この解説は,本体及び附属書に規定した事柄,並びにこれらに関連した事柄を説明するものであって,規格の一部ではない。
XML(Extensible Markup Language)[1]は既に多くの業界で利用が開始され, それに基づくXML文書は, Web環境に蓄積されている。このXMLを国際規格に完全適合するものとすることによって, XMLの国内規格化, 公的機関の調達仕様化等が推進され, XML製品市場の拡大及び関連業界の活性化が期待される。
そこで, Technical Corrigendum 2 to Standard Generalized Markup Language (SGML)を翻訳してJIS X 4151の追補2として制定する。
XMLは, World Wide Web Consortium(W3C)によって1996年11月に最初の規定案が発表され, 1998年2月にW3Cの勧告[1]として発行された。これは, 構文的にはSGMLのサブセットに位置付けられているが, 一部に従来のSGML(ISO 8879:1986)の規定内容からはみだす(完全なサブセットにならない)部分が含まれていた。このあいまいな状態は, 大量のXML文書がWeb上を流通する段階で, 処理系製品間の互換性が完全には保てなくなる可能性を引き起こし, その結果, 各ベンダがXMLに対して独自の規定内容の拡張を行って利用者の囲い込みを始めるなどの混乱を起こすことが予想された。
そこでこの可能性をなくすために, XMLをSGMLの完全なサブセットに位置付ける, SGMLに対する修正案が, ISO/IEC JTC1/SC18/WG8からSGML TC(Technical Corrigendum)として提案された。そのTCは, SGMLに含めるべき項目として既に広く合意され, できるだけ早く国際的な承認が望まれていた修正内容をも含んでいた。
このTCの最初の案[2]は, 1997年3月に各National Bodyに配布された。日本は, SC18/WG8国内委員会でこの文書をレビューし, 次のようなコメントをまとめて[3], 1997年5月にBarcelonaで開催されたJTC1/SC18/WG8会議に提出した。
他の国からも同様のコメントが提出され, Barcelona会議の出力文書として, 利用者要求[4]及び投票対象としてのTC2案[5]がまとめられた。
それはその後, ISO/IEC JTC1/SC18 N5673[6]として配布され, 1997-09-22期限の投票が行われた。日本は, 5月のBarcelona8会議で主張された日本の基本的要求が既にこのTC2案に反映されているので, コメント付き賛成を投じている。
この投票結果に対する対処は, 1997年12月に米国のAlexandriaで開催されたJTC1/WG4会議で審議された。日本コメントはambiguous content model以外すべて受理され, ISO 8879に対するTC2の最終文書としてJTC1/WG4 N1955[7]をまとめて, それを出版のためにJTC1セクレタリアートに送付することが決まった。
しかし1998年になってさらに追加の修正項目に関するTC3の審議が行われた。1998年5月にParisで開催されたJTC1/WG4会議で, JTC1/WG4 N1981[8]をTC3テキストとしてまとめ, それをさらにWG4電子会議で審議することになった。1998年11月にChicagoで開催されたJTC1/SC34会議では, SC34 N0024[9]をTC3の最終テキストとして承認し, TC3による変更を含むTC2の改訂テキスト[10]を用意して, 分離したTCの代わりにそれを出版することを決めた。
これらの経緯を経て, TC2は1999年11月に発行された。国内では, 工業技術院の委託を受けた原案作成委員会[標準記述言語分野の国際整合化調査研究委員会(DDFD)]が, TC2の原案段階から翻訳を開始した[11],[12]。原案作成委員会は, ISO/IECでの発行を確認した後, 翻訳の最終レビューを行って, 2000年8月にJIS X 4151の追補2原案として工業技術院に提出した。そのときの原案作成委員会は, 財団法人日本規格協会情報技術標準化研究センター(INSTAC)の"文書処理及びフォントの標準化調査研究委員会"(DDFD)であった。
JIS X 4151の章立て及び段落の構成は, その原規格であるISO 8879:1986におけるそれらと一致していない。そこで, この追補における訂正箇所の指定には, 次の指定方法を採用している。
a) | 節番号による指定においては, JIS X 4151での節番号とISO 8879:1986での節番号とを併記する。 |
b) | 段落指定においては, JIS X 4151の段落がISO 8879:1986の段落に厳密には一致していないため, 原文の忠実な翻訳(ISO 8879:1986における段落指定)を与えることによって, 混乱を避ける。 |
この追補においては, 原則としてJIS X 4151において採用している訳語との整合性を配慮して, 訳語選定を行った。しかし, JIS X 4151が出版された後, JISとして出版されたSGML関連規格において適切な理由によってJIS X 4151の訳語を変更している用語については, なるべく新しいSGML関連JISの訳語を採用している。関連業界で定着しつつある訳語についても, それを採用している。
それらの例を解説表1に示す。
原語 | 訳語 |
---|---|
amply-tagged document instance | 充足タグ付き文書インスタンス |
assertion | 表明 |
core subset | 中核サブセット |
enabling architecture | 機能付与体系 |
entity constraint | 実体制約 |
entity manager | 実体管理系 |
fully-declared document instance | 完全宣言済み文書インスタンス |
fully-tagged document instance | 完全タグ付き文書インスタンス |
grove plan | グローブ設計 |
immediately recursive element | 直接再帰要素 |
integrally-stored document instance | 完結記憶文書インスタンス |
Internet domain | インタネットドメイン |
invocation | 起動 |
language restriction | 言語制限 |
lazy | 遅延 |
mandatorily empty element | 強制空要素 |
marked section | マーク付き区間 |
name token group | 名前トークングループ |
NET-enabling start-tag | NET可能開始タグ |
null end-tag | null終了タグ |
omitted prolog | 省略前付け |
property set | 特性集合 |
reference-free document | 参照なし文書 |
restriction | 制限 |
self-identifying | 自己識別的 |
type-valid document instance | 型妥当文書インスタンス |
Universal Resource Name | 普遍資源名 |
valid | 妥当な |
validate | 妥当性を検証する |
well-formed | 整形式 |
この規格は, 原則として, 原規格原案(SC34 N0029)[10]のHTMLタグを保存することにしたが, 次の点に留意しタグの修正等を行った。
a) | 箇条内容は, a), b), ...を前置した順序付きリストとし, TableタグによってJISの様式に合わせる。 |
b) | 備考は, TableタグによってJISの様式に合わせる。 |
c) | word間スペースは, 翻訳においては除去する。 |
d) | 日本語表現上意味のない括弧は, 翻訳に際して削除する。 |
原規定ISO 8879:1986/Cor.2:1999の幾つかの節見出しには, 参照先のISO 8879:1986の節番号を括弧で括って付記している。この規格では, それらの節番号の付記を, 節見出しからその見出しが示す本文中に移すと共に解説3.1 a)の併記を行い, 見出しが長くなり過ぎることを避けている。
原規定ISO 8879:1986/Cor.2:1999の節見出し(K.2.1.x, K.2.2.x, K.2.3.x, K.2.4.x, K.2.5.x, xは整数)の末尾には, コロンが付されているが, この規格ではコロンは削除し, 英語表記を括弧で括って付記した。
[1] Extensible Markup Language (XML) 1.0, W3C Recommendation, 1998-02-10
備考 | TR X 0008:1999 拡張可能なマーク付け言語(XML) 1.0 がこの規定に一致している。 |
[2] C. Goldfarb, Urgent TC for the Web, 1997-03-15
[3] ISO/IEC JTC1/SC18/WG8 N1910, Japanese contribution on the Urgent TC for the Web, 1997-05
[4] ISO/IEC JTC1/SC18/WG8 N1928, User requirements for SGML TC2, 1997-05
[5] ISO/IEC JTC1/SC18/WG8 N1929, SGML TC2, 1997-05
[6] ISO/IEC JTC1/SC18 N5673, Proposed TC2 for WebSGML adaptations for SGML, 1997-06-09
[7] ISO/IEC JTC1/WG4 N1955, Final Text of SGML TC, 1997-12
[8] ISO/IEC JTC1/WG4 N1981, Revised proposal for SGML TC3, 1998-05
[9] ISO/IEC JTC1/SC34 N0024, SGML TC3 Final Text, 1998-11
[10] ISO/IEC JTC1/SC34 N0029, Final Text of ISO 8879:1986/TC 2, Information Processing - Text and office systems - Standard Generalized Markup Language (SGML) - Technical Corrigendum 2, 1998-12
[11] 1997年度 標準記述言語分野の国際整合化調査研究委員会(DDFD)報告書, INSTAC, 1998-03
[12] 1998年度 標準記述言語分野の国際整合化調査研究委員会(DDFD)報告書, INSTAC, 1999-03
原案作成委員会である財団法人日本規格協会情報技術標準化研究センター(INSTAC)の"文書処理及びフォントの標準化調査研究委員会"(DDFD)は, 学識経験者, メーカ及び利用者で構成され, その委員会の中に実際の翻訳作業を行う作業グループ(DDFD-WG)が設置されている。それらの構成員を次に示す。
氏名 | 所属 | |
---|---|---|
(委員長) | 池田 克夫 | 京都大学 |
(幹事) | 小町 祐史 | 松下電送システム株式会社 (SC34専門委員会委員長) |
安達 淳 | 株式会社沖データ | |
内山 光一 | 株式会社東芝 | |
小笠原 治 | 社団法人日本印刷技術協会 | |
高沢 通 | 大日本スクリーン株式会社 | |
高橋 亨 | 株式会社日立製作所 | |
窪田 明 | 通商産業省機械情報産業局 | |
八田 勲 | 通商産業省工業技術院標準部 | |
大久保 彰徳 | 株式会社リコー | |
宮本 義昭 | 日本ユニシス株式会社 | |
(工技院) | 永井 裕司 | 通商産業省工業技術院標準部 |
(事務局) | 内藤 昌幸 | 財団法人日本規格協会 |
氏名 | 所属 | |
---|---|---|
(主査) | 小町 祐史 | 松下電送システム株式会社 (SC34専門委員会委員長) |
(幹事) | 内山 光一 | 株式会社東芝 |
(幹事) | 高橋 亨 | 株式会社日立製作所 |
安達 淳 | 株式会社沖データ | |
今郷 詔 | 株式会社リコー | |
小笠原 治 | 社団法人日本印刷技術協会 | |
奥井 康弘 | 株式会社日本ユニテック | |
海田 茂 | ネクストソリューション株式会社 | |
内藤 広志 | 大阪工業大学 | |
(オブザーバ) | 浅利 千鶴 | 浅利会計事務所 |
(工技院) | 永井 裕司 | 通商産業省工業技術院標準部 |
(事務局) | 内藤 昌幸 | 財団法人日本規格協会 |