この規格は, 2001年12月に第1版として発行されたISO/IEC 13240:2001 [Information technology — Document description and processing languages — Interchange Standard for Multimedia Interactive Documents (ISMID)]について, 技術的内容を変更することなく日本工業規格として採用するために作成された。0.及び1.については,原国際規格の同項目を全文翻訳し, 2.以降については,それぞれ原国際規格の同項目の内容を引用するものとした。
対話型文書は,データ内容を,対話型文書の振舞いを定義する命令に結びつける。つまり, どのようにいつ内容が計算機ディスプレイに表現されるのか, 又はどのようにいつ情報が外部システムに渡されるのか, を定義する命令に結びつける。読者と文書との対話は,その提示に対して重要なものとなり得るので,固有の内容と関連する振舞い命令を符号化する標準的な方法は,その文書が転送可能になる場合に,本質的になる。この規格は, 対話型文書及びハイパ文書の振舞い様相の表現に焦点を合わせる。この規格において定義される言語は, 市販のスクリプト言語又は処理言語に依存しない対話型文書の振舞い様相を定義することによって,異種の開発システム間及び配布システム間での対話型文書の交換を容易にする。
対話型文書の文脈においては,対話型とは,利用者又は他のソースからの刺激に応答して内容を動的に描出するには, ソフトウェア応用が主体となることを意味する。応答は,しばしば,後続情報の内容及び提示を調整することになる。したがって,対話型文書を生成するためには,開発者は,静的な方法で提示されることになる文書又はハイパ文書を生成するのに用いた原理とは異なる原理を考慮しなければならない。開発者は, 文書の中に振舞いをプログラムしなければならない。振舞い構成要素をもつことが,対話型文書の開発システム及び配布システムの間の非互換性を引き起こし得る対話型文書の一面になっている。
SGML的な観点(静的なデータのソース)での"文書"と, 描出的な観点(ソースデータの特定な見方又は提示)での"文書"との違いを認識することが重要である。どんな静的なデータのソースも(つまり,SGML的な観点でのどんな文書も), 振舞いのスタイルの適用によって, 対話型文書にできることを認識することも重要である。この規格の随所で,ソースデータの提示をいう際(すなわち,動的に描出された文書をいう際)に, 対話型文書という用語を使う。
文書及びハイパ文書の構造,内容及び静的な提示を記述するためには, 既に規格が存在する。マルチメディア対話型文書のための交換規格(ISMID)は,これまでの規格にない構成要素を追加する。すなわち, 異種の対話型文書開発システム間及び対話型文書配布システム間での交換のための曖昧さのない方法で, 文書の振舞い構成要素を表現するための規定を追加する。
プログラム文脈の中で図形的利用者インタフェース(GUI)のオブジェクトを実装するためには確立した規格があるが,対話型文書の開発者がインタフェースオブジェクトをどのように利用したいかを, 装置非依存の方法で表わすことを,対話型文書の開発者に対して可能にする規格への要求がある。ISMIDは,どのようにしてインタフェースオブジェクトが, 既存の規格が扱う構造化された内容と通信するかを定義する体系を提供する。
対話型文書の中のインタフェースオブジェクトの提示は,通信されるメッセージに必要であることが多いので,ISMIDは, 開発者がインタフェースオブジェクトの提示特性を指定することを可能にする。提示特性の型は,オブジェクトの位置, フォント,色などを含むことができる。これらの特性を適用するためにISMIDを使うかどうか,又はDSSSLのようなスタイル指定言語を使うかどうかを決定することは, 対話型文書開発者に任される。
この規格で示す体系の明白な利用は,ウィンドウに基づくGUIオブジェクトに関する対話型振舞いを交換するための方法を提供することである。しかし,ISMID体系は,一般的であって,どんな固有のGUI環境にも制限されない。実際それは, GUIを定義する必要が全くない。その体系は,システムが受け取れるどんな刺激をも(GUIを通して受け取れない刺激をも含めて)規定する言語を定義する。応答は,GUIを通しての利用者への描出情報以外の動作であってもよい。CreateControl要素形式から派生したオブジェクトは,GUIの小型部品でなくてよい。それは, 外部システムと通信する手段になり得る。
備考 例えば,CreateControl要素形式から派生したオブジェクトは,気候によって変化する環境で温度を監視する"環境監視"制御であってよい。この場合,MIDによって受け取られる刺激は,温度が40度を超えたことかもしれない。この刺激に対する応答は,MIDが, 利用者に警告を提示し,機器と通信する制御によって温度が40度を超えるときには稼動してはならない機器に, "停止"命令を送るものであってよい。
マルチメディア対話型文書の交換規格又はISMIDと呼ばれるこの規格は,異種の対話型文書開発システム間及び対話型文書配布システム間でのマルチメディア対話型文書(MID)の交換を,共通交換言語を生成できる体系を提供することによって, 容易にする。ISMIDは,JIS X 4155:2000 ハイパメディア及び時間依存情報の構造化言語(HyTime)のクライアント体系とし,JIS X 4151:2001 文書記述言語SGMLに適合するSGML応用とする。
ISMIDは,JIS X 4153:1998 文書スタイル意味指定言語(DSSSL)の8.に規定するDSSSL式言語の利用をも規定する。
一般に,マルチメディア対話型文書(MID)の描出は, 次の3主要構成要素を必要とする。
さまざまな業者,標準化団体及びその他の団体は,内容構成要素の情報を表現する(テキストのためのSGML,図形のためのCGM,映像のためのMPEG,音声のためのWAVなどの)記法を定義する。ソフトウェア構成要素を実装する最も有効な方法を決定することは,ソフトウェア業者に任される。したがって,ISMID規格は,振舞い構成要素だけに言及する。
備考 この規格の対応国際規格を次に示す。
なお, 対応の程度を表す記号は, ISO/IEC Guide21に基づき, IDT(一致している), MOD(修正している), NEQ(同等ではない)とする。
ISO/IEC 13240:2001 Information technology — Document description and processing languages — Interchange Standard for Multimedia Interactive Documents (ISMID) (IDT)
ISMID規格は,文書作成者及び開発者に対して, 装置非依存な方法でMIDの振舞い構成要素を記述することを可能にする体系を定義する。この体系を,ISMID体系(9.)と呼ぶ。ISMID体系は,振舞い構成要素のための体系形式を定義する。
ISMID体系は,次のものを含む。
インタフェースオブジェクトは,ISMID体系の主要部分としてリストされるが,ISMIDは,これらのオブジェクトを直接に表現する体系形式を定義しない。代わりに,これらのオブジェクトは,そのオブジェクトの生成,修正及び破棄を記述する体系形式を用いて指定される。オブジェクトの生成,修正及び破棄のための体系形式は,応答として分類される。それは,MIDが,利用者又は他のソースからの刺激への応答だけで,オブジェクトを作成,修正又は破棄することによる。
体系における刺激及び応答の要素形式は,固有のISMID応用に関するテンプレートを与える。体系内のこれらの体系形式は,将来必要になるかもしれないどんな新しい刺激及び応答の要素をも許容するのに十分な一般性をもつ。
内容オブジェクトは利用者に伝えられる実際の情報ではないが,それはその情報を描出し操作するのに使われることに着目することは,重要である。内容オブジェクトによって参照される情報は,再使用でき,その内容オブジェクトに依存しない多様な外部記法の中に存在できる。
ISMID応用の例は,この規格(附属書B.)に含まれる。その例は,刺激及び応答に関して,体系から派生した要素の集合を定義する。その例での形式の意味は,最新の対話型文書の開発システム及び配布システムで使用されるオブジェクト,刺激及び応答を反映している。例えば,ISMID応用の例の中で定義される要素型の一つは,画像をディスプレイするためにある。画像オブジェクトは,利用者に情報内容を提示するために使用されるので,その要素は,体系の内容オブジェクト形式から派生される。
例の要素は,体系形式の属性のすべてを実装し,現在の使用にこれらのオブジェクトの提示特性があるので,それらを定義する属性を追加する。例えば,ISMID応用の例でのボタンオブジェクトは,標題,可視,可能及び前景の色のための特性を定義する属性をもつ。
多様な産業及び組織は,次のISMID応用を定義していくことが予見される。つまり, そのISMID応用では, 産業及び組織が, 業界の要求に応じるために, 応用の例で定義される固有のオブジェクト,刺激及び応答に対して削除及び/又は追加を行う。 これらの業界定義の応用は,オブジェクト,刺激及び応答の意味も定義しなければならない。適合するISMID応用は,ISMID応用定義文書(IADD)(10.)に従って定義されなければばらない。参考である附属書B.のISMID応用は,IADDの例である。
附属書B.の応用DTDの例は,現在使用している最も共通的な情報型のための記法形式を含む。これらの記法宣言は,適合するISMIDシステムがこれらの記法を支援しなければならないことを意味しない。ISMIDシステムによって支援される記法は,ISMID応用の中で指定されなければならない。例えば,国防総省は,SGMLがテキスト用に支援されなければならないことを指定してよく, 既存のソフトウェア投資をもつ商業実体は, RTFがテキスト用に支援されることを希望してよい。どの固有のオブジェクト,刺激,応答及び記法が,特定の産業又は組織のために支援されなければならないかは,IADDにおいて形式的に指定できる。
ISMIDの応用分野には,電子実行支援システム(EPSS, Electronic Performance Support Systems),時宜を得た情報への利用者アクセスを提供する計算機による対話型文書システム及び業務中訓練(OJT, on-the-job training)がある。EPSSに関する二つの通常種別に,対話型電子技術マニュアル(IETM, Interactive Electronic Technical Manual)及び対話型教材(ICW, Interactive Courseware)がある。
作業者がアクセスしなければならない情報量が増加するとともに,多くの業界でEPSSの使用が増加している。組織はこれらのシステムにおいてその投資を増やしているので,装置非依存の方法でEPSSのすべての様相を表現することによって,組織がその投資を保護する方法をもつことは重要である。
ISO/IEC 13240:2001の 2. Conformance による。
ISO/IEC 13240:2001の 3. Normative references による。
ISO/IEC 13240:2001の 4. Terms and definitions による。
ISO/IEC 13240:2001の 5. Symbols and abbreviations による。
ISO/IEC 13240:2001の 6. Notations による。
ISO/IEC 13240:2001の 7. The ISMID HyTime support declarations による。
ISO/IEC 13240:2001の 8. The ISMID expression language による。
ISO/IEC 13240:2001の 9. The ISMID architecture による。
ISO/IEC 13240:2001の 10. ISMID Application Definition Document (IADD) による。
ISO/IEC 13240:2001の Annex A (normative) ISMID Meta-DTD による。
ISO/IEC 13240:2001の Annex B (informative) Sample ISMID Application Definition Document による。