標準情報 TR X 0025:2000

追記形コンパクトディスク(CD-R)システム 解説



1. 公表の趣旨及び経緯

1.1 公表の趣旨

CD-Rの著しい価格低下によって, 既にCD-Rは情報当たりの単価が紙よりも小さいメディアとして多用されている。しかしこれまで, そのフォーマットについては誰もが参照できる文書としては公開されてなく, 単にCDのシステムで読むことができるフォーマットとして理解されるに止まっていた。

そのため, フォーマットの内容がわからないという利用者の不満に加えて, 次の問題が頻繁に指摘されるようになっていた。

この問題に対処して利用者要求に応えるため, 通産省工業技術院は, 財団法人光産業技術振興協会の光ディスク標準化委員会に対してCD-Rの標準情報(TR)原案作成を委託した。光ディスク標準化委員会は, この作業をフォーマット分科会に割り当て, CD-Rに関する標準情報(TR)の公表のための原案作成を行った。

1.2 公表の経緯

光ディスク標準化委員会のフォーマット分科会は, CD-Rのフォーマットを規定するOrange Book: Recordable Compact Disc System, Part 2 CD-WO version 2.0を翻訳し, それをTRの様式に編集する作業を, 1998年度から開始した。主要部分の作業は1998年度内に完了し, 1999年度には, Orange Bookの発行元であるPhilips Consumer Electronics B.V.に対して, 標準情報(TR)の出版許可の折衝を行った。

日本フィリップス株式会社を経由してPhilips Consumer Electronics B.V.から出版許可をいただいた後, ソニー株式会社の知的財産部門から, 規定内容の一部について標準情報(TR)の記述を削除して原規定の参照を求める修正, 及びまえがきへの追加記述が提案された。日本フィリップス株式会社の専門家には, TR原案の詳細レビューを賜わり, 技術的及び編集上のコメントが提案された。

これらの提案を反映したTR原案は, 1999年11月に完成し, 光ディスク標準化委員会から工業技術院に提出された。

2. 審議中の主要検討課題及び懸案事項

2.1 訳語

原案作成における翻訳作業において, 訳語及び用語の短縮形の選定に関して次の確認を行った。

2.1.1 媒体種別

(1) これまでのJISにおける訳語

これまでのボリューム構造及びファイル構造を規定する翻訳JIS(JIS X 0607:1996など)においては, 媒体種別を表す附表 2.1の訳語を使用している。

附表 2.1 JISにおける媒体種別を示す訳語
原語訳語
read-only再生専用形
write-once追記形
rewritable書換形

(2) Orange Bookにおける用語使用

Orange Bookの各巻(Part)における媒体種別を示す用語は, 附表 2.2のとおりに表記されている。

附表 2.2 Orange Bookにおける媒体種別を示す用語
共通表題Part規定対象の媒体種別
recordable compact disc system1CD-MO
2CD-WO(write-once)又はCD-R(recordable)
3CD-RW(rewritable)

Orange Book全巻の共通表題としてのrecordableは, recordable及びrewritableの総称であるので“記録可能形”と訳すのが適切であろう。しかしPart 2の規定内容におけるrecordableは, write-onceと同じ意味であるので, その訳語には“追記形”を用いるのが適切である。

2.1.2 媒体種別の短縮形

媒体種別を示す用語の短縮形として, Part 2(Version 2.0)のほとんどの箇所では CD-WO (write-once)を使っている。ただし, Part 2のB.12では, CD-Rを使っている。

それに対して, 市場のほとんどの製品においては, 媒体種別の短縮形としてCD-Rが使われている(UDFでも, CD-Rを使用。)。そこでこの標準情報(TR)では, この短縮形をCD-Rに統一使用することとした。(その後発行されたOrange Book Part 2 version 3.1では, CD-Rに統一された。)

なおJIS X 0608:1997では, CD-WOが使われているので, 今後の改正の機会にCD-Rに修正することが望まれる。

2.1.3 その他の訳語

原案作成委員会では, 関連するJIS又は標準情報(TR)との整合を考慮して, 訳語を選定した。この標準情報(TR)で採用した主な訳語を附表 2.3に示し, 今後の関連規定の作成等に際しての参考とする。

附表 2.3 訳語一覧
原語 訳語(TRでの表記) 備考
action 動作  
application 応用  
CD-WO CD-R CD-Rに統一。
central spot 中心点  
checked at zero zeroで検査する  
circular 円偏光  
clocking クロッキング  
content 内容  
current  
data organization データ構造  
deviation 偏差  
double pass ダブルパス  
empty 空の  
end 終了  
finalization 終了化  
finalize 終了化した  
generation copy 生成コピー  
incremantal インクリメンタル  
inverted 反転している  
item 項目  
jitter ジッタ 他のJISに合わせた。
kind 種別  
last 最終  
linking リンク付け  
main channel 主チャネル  
mastered スタンプ記録  
multi session 複セション  
outermost 最外周の  
overwrite 重ね書き CD-RWでは, direct overwriteを"直接オーバライト"とする。
partially recorded 部分記録  
play back 再生する システムレベルの動作
polarization 偏光  
pregroove 案内溝  
program area プログラム領域 JIS S 8605では, プログラム記録領域としている。このTRでは, program memory area(プログラムメモリ領域)と紛らわしいので, プログラム領域とした。
radial ラジアル 又は 半径方向  
read 読み取る 物理レベルの動作
reading 読取り  
record 記録する  
recording mode 記録モード  
right after 直後  
second 単位の場合は, sとする。
sequence  
silence 無音  
single session 単セション  
single speed 標準速  
spot  
start 開始  
stopping 停止  
store 記録する  
subcode channel サブコードチャネル  
substrate transmission 基板透過率  
table of content 目次情報  
time code 時間コード  
time interval analysis 時間間隔分析  
unity ユニティ  
user 利用者  
violation 逸脱  
wavefront 波面  
wobble 蛇行  
write 書き込む  
write strategy 書込み方式  

2.2 構成

2.2.1 章・節構成

Orange Bookの規定は, 必ずしもJIS又は標準情報(TR)の様式には整合していないため, 整合化の対応が必要である。しかしTRの読者が原規定を参照する際の便を考慮すると, 章・節構成はなるべく原規定のそれを保存することが望まれる。そこで, 原規定における記述内容のない章はそのままの残すと共に, 次に示すだけの修正(章・節番号の変更なし)を施して, この標準情報(TR)を構成した。

2.2.2 その他の翻訳表記上の規則

原規定は, ハードコピーで提供されている。この標準情報(TR)は, 翻訳作業に伴って電子化テキストにHTMLタグを付けて, 将来のウェブ配布に備えている。タグ付けは, 原規定の文書スタイルから読み取れる構造をできるだけ保存するものとし, 次の配慮を施した。

2.3 新版への対応

この標準情報は, Orange Book, Part 2の2.0版を翻訳した規定内容を示す。この翻訳作業中にOrange Book, Part 2は3.1版まで改訂された。その改訂に伴う主な変更箇所を, 附表 2.4に示し, 新版への対応とする。

附表 2.4 Orange Bookの改訂に伴う主な変更箇所
2.0版のページ 2.0版の記述 対応する3.1版のページ 対応する3.1版の記述 備考
全体 CD-WO

CD Write Once

全体 CD-R

CD Recordable

Orange Book part IIの名称変更:
CD Write Onceがより一般的な名称であるCD Recordableに変更された
1 1x及び2xの記録速度 I-1 1x, 2x及び4xの記録速度 システム拡張
1 引用規定 I-2 引用規定の拡張 編集上の変更
1 --- I-2 備考を追加 システム設計者への注意
2 定義 I-3/5 ディスクレイアウトを拡張及び修正 編集上の変更
  --- I-3 民生用CDレコーダの記述追加 定義の追加
  --- I-4 業務用CDレコーダの記述追加 定義の追加
3 ランダムEFM:
サブコードのバイトは, 固定値に設定されなければならない。...,
I-5 ランダムEFM:
サブコードのバイトは, サブコードフレーム中で固定値に設定されなければならない。
記述の明確化
3 書込み方式 I-5 書込み方式 修正
4 ディスクレイアウト I-6/7 ディスクレイアウトの拡張及び修正 編集上の変更
  --- I-8 記録方式の追加 編集上の変更
  --- I-8 SAO: セション全体が一度に記録される 編集上の変更
  --- I-8 TAO: トラック全体が一度に記録される 編集上の変更
9 再生専用ピックアップ(1)で測定されるHF変調 II-1 再生専用ピックアップ(2)で測定されるHF変調 規定の変更
9 (1) "記録済みディスク"(β, ジッタ及び偏差を除く)に示す特性の測定のための再生専用光ピックアップ

(2) TIA(ジッタ及び偏差)及びβの測定のための再生専用光ピックアップ

II-1 (1) "記録済みディスク"(ジッタ及び偏差を除く)に示す特性の測定のための再生専用光ピックアップ.

(2) β, ジッタ及び偏差の測定のための再生専用光ピックアップ

 
10 レコーダピックアップ及び記録方式 II-2/4 4x記録への規定の拡張 システムの拡張
         
10   II-3 for use with recorder pick-up (3b) ...[(n-1)*T] ... elengated by 0.13T .. for use with recorder pick-up (3b) ...[(n-1)*T] ... elengated by 0.13T ..
10 --- II-3 図II-1.2 図の追加
10 --- II-3 図II-1.3 図の追加
10 --- II-4 図II-1.4 図の追加
12 2.5: <0.04 N II-5 2.5.1:<2.5g.mm
2.5.2:<1b.mm
4分の1に減少 (高速記録での問題に対処)
12 9.1: 44.7 +0.3/-0.0 mm II-5 9.1: 45 +0.0/-0.3 mm 名目値を45mmとする
12 14.2: BW = 1 kHz II-5 14.2: BW = 10 kHz バージョン2.0での誤りの修正
13 18.1: II-5 18.1: 記録方式 編集上の変更
13 18.2: II-5 18.2: 記述の修正
beta=+4%
備考:
 
13 18.3: II-5 18.3: 4x記録のパワー範囲を追加 システムの拡張
13 18.4: II-5 18.4: 記述の修正
beta=+8%
備考:
 
14 --- II-7 8.5: 明確化のため追加
(Red Bookと同様)
編集上の修正
14 14.7/8 II-7 14.7: Red Bookを参照 規定の変更
14 14.9 II-7 14.8: βに代わり非対象で記録済みディスクを規定
備考:
... 再生専用ピックアップ(1)で測定
規定を修正
(非対象はRed Bookのパラメータ)
14 14.10 II-7 14.10: 備考:
... 再生専用ピックアップ(1)で測定
規定を修正
(非対象はRed Bookのパラメータ)
15 15.4 II-8 15.4.1: 下限値を上げ, 上限値の追加 規定の変更
15 --- II-8 15.4.2: 規定の追加 規定の変更
15 18 II-8 18: 再生条件を2xとする 規定の変更
17 --- III-1 III. CDレコーダへの要求事項及び推奨 新規
IV-all --- IV-all CD-RWシステム規定の記述方式に合わせて全面改定 編集上の変更
23 データ構造 V-1 セションへの引用 編集上の変更
23 オーディオとデータとのリンキング V-1 表現の修正と図V-4の追加  
24 --- V-4/5 データ用途へのRIDコード追加(オプション) システムの拡張
25 a)テスト領域
ディスクの正確な記録パワーを得るためにテストを実施できる。
V-6 a)テスト領域
ディスクの正確な記録パワーを得るためにランダムEFMデータを用いてテストを実施できる。
記述の明確化
25 --- V-6 PCAの領域のどちらも分割され, ... 記述の明確化
26 プログラムメモリ領域 V-7 規定の修正及び拡張 記述の明確化
26 予約済みトラック V-7 規定の修正及び拡張 記述の明確化
27 記録列 V-8 規定の修正及び拡張 記述の明確化
27 ADR=2 V-9 - 1枚のディスク上にあるすべてのデータセションは同一フォーマットでなければならない
- 各ディスクの識別に使用できる数字を2回記録できる
規定の変更
  --- V-10 V4.4章の追加 記述の明確化
29 目次情報 V-11 規定の修正及び拡張 記述の明確化
30 ADR=1
c) PSECは, ディスクフォーマットを規定する。
V-12 ADR=1
c) PSECは, セションフォーマットを規定する。
規定の変更
31 POINT=B0
ディスクが複セションディスクでなければ, POINT=B0は存在しない。
V-13 POINT=B0
ディスクが複セションディスクでなければ, POINT=B0は省略できる。
規定の変更
32 POINT=C0 V-14 POINT=C0
- ディスクが複セションディスクでなければ, POINT=C0は省略できる。
- 記述をより一般化した。
規定の変更
  --- V-13 POINT=C1, C2, C3を追加 システムの拡張
33 プログラム領域 V-15 規定の修正及び拡張 記述の明確化
  --- V-17 サブコードモード3を追加 システムの拡張
35 プレギャップ V-18 規定の修正及び拡張 記述の明確化
35 トラック記述子ブロック V-18 TDBが用いられなければならない場合を拡張  
37 リードアウト領域 V-20 規定の修正及び拡張 記述の明確化
41 複セション規定 XI-1 "Multisession Compact Disc
Specification"を引用規定とする
 
Fig-all --- Fig-all すべての図を修正。以降の記述以外の本質的な変更はない。  
47 図1.1 Fig-3 図I-1:
直径44.7 -> 最小直径44.7
最大直径33 -> 最小直径33
最小直径26 -> 最大直径26

追加
修正
修正
50 図4.1 IV-3 IV章に移動 編集上の変更
  --- Fig-9 図V-4を追加 記述の明確化
B-7 B3: 最適パワー制御 Att-6/8 OPCを4x記録を含むように変更 システムの拡張
B-15 測定法の推奨 Att-13 推奨を含めて拡張 記述の明確化
B-19 B9: ジッタ及び偏差 Att-17 Red Bookにジッタ及び偏差が規定されたため, 引用規定もこれを指すようになった 規定の変更
B-32 Laser opt.prod./alt/100xxxx/0 Att-24 Laser opt.prod./alt/100xxxx/x 著作権が保護されている場合, Lビットの状態は"don't care"
B-33 SCMS論理ダイヤグラム Att-25 図B12-3:
矢印にB12.5.1...を追加
出力にコピービットの記述を追加
 

3. ライセンス

CD-Rディスク及び装置の製品化のために, ライセンスの取得及び規定の詳細を入手する場合には, Philipsから個別のライセンスを得る必要がある。

ライセンスの取得に際しては, 次に示すURLのウェブにある情報を利用する。

http://www.licensing.philips.com
又は日本Philips(株) 法務・知的財産部 (Tel: 03-3740-5015)へ申し込む。

4. 原案作成委員会

この規格の原案は,財団法人光産業技術振興協会に設置された光ディスク標準化委員会のフォーマット分科会で作成され,光ディスク標準化委員会のレビューを受けた。これらの委員会の委員構成を附表 4.1及び附表 4.2に示す。

附表 4.1 光ディスク標準化委員会の構成
氏名所属
(委員長)板生 清東京大学
(副委員長)小町 祐史松下電送システム株式会社
石井 正則日本電気株式会社
土屋 洋一三洋電機株式会社
吉岡 誠富士通株式会社
増井 久之財団法人マルチメディアソフト振興協会
木目 健次朗三菱電機株式会社
入江 満三菱電機株式会社
八田 勲通商産業省工業技術院
横川 文彦パイオニア株式会社
菅谷 寿鴻株式会社東芝
入江 英之株式会社東芝
高橋 正彦株式会社日立製作所
徳丸 春樹日本放送協会
田辺 隆也日本電信電話株式会社
応和 英男ソニー株式会社
松林 宣秀オリンパス光学工業株式会社
戸島 知之NTTインテリジェントテクノロジ株式会社
三和 邦彦日本アイ・ビー・エム株式会社
村上 善照シャ−プ株式会社
山田 昇松下電器産業株式会社
金沢 安矩
橋本 進財団法人日本規格協会
(事務局)増田 岳夫光産業技術振興協会
(事務局)杉森 輝彦光産業技術振興協会
(事務局)岩本 正己光産業技術振興協会

附表 4.2 光ディスク標準化委員会 フォーマット分科会の構成
氏名所属
(統括)小町 祐史松下電送システム株式会社
石井 正則日本電気株式会社
吉岡 誠富士通株式会社
伊藤 精悟株式会社東芝
工藤 芳明大日本印刷株式会社
八谷 祥一株式会社アプリックス
後藤 芳稔松下電器産業株式会社
沢田 要川鉄情報システム株式会社
徳光 健司株式会社日立製作所
中根 和彦三菱電機株式会社
高橋 正悦株式会社リコー
八田 勲通商産業省工業技術院
(事務局)増田 岳夫光産業技術振興協会
(事務局)定兼 良太郎光産業技術振興協会

5. 附属書B


B1 動作原理

記録済み情報

情報領域の中でCD-Rディスクは, 記録層の中に螺旋形状の溝を含む。この溝は, 完璧な螺旋ではなく,モータ制御及びタイミングの情報を得るために,蛇行している。 記録層をレーザスポットで局部的に加熱することによって, 溝の中で記録を行う。レーザ出力は, 記録する情報で変調される。記録中に加熱されたディスク部分は, 記録後に反射率の減少を示し,ピットと呼ばれる。 符号化されたオーディオ情報又はデータ情報は, これらピットの長さ及びピット間の距離として記録される。これらの長さ及び距離は, 離散的な値だけをとる。

ディスクの再生中,走査光スポットが, 記録層に記録されたピットによって回折される。対物レンズに回折して戻る光パワーは,符号化されたオーディオ情報又はデータ情報に応じて変調されている。変調された光電流を高周波(HF)信号と呼ぶ。

記録済みCD-Rディスクの要件は, 従来のCDディスク(Red Book参照)の要件とほとんど同じである。したがって, 記録済みCD-Rディスクは, 従来のCDプレーヤ上で再生できる。

トラッキング情報

走査スポットのトラックずれ位置は, ディスクの半径方向に非対称な回折パターンを生じる。対物レンズの開口の二つの半分に回折されたパワーの差分が, トラック追跡のためのサーボ信号を生成する。

B2 ディスクの反射率の測定

B2については, 原規定 Recordable Compact Disc System, Part 2 CD-WO version 2.0 の対応する項目による。

B3 最適パワー制御

B3については, 原規定 Recordable Compact Disc System, Part 2 CD-WO version 2.0 の対応する項目による。

B4 環境: 動作条件及び保存条件

動作条件

この範囲内の温度及び湿度の急変は, 極めて大きなそりを引き起こす。ディスクの読取り又は書込みの前には, 数時間に及ぶ回復時間を考慮に入れなければならない。 勧告: 結露をディスク上に生じないこと。

保存条件

記録前及び記録後のディスクの保存及び輸送に関しては,典型的な条件をシミュレートするために次の環境試験を用いる。

IEC 68-2-2 Baに従う乾燥加熱試験
温度55℃
相対湿度35℃で最大50%
保存時間96時間

IEC 68-2-30 Dbに従う繰返し加湿加熱試験
温度最大40℃
温度最低25℃
繰返し回数6
相対湿度95%
周期12+12時間

これらの試験の後, 試験済みディスクの読取り又は書込みの前に, 回復時間を与える必要がある。

B5 ディスクの耐光性

CD-Rディスクの耐光性は, ISO-105-B02に適合する空冷のキセノンランプ及びテスト機器を用いて, 試験されなければならない。

試験条件

ディスク照射

要件

European Wool Reference #5(ISO-105-B02参照)に対応したキセノンランプを用いて照射の後, すべてのディスク規定(この技術情報(TR)の2.)が満されなければならない。

備考 CD-Rディスクの色の変化は, この試験とは関係がない。

B6 プッシュプル量及び正規化プッシュプル率

B6については, 原規定 Recordable Compact Disc System, Part 2 CD-WO version 2.0 の対応する項目による。

B7 溝の蛇行振幅の測定

B7については, 原規定 Recordable Compact Disc System, Part 2 CD-WO version 2.0 の対応する項目による。

B8 波長依存性

B8については, 原規定 Recordable Compact Disc System, Part 2 CD-WO version 2.0 の対応する項目による。

B9 ジッタ,偏差及び記録された時間エラー

B9については, 原規定 Recordable Compact Disc System, Part 2 CD-WO version 2.0 の対応する項目による。

B10 プレギャップの使用

5.6.5において, CD-Rシステムにおけるプレギャップの使用法が規定される。この附属書は,その節をさらに明確化する。

Yellow Bookには, さまざまなトラックの変換が記述されている。 次の変換に関して,プレギャップが指定される。

5.6.5において,これらの場合に,プレギャップがYellow Book又はGreen Bookの中の定義に従わなければならないことが規定される。さらに,プレギャップの2番目の部分が,ゼロデータだけでなく,トラック記述子ブロックも含まなければならないことが追加されている。

次のトラック変換については, プレギャップは指定されない。

5.6.5において,これらの場合に, プレギャップが150ブロック長でなければならないことが規定される。それは,トラック記述ブロックを含むブロック符号化データから成る。

表B10.1は, トラック変換の例を示す。この表の中で, サブコードQチャネルのTNO及びINDEXの内容は, (1及び2として参照される)プレギャップの1番目及び2番目の両部分に与えられ, さらに, トラックモード,トラックモードフォーム,各部分の長さ及びメインチャネルデータの内容が与えられる。

この表B10.1に対する説明を次に示す。

TDBトラック記述子ブロック
x"次"のトラックのトラック番号(実際は,プレギャップに続くデータの中で使われるトラック番号)
ブロックで表した長さ表示された長さは,プレギャップ中に存在してよいリンクブ ロック,ランインブロック及びランアウトブロックを含む(5.6.5.1の備考も参照)。
-適用しない。
フォームCD-ROM-XA規定に従ってモード2を使うとき, フォーム1又はフォーム2を使用しなければならない。CD-ROMのモード2を使うとき, フォーム1又はフォーム2は適用しない。

表B10.1については, 原規定 Recordable Compact Disc System, Part 2 CD-WO version 2.0 の対応する表による。

B11 アドレシング方式1及びアドレシング方式2の使用

アドレシング方式は,論理的ブロック番号(LBN)とブロックヘッダ中のブロックアドレスとの関係を与える。2方式がある。

方式1

     LBN = (((MIN*60)+SEC)*75+FRAMES)-150

方式2

トラック中の最初の利用者データブロックまでのLBNは, 次のとおり計算される。

     LBN = (((MIN*60)+SEC)*75+FRAMES)-150

その後に続くすべてのLBNは, そのトラック中のすべての利用者データブロックをカウントすることによって計算される。これは, ランインブロック,ランアウトブロック及びリンクブロックのすべてが除かれることを意味する。

基本的に,方式1はディスク全体に使用される。固定パケットでインクリメンタル記録されたトラックの中だけ, 方式2が使用される。 ディスク全体に対して, 各トラックの最初のブロックは, 方式1に従ってアドレスをもつ。これは, 固定パケットでインクリメンタル記録されたトラックの終端と次のトラックとの間に, 論理的セクタのアドレシングに不連続があり得ることを意味する。これを,図B11.1のアドレシング方式1及びアドレシング方式2の例に示す。

図B11.1の追加説明

トラック番号1は中断なく書かれ, 従ってアドレシング方式1が使われる。トラック2は固定パケットサイズでインクリメンタル記録されるので, 従って(最初の利用者データブロックの後の)トラックの中でアドレシング方式2が使われる。トラック2のプレギャップは別に書かれるので, このプレギャップの末尾にリンクポイントがある。利用者データをもつ最初のブロックに先行するリンクブロック及び4個のランインブロックが, プレギャップに含まれる。トラック2の最後のLBNは, (方式2に従って)9383とする。トラック3の最初のLBNは, (方式1に従って)9550とする。それで,トラック2とトラック3との間のブロック番号付けに不連続がある。

図B11.1については, 原規定 Recordable Compact Disc System, Part 2 CD-WO version 2.0 の対応する図による。

B12 連続コピー管理システム(SCMS)

B12.1 適用範囲

B12.1.1 一般

CD-Rのシステムは, 民生オーディオ用のSCMSを採用する。 SCMSの実装に必要な技術的要件,記録規則及び再生規則を, B12.3B12.5に示す。民生用のすべてのCD-R機器は,これらの要件を満たさなければならず,これらの規則に従って,適切に動作しなければならない。

B12.1.2 SCSMの実装

CD-RのシステムにおけるSCSMの実装は, 次の内容に基づく。

B12.2 引用規格

IEC 958:1989 Digital Audio Interface (IEC84/WG11/March 1990のすべての修正を含む。)

B12.3 CD-R機器の技術的要件

CD-R民生オーディオ用のすべてのCD-R機器は, 次に規定するCD-R再生規則及びCD-R記録規則に従わなければならない。デジタル入力信号に含まれる分類コード及び著作権ステータスビットは, 削除されたり修正されたりしてはならず, 連続的にモニタされ, それに従って動作しなければならない。

B12.4 CD-R再生規則

デジタル出力は, IEC 958に従わなければならない。 CD-R再生規則の概要を表B12.1に示す。

備考 代替デジタル出力は, (2連のCD-Rデッキ, CDとCD-Rとの組合わせ, 統合ステレオシステムなどの)閉じたシステムだけで使用してよい。これらのシステムのデジタル出力は, SCSMと機能的に互換性を保つために, 特に分類コード, 著作権ステータス及び世代ステータスについて等価な符号化を提供しなければならない。

B12.4.1B12.4.2(表B12.1を含む)については, 原規定 Recordable Compact Disc System, Part 2 CD-WO version 2.0 の対応する項目による。

B12.5 CD-R記録規則

記録規則の概要を, 表B12.2の“記録規則”及び図B12.1の“SCMS論理図”に示す。 B12.5.1B12.5.10は, 表B12.2及び図B12.1への追加又は明確化とする。

B12.5.1B12.5.10, 表B12.2及び図B12.1 については, 原規定 Recordable Compact Disc System, Part 2 CD-WO version 2.0 の対応する項目, 表及び図による。

B13 位相差電圧

B13については, 原規定 Recordable Compact Disc System, Part 2 CD-WO version 2.0 の対応する項目による。

B14 ランニングOPC

B14については, 原規定 Recordable Compact Disc System, Part 2 CD-WO version 2.0 の対応する項目による。