JIS X 4161:2002
(ISO/IEC 9541-1:1991/Amd.1:2001, Amd.2:1998, Amd.3:2000)

フォント情報交換 第1部 体系 追補1 解説



この解説は,本体及び附属書に規定した事柄,並びにこれらに関連した事柄を説明するものであって,規格の一部ではない。


1. 制定の趣旨

ISO/IEC 9541-1:1991は, ISO/IEC JTC1/SC18/WG8(後のJTC1/SC34)によって開発され, 1991年9月に制定・発行されたが, その制定を急ぐため, 欧米のフォント属性を中心として, それに日本からの要求の一部を取り入れた内容にとどまっていた。その制定段階から, ISO/IEC 9541-1:1991に含まれていない多くのフォント属性については, Amendment(Amd.)として段階的に検討し, 発行することが予定されていた。

国内においては, 国際規格に対して内容的な一致を図り, 発行時期をなるべく国際規格に近付けるために, Amd.の発行を待たずに, ISO/IEC 9541-1:1991に一致するJIS X 4161:1993が制定され, 発行された。

Amd.2及びAmd.3は, 主として日本の利用者要求に基づくISO/IEC 9541-1の拡張であり, 日本語文書の表示に必要なフォント属性を規定している。これらを含む3件のAmd.が用意された段階で, (財)日本規格協会の情報技術標準化研究センター(INSTAC)に設けられた"文書処理及びフォントの標準化調査研究委員会"(DDFD)は, 経済産業省からの要求に応じて, JIS化への検討を開始した。Amd.1, Amd.2及びAmd.3をまとめて, JIS X 4161:1993に対する一つの追補として原案が作成され, 2002年5月にJIS X 4161追補1原案が経済産業省に提出された。


2. 制定の経緯

2.1 Amd.1

ISO/IEC 9451-1:1991/Amd.1:2001は, ISO/IEC 9451-1:1991のAnnex Aの拡張であり, 主にアラビア及び日本の書体デザインに関するフォント属性値を追加している。このPDAM投票は, 1995年6月を期限として行われた。PDAM投票に際して日本, UK及びUSから提出されたコメントを含めて, JTC1/SC18/WG8によってDAMテキストが作成された。DAM投票は, 1996年10年を期限として行われ, 承認された。

DAMテキストに対して日本及び中国からコメントが提出され, 対処方針[1]が明らかにされた。その後, JTC1の組織変更, エディタの変更等によって作業の遅れが生じ, 対処方針の修正案[2]がJTC1/SC34によって承認された。この対処方針に従った最終テキスト[3]は, 2000年6月に提出されている。

2.2 Amd.2

ISO/IEC 9451-1:1991/Amd.2:1998は, ISO/IEC 9541-1:1991に含まれなかった, 書体デザイン以外のフォント属性を規定する。そのほとんどは, 日本のフォント業界の要求に基づく。

この作業は, Amd.1とほぼ同期して開始され, PDAMテキストは1995年10月に作成され, その投票結果を反映してDAMテキストが1997年5月に作成された。DAM投票結果に対する対処方針[4]は, 1998年5月にJTC1/WG4(SC18/WG8からSC34に移行する際の暫定組織)において承認され, この対処方針に従った最終テキストが, 1998年8月にJTC1に提出された。

2.3 Amd.3

ISO/IEC 9451-1:1991/Amd.3:2000は, 主としてアジア諸国のフォントを考慮したフォント属性の拡張である。

PDAMテキストは1999年4月に作成され, その投票結果を反映してFDAMテキストが2000年6月に作成された。FPDAM投票結果[5]は反対もコメントもなく, そのまま承認されて, 直ちにISO/IEC ITTF(Information Technology Task Force)による出版手続きに移された。


3. Amd.の内容に関する国内での検討

原規格の各Amd.に関する国内での審議は, JTC1/SC18/WG8及びJTC1/SC34の国内対応組織として構成された, 日本事務機械工業会 WG8国内委員会及び情報規格調査会 SC34専門委員会で行われたが, 解説表1に示すフォント関係の専門家のグループにおいても詳細にわたる議論をいただき, その検討結果は, WG8国内委員会及びSC34専門委員会を通してSC18/WG8及びSC34に提出された。

解説表1 検討に参加した国内フォント専門グループ
Amendmentフォント専門グループ
Amd.1(社)日本事務機械工業会(JBMA) 標準化委員会 実装規約小委員会
Amd.2(社)日本事務機械工業会(JBMA) 標準化委員会 実装規約小委員会
Amd.3(財)国際情報化強力センター(CICC) 多言語情報処理環境技術委員会


4. 用語

用語に関しては, この追補が要約規格であることから, 追補本体においては, 翻訳の対象から省略されている。原規格における用語と対応する訳語を解説表2に示す。

解説表2 用語
原規格及びその箇条番号原規格における用語対応する訳語備考
ISO/IEC 9541-1/Amd.2, 3.27body sizeボディサイズJIS X 4161で"ボディサイズ"を採用。
ISO/IEC 9541-1/Amd.2, 3.28extended body size拡張ボディサイズ
ISO/IEC 9541-1/Amd.2, 3.29design frameデザイン枠
ISO/IEC 9541-1/Amd.2, 3.30bounding box境界ボックス
ISO/IEC 9541-1/Amd.2, 3.31blackness黒さ率
ISO/IEC 9541-1/Amd.3, 3.32interlinear object行間オブジェクト
ISO/IEC 9541-1/Amd.3, 3.33intercharacter object文字間オブジェクト
ISO/IEC 9541-1/Amd.3, 3.34parent object親オブジェクト
ISO/IEC 9541-1/Amd.3, 3.35child object子オブジェクト


5. 審議中の主要検討課題

ISO/IEC 9541-1:1991/Amd.2:1998は, エディタによる校正がISO/IEC ITTF(Information Technology Task Force)による出版に適切に反映されなかったため, そのClause 3の項番号の記述において, 解説表3に示す誤りがある。

解説表3 ISO/IEC 9541-1/Amd.2に関する正誤票
3.283.27 3.313.30
3.293.28 3.323.31
3.303.29

解説表2における項番号は, この訂正後の番号による。


6. 参考文献

[1] ISO/IEC JTC1/SC18/WG8 N1886, Disposition of comments on DAM1/9541-1: Typeface design grouping, 1996-11

[2] ISO/IEC JTC1/SC34 N0120, Revised disposition of comments on ISO/IEC 9541-1/DAM1 and Editing Instruction for ISO/IEC 9541-1/AM1, 1999-12

[3] ISO/IEC JTC1/SC34 N0163, Amendment 1 to ISO/IEC 9541-1: Typeface design grouping, 2000-06

[4] ISO/IEC JTC1/WG4 N1975, Disposition of comments on DAM1/9541-1: Minor Enhancements to the Architecture to Address Font Technology Advances, 1998-05

[5] ISO/IEC JTC1/SC34 N0177, Summary of Voting, ISO/IEC 9541-1:1991/FDAmd3 - Multilingual extensions to font resource architecture, 2000-11


7. 原案作成委員会

原案作成委員会である(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の"文書処理及びフォントの標準化調査研究委員会"(DDFD)は, 学識経験者, メーカ及び利用者で構成され, その委員会の中に実際の翻訳作業を行う作業グループ1(DDFD-WG1)が設置されている。それらの構成員を解説表4及び解説表5に示す。

解説表4 文書処理及びフォントの標準化調査研究委員会 構成表
氏名 所属
(委員長) 池田 克夫 大阪工業大学
(幹事) 鯵坂 恒夫 和歌山大学
(幹事) 小町 祐史 松下電送システム株式会社 (SC34専門委員会委員長)
安達 淳 株式会社沖データ
内山 光一 株式会社東芝
小笠原 治 社団法人日本印刷技術協会
高沢 通 大日本スクリーン株式会社
高橋 亨 株式会社日立製作所
岩田 悟志 経済産業省商務情報政策局
木戸 達雄 経済産業省産業技術環境局
大久保 彰徳 株式会社リコー
宮本 義昭 日本ユニシス株式会社
(オブザーバ) 高橋 昌行 経済産業省産業技術環境局
(事務局) 内藤 昌幸 財団法人日本規格協会

解説表5 作業グループ1(DDFD-WG1) 構成表
氏名 所属
(主査) 小町 祐史 松下電送システム株式会社 (SC34専門委員会委員長)
(幹事) 内山 光一 株式会社東芝
(幹事) 高橋 亨 株式会社日立製作所
安達 淳 株式会社沖データ
今郷 詔 株式会社リコー
小笠原 治 社団法人日本印刷技術協会
奥井 康弘 株式会社日本ユニテック
内藤 求 株式会社シナジーインキュベート
内藤 広志 大阪工業大学
海田 茂 ネクストソリューション株式会社
渡部 賢一 財団法人日本規格協会
(オブザーバ) 浅利 千鶴 浅利会計事務所
大久保 彰徳 株式会社リコー
高橋 昌行 経済産業省産業技術環境局
(事務局) 内藤 昌幸 財団法人日本規格協会