標準情報 TR X 0066:2001

書換形コンパクトディスク(CD-RW)システム 解説



1. 公表の趣旨及び経緯

1.1 公表の趣旨

CD-Rの著しい価格低下によって, 既にCD-Rは情報当たりの単価が紙よりも小さいメディアとして多用されている。しかしこれまで, そのフォーマットについては誰もが参照できる文書としては公開されてなく, 単にCDのシステムで読むことができるフォーマットとして理解されるに止まっていた。

そのため, フォーマットの内容がわからないという利用者の不満に加えて, 次の問題が頻繁に指摘されるようになっていた。

この問題に対処して利用者要求に応えるため, 通産省工業技術院は, 財団法人光産業技術振興協会の光ディスク標準化委員会に対してCD-Rの標準情報(TR)原案作成を委託した。光ディスク標準化委員会は, この作業をフォーマット分科会に割り当て, CD-Rに関する標準情報(TR)の公表のための原案作成を行った。

TR X 0025:2000[追記形コンパクトディスク(CD-R)システム]が公表されると, 特許庁などの利用者から, その物理的識別の方法(スティカなど)に関する指針と共に, CD-RWに関する標準情報(TR)の公表の要求が出された。市場にあるCD-Rの書込みシステムのほとんどは, CD-RWにも対応しており, CD-RとCD-RWとを特に区別せずに利用している利用者も少なくない。

この要求に応えるため, 光ディスク標準化委員会のフォーマット分科会は, 経済産業省及びPhilipsと連絡をとりつつ, CD-RWの標準情報(TR)の作成に着手した。

1.2 公表の経緯

光ディスク標準化委員会のフォーマット分科会は, CD-RWのフォーマットを規定するOrange Book: Recordable Compact Disc Systems, Part 3 CD-RW version 2.0に関する検討を1999年度から開始した。主要部分の翻訳及びTR様式化の作業は2000年度にほぼ完了し, Orange Bookの発行元であるPhilips Electronics N.V.に対して, 標準情報(TR)の出版許可の折衝を開始した。

2001年度になって, 日本フィリップス株式会社を経由してPhilips Electronics N.V.から出版許可をいただいた。その後, フォーマット分科会においてレビューを行うと共に, 日本フィリップス株式会社の専門家にTR原案の詳細レビューを受けた。

これらの手続きを経てTR原案は, 2001年11月に完成し, 光ディスク標準化委員会から財団法人日本規格協会を経由して経済産業省産業技術環境局に提出された。


2. 審議中の主要検討課題及び懸案事項

2.1 訳語

原案作成委員会では, 関連するJIS又は標準情報(TR)との整合を考慮して, 訳語を選定した。特にTR X 0025:2000 追記形コンパクトディスク(CD-R)システムで採用した訳語(解説表2.1)はそのままこの標準情報(TR)で用いている。この標準情報(TR)で新たに採用した主な訳語を解説表2.2に示し, 今後の関連規定の作成等に際しての参考とする。

解説表2.1 TR X 0025:2000における訳語
原語 訳語(TRでの表記) 備考
action 動作  
application 応用  
CD-WO CD-R CD-Rに統一。
central spot 中心点  
checked at zero zeroで検査する  
circular 円偏光  
clocking クロッキング  
content 内容  
current  
data organization データ構造  
deviation 偏差  
double pass ダブルパス  
empty 空の  
end 終了  
finalization 終了化  
finalize 終了化した  
generation copy 生成コピー  
incremantal インクリメンタル  
inverted 反転している  
item 項目  
jitter ジッタ 他のJISに合わせた。
kind 種別  
last 最終  
linking リンク付け  
main channel 主チャネル  
mastered スタンプ記録  
multi session 複セション  
outermost 最外周の  
overwrite 重ね書き  
partially recorded 部分記録  
play back 再生する システムレベルの動作
polarization 偏光  
pregroove 案内溝  
program area プログラム領域 JIS S 8605では, プログラム記録領域としている。このTRでは, program memory area(プログラムメモリ領域)と紛らわしいので, プログラム領域とした。
radial ラジアル 又は 半径方向  
read 読み取る 物理レベルの動作
reading 読取り  
record 記録する  
recording mode 記録モード  
right after 直後  
second 単位の場合は, sとする。
sequence  
silence 無音  
single session 単セション  
single speed 標準速  
spot  
start 開始  
stopping 停止  
store 記録する  
subcode channel サブコードチャネル  
substrate transmission 基板透過率  
table of content 目次情報  
time code 時間コード  
time interval analysis 時間間隔分析  
unity ユニティ  
user 利用者  
violation 逸脱  
wavefront 波面  
wobble 蛇行  
write 書き込む  
write strategy 書込み方式  

解説表2.2 この標準情報(TR)で新たに採用した訳語
原語 訳語(このTRでの表記) 備考
at onceアトワンス
CD-RW enabledCD-RW可能な
CD-RW enabled CD-playerCD-RW可能CDプレーヤ
chronological発生順
disc type identificationディスク型識別
effect length効果長TR X 0025を参照。
extra information付加情報additional information: 追加情報
special information: 特別情報
feature機能
final session最終セション
finish終了する
groove
high-reflective state高反射状態
instantaneous value瞬時値
interrupted中断した
interval間隔
link pointリンク点
link positionリンク位置
linkingリンク付け
logical erase論理消去
manufacturer製造者
non-finalize非終了化
physical erase物理消去
pre gapプレギャップ
professional業務用の
read out読み出す
reserved track予約済みトラック
retrieval system検索システム
skip Interval Pointerスキップ間隔ポインタ
skip Track assignmentスキップトラック割当て
supplementary recorder補助レコーダ
type code型コード
uninterrupted Written中断なし書込み
unique number一意番号
variation変化
write power書込みパワーrecording power: 記録パワー
writing mode書込みモード
writing strategy書込み方式

2.2 構成

2.2.1 章・節構成

Orange Bookの規定は, 必ずしもJIS又は標準情報(TR)の様式には整合していないため, 整合化の対応が必要である。しかしTRの読者が原規定を参照する際の便を考慮すると, 章・節構成はなるべく原規定のそれを保存することが望まれる。そこで, 原規定における記述内容のない章はそのままの残すと共に, 次に示すだけの修正(章・節番号の変更なし)を施して, この標準情報(TR)を構成した。

2.2.2 その他の翻訳表記上の規則

原規定は, ハードコピーで提供されている。この標準情報(TR)は, 翻訳作業に伴って電子化テキストにHTMLタグを付けて, 将来のウェブ配布に備えている。タグ付けは, 原規定の文書スタイルから読み取れる構造をできるだけ保存するものとし, 次の配慮を施した。


3. ライセンス

CD-RWディスク及び装置の製品化のために, ライセンスの取得及び規定の詳細を入手する場合には, Philipsから個別のライセンスを得る必要がある。

ライセンスの取得に際しては, 次に示すURLのウェブにある情報を利用する。

http://www.licensing.philips.com
又は日本Philips(株) 法務・知的財産部 (Tel: 03-3740-5015)へ申し込む。


4. 原案作成委員会

この規格の原案は,財団法人光産業技術振興協会に設置された光ディスク標準化委員会のフォーマット分科会で作成され,光ディスク標準化委員会のレビューを受けた。これらの委員会の委員構成を解説表4.1及び解説表4.2に示す。

解説表4.1 光ディスク標準化委員会の構成
氏名所属
(委員長)小町 祐史松下電送システム株式会社
(副委員長)入江 満三菱電機株式会社
(副委員長)菅谷 寿鴻株式会社東芝
橋詰 隆株式会社小野測器
横川 文彦パイオニア株式会社
石亀 昌明岩手県立大学
入江 英之DVDフォーラム
小川 博司ソニー株式会社
金沢 安矩日立マクセル株式会社
助田 裕史株式会社日立製作所
高橋 正悦株式会社リコー
田辺 隆也日本電信電話株式会社
土屋 洋一三洋電機株式会社
徳丸 春樹日本放送協会
戸島 知之NTTエレクトロニクス株式会社
橋本 進日本規格協会
八谷 祥一株式会社アプリックス
樋口 政孝財団法人デジタルコンテンツ協会
藤本 健文日本フィリップス株式会社
山田 昇松下電器産業株式会社
(オブザーバ)谷口 裕則経済産業省産業技術環境局
(事務局)増田 岳夫光産業技術振興協会
(事務局)田辺 正剛光産業技術振興協会
(事務局)中島 眞人光産業技術振興協会

解説表4.2 光ディスク標準化委員会 フォーマット分科会の構成
氏名所属
(統括)小町 祐史松下電送システム株式会社
(副統括)八谷 祥一株式会社アプリックス
(副統括)高橋 正悦株式会社リコー
石井 正則日本電気株式会社
石川 清彦日本放送協会
伊藤 精悟株式会社東芝
木戸 達雄経済産業省産業技術環境局
工藤 芳明大日本印刷株式会社
後藤 芳稔松下電器産業株式会社
沢田 要川鉄情報システム株式会社
徳光 健司株式会社日立製作所
中根 和彦三菱電機株式会社
吉岡 誠富士通株式会社
(事務局)増田 岳夫光産業技術振興協会
(事務局)松川 茂樹光産業技術振興協会


5. 附属書C 勧告及び明確化

附属書C(原規定のAttachment C)は次の構成をとる。

C.1 動作原理
C.1.1 記録済み情報
C.1.2 トラッキング情報
C.1.3 異速度での読取り
C.1.4 物理消去
C.1.5 論理消去
C.1.6 フォーマット付け
C.2 HF変調
C.2.1 読取りピックアップへの依存性
C.2.2 レコーダピックアップへの依存性
C.3 最適パワー制御
C.3.1 最適記録パワー
C.3.2 レコーダ用の実際のOPC処理
C.3.3 メディア用OPCの決定処理
C.4 環境: 動作条件及び保存条件
C.5 プッシュプル量及び正規化プッシュプル率
C.6 溝の蛇行振幅の測定
C.7 プレギャップの使用
C.8 アドレシング方式1及びアドレシング方式2の使用
C.9 連続コピー管理システム(SCMS)
C.9.1 適用範囲
C.9.2 引用規格
C.9.3 CD-RW機器の技術的要件
C.9.4 CD-RW再生規則
C.9.5 CD-RW記録規則