文書作製命令

文書作製命令は,SPDL文書の提示において二つの機能を実行する。 第1の機能は,文書内容表記法の適用範囲外にある文書提示のさまざまな側面を制御する ことである。 例えば,片面又は両面印刷モードの選択,媒体の指定及び選択などである。 第2の機能は,提示ごとに変化しうる文書提示のさまざまな側面を制御する。 例えば,印刷部数,及び媒体の指定,選択などである。 これら二つの機能は,排他的ではない。

概論

それぞれの文書作製命令は,1個以上の提示パラメタに影響を与える。 それぞれの提示パラメタは,無指定時値をもつ。 1個以上の文書作製命令の出現によって変更されることがある。 文書の処理に影響を与える提示パラメタの値は,無指定時値及び 補足DPI中で指定される値,並びに最上位ブロック中の 文書作製命令から導きだされる。 下位ブロックの処理に影響を与える提示パラメタの値は, もっとも近い上位ブロックに対する提示パラメタの値, 補足DPI中で指定される値,並びに最上位ブロック中の 文書作製命令から導きだされる。 to . ]]> 各ブロックの処理にで用いる提示パラメタ値の導きかたは, からで規定する。 ページ選択提示パラメタを除いて,提示パラメタの無指定時値は, 文書処理の開始時点で提示パラメタを初期化するためにだけ用いる。 反対に,ページ選択提示パラメタの無指定時値は, 各ページセットごとのページ選択提示パラメタを 初期化するために用いる。 . ]]> 入れ子状態のページセットに対するページ選択提示パラメタの処理, 及びページ選択提示パラメタと補足ページ選択提示パラメタとの相互作用は で規定する。

この規格は,各文書作製命令について次のことを規定する。

文書作製命令の供給元

内容表記法の適用範囲外にある文書提示のさまざまな側面に影響を与えるために, 文書構造内に文書作製命令を指定する方法を提供する。

提示のたびに文書を変更することなく,提示ごとに変化しうる 文書提示の側面に影響を与えるために,利用者は,特定の文書提示に対して 適用される文書作製命令を,その文書自体とともに提供できなければならない。

一つのSPDL文書の特定の提示において,これらの供給元のどちらか又は 両方が,文書作製命令の空集合を提供してもよい。

文書構造

文書構造内で指定される文書作製命令を,文書内DPIと呼ぶ。

文書内DPIは,DPI宣言構造要素によって指定する。 文書作製命令が,あるブロックのプロローグ内のDPI宣言によって指定される場合, 文書作製命令は,そのブロック内に出現するという。

補足DPI

文書の特定の提示のために,文書とともに渡される文書作製命令を, 補足DPIと呼ぶ。 補足DPIを提示プロセスで利用可能にする方法については,この規格の適用範囲外とする。 補足DPIを受けとる能力をもたないSPDL提示プロセスは,文書のすべての提示に対し 補足DPIの空集合をもつ。

追加DPI

この規格で定義する文書作製命令に加え,SPDLの構文は,文書内DPI又は補足DPIに 追加の文書作製命令を含めることを許す。 そのような文書作製命令を,追加DPIと呼ぶ。

それぞれの追加DPIは,1個の名前及び1個の値からなる。その名前は,公開オブジェクト識別子とし, その値の型は名前の値に依存する。 追加DPIの詳細な構文及び追加DPIがSPDL文書提示に及ぼす影響は, この規格の適用範囲外とするが,追加DPIの挿入は可能とする。

文書作製命令間の調停

文書作製命令は一つのSPDL文書の任意のブロックに出現しうるので,上位ブロックにある 文書作製命令が下位ブロックにある文書作製命令と矛盾することがありうる。 そのような矛盾は,すべて構造プロセサが調停する。

ある文書作製命令の有効範囲は,そのDPI宣言が出現したプロローグの もっとも近い上位ブロックとする。 文書作製命令の効果は,別の文書作製命令によって変更され,又は無効にされることがある。

ある文書作製命令が他の文書作製命令の有効範囲内に出現すると,複数の 文書作製命令の有効範囲が重複することになる。 有効範囲が重なる2個の文書作製命令を調停する方法は,関係する個々の文書作製命令 に依存し,それぞれの文書作製命令の意味の一部として規定される。

補足DPIの有効範囲は,その文書全体とする。 したがって,補足DPIの空集合が存在しない任意の提示について,補足DPIと文書内DPIとの 重複が起きる。 この場合,構造プロセサは,補足DPIと文書内DPIとを調停しなければならない。 構造プロセサが補足DPIと文書内DPIとを調停する方法は,関係する文書作製命令に依存し, それぞれの文書作製命令の意味の一部として規定される。

文書作製命令のクラス

文書作製命令は,次の5個のクラスに分類される。

  • 文書ページ像の可視化に先立つ文書作製処理に影響を与える,前処理文書作製命令。
  • 文書提示に使われる媒体を指定し,各ページ像の提示に使われる媒体の選択を指示する, 媒体文書作製命令。
  • ページ像の可視化処理,及びページ像の媒体上における配置に影響を与える, 提示文書作製命令。
  • 文書ページ像の可視化に続く文書作製処理に影響を与える,仕上げ文書作製命令。
  • 文書作製処理の管理に影響を与える,管理文書作製命令。

文書作製命令の適用には,次に示す暗黙の順序がある。

  • 前処理文書作製命令は,ページ像が提示媒体上へ可視化される前に,文書 提示の過程に影響を与える。 前処理文書作製命令を適応した結果は,一つの新しいSPDL文書とみなすことができる。 その新しい文書が,次に,もともとの提示文書作製命令,仕上げ文書作製命令及び 管理文書作製命令を用いて提示される。

    この規格で定義する前処理文書作製命令はない。

  • 媒体文書作製命令は,前処理文書作製命令の結果に対して適用される。
  • 提示文書作製命令は,前処理文書作製命令の結果, 及び媒体文書作成命令によって選択した媒体を使った結果としての文書に 適用される。
  • 仕上げ文書作製命令は,文書ページ像の媒体上への可視化処理の結果に対して適用される。 仕上げ文書作製命令の適用の順序が重要であることがある。
  • 管理文書作製命令は,文書作製処理のすべての部分に対して適用され,前処理文書作製命令, 媒体文書作製命令,提示文書作製命令及び仕上げ文書作製命令が適用される順序とは関係ない。

フォールバック

この規格で定義する文書作製命令の幾つかについては,規定された意味が常に実現できる。 そのような文書作製命令には,フォールバックの規定は必要ない。 しかし,この規格で定義する文書作製命令の幾つかは,すべての提示プロセス が提供しなくてもよい能力を要求する。 この規格では,そのような文書作製命令について,能力をもったシステムにおける処理の規定に加えて, そのような能力をもたないシステムにおけるフォールバック動作を規定する。 必要ならば,このフォールバック動作は,文書作製命令の意味の一部として規定する。

ソフトコピー装置のように,システムの一般的なクラスのうちのあるものについては, 仕上げや印刷部数のような文書作製命令は通常不適切である。 Copies -> 印刷部数 or 部数 ? ある文書作製命令が,特定のシステムによる文書提示にとって不適切である場合, その文書作製命令は,無視してよい。

有用な構造要素

次の構造要素群は,幾つかの文書作製命令で使用される。

寸法(DIMENSION)

寸法構造要素は,寸法を表す。寸法構造要素は,次に示す直接の下位要素群をもつ 複合構造要素とする。

  • 0個又は1個の許容誤差構造要素。
  • 1個の寸法値構造要素。

これらの直接の下位要素は,上記の順序で出現しなければならない。

許容誤差(TOLERANCE)

許容誤差構造要素は,基底構造要素とする。許容誤差構造要素の値の型は, 非負数型とする。

許容誤差構造要素の値は,寸法上の許容誤差を表す。

寸法値(DIMENSION VALUE)

寸法値構造要素は,次のうちのいずれかとする。

  • 名前付き寸法構造要素。
  • 数値寸法構造要素。

名前付き寸法(NAMED DIMENSION)

名前付き寸法構造要素は,基底構造要素とする。名前付き寸法構造要素の値の型は, 環境内識別子型とする。

名前付き寸法構造要素の値は,非負数型の値を識別する。 この規格で定義する名前付き寸法値のための公開オブジェクト識別子値はない。

数値寸法(NUMERIC DIMENSION)

DIMENSION VALUE -> DIMENSION ]]> 数値寸法構造要素は基底構造要素とする。数値寸法値構造要素の値の型は, 非負数型とする。

XY寸法(XYDIMENSIONS)

XY寸法構造要素は,方形シート媒体の寸法又は参照座標系における位置を表す。 XY寸法構造要素は,次に示す直接の下位要素群をもつ複合構造要素とする。

  • 0個又は1個の許容誤差構造要素。
  • 1個のXY寸法値構造要素。

これらの直接の下位要素は,上記の順序で出現しなければならない。

XY寸法値(XYDIMENSIONS VALUE)

XY寸法値構造要素は,次のうちのいずれかとする。

  • 名前付きXY寸法構造要素。
  • 数値XY寸法構造要素。

名前付きXY寸法(NAMED XYDIMENSIONS)

名前付きXY寸法構造要素は,基底構造要素とする。 名前付きXY寸法構造要素の値の型は,環境内識別子型とする。

名前付きXY寸法構造要素の値は,1個の非負数型の値の順序対を 識別する。 その値は,もっとも一般的な場合,媒体の寸法を表す。 名前付きXY寸法の公開オブジェクト識別子値は,媒体寸法属性の標準値として ISO/IEC 10175で定義される。 (informative). ]]> ISO/IEC 10175で定義される公開オブジェクト識別子値,及びそれらの値の意味は, に記述する。

数値XY寸法(NUMERIC XYDIMENSIONS)

数値XY寸法構造要素は,次に示す直接の下位要素群をもつ複合構造要素とする。

  • 1個のX寸法構造要素。
  • 1個のY寸法構造要素。

これらの直接の下位要素は,上記の順序で出現しなければならない。

X寸法(X-DIMENSION)

X寸法構造要素は,基底構造要素とする。X寸法構造要素の値の型は, 非負数型とする。

Y寸法(Y-DIMENSION)

Y寸法構造要素は,基底構造要素とする。Y寸法構造要素の値の型は, 非負数型とする。

ヘッド位置並び(HEAD LOCATIONS)

ヘッド位置並び構造要素は,仕上げ処理のためのヘッド位置の並びを表す。 ヘッド位置並び構造要素は,次に示す直接の下位要素群をもつ複合構造要素とする。

  • 0個又は1個の許容誤差構造要素。
  • 1個のヘッド位置並び値構造要素

これらの直接の下位要素は,上記の順序で出現しなければならない。

ヘッド位置並び値(HEAD LOCATIONS VALUE)

ヘッド位置並び値構造要素は,次のうちのいずれかとする。

  • 名前付きヘッド位置並び構造要素。
  • 数値ヘッド位置並び構造要素。

名前付きヘッド位置並び(NAMED HEAD LOCATIONS)

名前付きヘッド位置並び構造要素は,基底構造要素とする。 名前付きヘッド位置並び構造要素の値の型は,環境内識別子型とする。

名前付きヘッド位置並び構造要素の値は,非負数型の値の並び x, . . , xを識別する。ここで,1 ≤ i ≤ n-1であるiについて, x とする。 この規格で定義する名前付きヘッド位置並び値の公開オブジェクト識別子値はない。

数値ヘッド位置並び(NUMERIC HEAD LOCATIONS)

数値ヘッド位置並び構造要素は,次に示す直接の下位要素群をもつ複合構造要素とする。

  • 1個以上のヘッド位置構造要素。

直接の下位にあるヘッド位置構造要素群の値は,値の並び x, . . , x からなる。 ここで,1 ≤ i ≤ n-1であるiについて,xであるとする。

ヘッド位置(HEAD LOCATION)

ヘッド位置構造要素は,基底構造要素とする。ヘッド位置構造要素の値の型は, 非負数型とする。

辺(EDGE)

辺構造要素は,媒体又は組み立てられた文書の特定の辺を識別する。 辺構造要素は,基底構造要素とする。辺構造要素の値の型は,列挙型とする。 . ]]> この型の値と識別される辺をに示す。 bottom-edge 参照座標系のx軸に一致する辺。 right-edge 参照座標系のy軸に平行な辺で,y軸に一致する辺の反対側の辺。 top-edge 参照座標系のx軸に平行な辺で,x軸に一致する辺の反対側の辺。 left-edge 参照座標系のy軸に一致する辺。

DPI宣言(DPI DECLARATION)

DPI宣言構造要素は0個以上の文書作製命令の集合とする。 DPI宣言の構文は,この規格で定義する文書作製命令だけではなく, 追加DPIをもサポートする。

DPI宣言構造要素は次に示す直接の下位要素群をもつ複合構造要素とする。

  • 0個又は1個の媒体DPI構造要素
  • 0個又は1個の媒体選択DPI構造要素
  • 0個又は1個の現媒体DPI構造要素
  • 0個又は1個の印刷部数DPI構造要素
  • 0個又は1個のページ選択DPI構造要素
  • 0個又は1個の補足ページ選択DPI構造要素
  • 0個又は1個の印刷面DPI構造要素
  • 0個又は1個のPLEX DPI構造要素
  • 0個又は1個のX画像移動DPI構造要素
  • 0個又は1個のY画像移動DPI構造要素
  • 0個又は1個の現印刷面指定DPI構造要素
  • 0個又は1個の仕上げDPI構造要素
  • 0個又は1個の色材集合DPI構造要素
  • 0個又は1個の文書開始メッセージDPI構造要素
  • 0個又は1個の補助ページタイプDPI構造要素
  • 0個又は1個の文書注釈DPI構造要素
  • 0個又は1個のタイムアウトDPI構造要素
  • 0個又は1個の中断方針DPI構造要素
  • 0個又は1個の出力ビンDPI構造要素
  • 0個又は1個の出力仕様DPI構造要素
  • 0個又は1個の文書終了メッセージDPI構造要素
  • 0個又は1個の追加DPI構造要素

これらの直接の下位要素は,任意の順序で出現してよい。

追加文書作製命令

各追加DPIは,1個の名前及び1個の値からなる。 追加DPIの概括的な構文は,11.で規定する。追加DPIの明細な構文及び意味は, その名前の所有者が規定する。 追加DPIの明細な構文及び追加DPIがSPDL文書の提示に及ぼす効果は, この規格の適用範囲外とするが,追加DPIの挿入は可能とする。

追加文書作製命令は,次に示すいずれでもよい。

  • 前処理文書作製命令
  • 提示文書作製命令
  • 仕上げ文書作製命令
  • 管理文書作製命令

追加DPI (ADDITIONAL DPI)

追加DPI構造要素は,次に示す直接の下位要素群をもつ複合構造要素とする。

  • 1個のDPI名構造要素
  • 0個又は1個のDPI値構造要素

これらの直接の下位要素は,上記の順序で出現しなければならない。 specified -> above 上記の に統一。

DPI名(DPI NAME)

DPI名構造要素は基底構造要素とする。 DPI名構造要素の値の型は,公開オブジェクト識別子型とする。

DPI値(DPI VALUE)

DPI値構造要素は,基底構造要素,複合構造要素のどちらでもよい。 DPI値構造要素は,同位のDPI名構造要素の値に依存する。

追加DPIの意味

追加DPIの意味を規定するのは,そのDPI名の値である 公開オブジェクト識別子の所有者の担当とする。 追加DPIがSPDL文書提示に及ぼす効果は,次のいずれかとする。

  • 追加DPIの意味によって定義された効果として得られる。
  • 追加DPIは無視される。

特定のDPI名値に対応するDPI値の構文の定義,及び 追加DPIがSPDL文書提示に与える効果は,この規格の適用範囲外とする。