれぞれ解説表2及び解説表3に示す。
氏名 | 所属 | |
---|---|---|
(委員長) | 池田 克夫 | 京都大学 |
(幹事) | 鯵坂 恒夫 | 和歌山大学 |
(幹事) | 小町 祐史 | 松下電送システム株式会社 (SC34専門委員会委員長) |
安達 淳 | 株式会社沖データ | |
内山 光一 | 株式会社東芝 | |
小笠原 治 | 社団法人日本印刷技術協会 | |
高沢 通 | 大日本スクリーン株式会社 | |
高橋 亨 | 株式会社日立製作所 | |
加藤 幸司 | 凸版印刷株式会社 | |
窪田 明 | 経済産業省機械情報産業局 | |
木戸 達雄 | 経済産業省産業技術環境局 | |
大久保 彰徳 | 株式会社リコー | |
宮本 義昭 | 日本ユニシス株式会社 | |
(オブザーバ) | 高橋 昌行 | 経済産業省産業技術環境局 |
(事務局) | 内藤 昌幸 | 財団法人日本規格協会 |
氏名 | 所属 | |
---|---|---|
(主査) | 小町 祐史 | 松下電送システム株式会社 (SC34専門委員会委員長) |
(幹事) | 内山 光一 | 株式会社東芝 |
(幹事) | 高橋 亨 | 株式会社日立製作所 |
安達 淳 | 株式会社沖データ | |
今郷 詔 | 株式会社リコー | |
小笠原 治 | 社団法人日本印刷技術協会 | |
奥井 康弘 | 株式会社日本ユニテック | |
内藤 求 | 株式会社シナジーインキュベート | |
内藤 広志 | 大阪工業大学 | |
海田 茂 | ネクストソリューション株式会社 | |
萩野 剛二郎 | 電気通信大学 | |
渡部 賢一 | 財団法人日本規格協会 | |
(オブザーバ) | 浅利 千鶴 | 浅利会計事務所 |
大久保 彰徳 | 株式会社リコー | |
高橋 昌行 | 経済産業省産業技術環境局 | |
(事務局) | 内藤 昌幸 | 財団法人日本規格協会 |