HTML文書は既に広く利用されており, さらに多様な構造記述ができるXML文書についてもその利用者が増え始めている。これらの記述言語は, 文書だけでなくデータの構造記述にも利用されている。その結果,これらの文書及びデータをさまざまなアプリケーションにおいて使用可能な標準的なプログラムインタフェースが強く望まれていた。文書オブジェクトモデル(DOM)は, この要求に応えるために, World Wide Web Consortium(W3C)によって開発され, まず1998年10月にDocument Object Model (DOM) Level 1 SpecificationがW3C勧告として公表された。
(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の高速Webにおける標準化に関する調査研究委員会は, 勧告の公表以前からW3CでのDOMの動向に着目して調査研究を継続し, 標準情報(TR)によるDOMの公表の必要性を通商産業省工業技術院(当時)に提言した。工業技術院は, 1998年4月に, 高速Webにおける標準化に関する調査研究委員会に対してDOM Level 1の翻訳作業の委託を行った。同委員会では作業グループWG3(高速Web言語)がこの作業を担当し, 1999年5月に標準情報(TR)の原案を完成した。これは, 同年9月にTR X 0019 文書オブジェクトモデル(DOM)水準1 規定[1]として公表されている。
その間にもW3Cは, 利用者要求に基づくDOMに関する検討をさらに進め, 2000年11月に一連のDocument Object Model (DOM) Level 2に関する勧告を公表した。INSTACの次世代コンテンツの標準化に関する調査研究委員会は, 経済産業省の委託に基づき, 2001年度にDocument Object Model (DOM) Level 2 Core Specificationの翻訳を行い, 原案を完成している[2]。その後この作業は, NSTACの将来型文書統合システム標準化調査研究委員会(AIDOS)の2002年度の活動に引き継がれ, 作業グループ(WG1)によって, Document Object Model (DOM) Level 2のCore Specification以外の勧告について, その翻訳が行われ, 標準情報(TR)の原案作成が行われている。Traversal and Range SpecificationのTR原案は, 2003年3月に経済産業省の産業技術環境局に提出された。
翻訳においては, 訳語のTR X 0019との整合に配慮した。ここで採用した主な訳語を解説表2.1に示し, 今後の関連規定の作成等に際しての参考とする。
原語 | 訳語 |
---|---|
attribute getter | 属性取得するもの |
binding-specific | 束縛固有の |
boundary-points | 境界点 |
casting method | キャスト化メソッド |
cloning | クローン化 |
collasped range | 縮退範囲 |
computational resource | 計算中の資源 |
context tree | 文脈木 |
document mutation | 文書変異 |
filter out | フィルタ処理する |
filtering | フィルタ処理 |
flag | フラグ |
flattened | 平坦化された |
invisible node | 不可視ノード |
iterator | 繰返し子 |
list-oriented view | リスト指向のビュー |
mutation | 変異 |
named anchor | 名前付きアンカ |
navigate | 誘導する |
navigation | 誘導 |
pre-order traversal | 前順たどり |
propagate | 伝播する |
recapture | 再捕獲する |
relinquish | 解放する |
robustness | 頑健性 |
traversal operation | たどり操作 |
tree-oriented view | 木指向のビュー |
tree-walker | 木散策するもの |
underlying data structure | 基礎となるデータ構造 |
UTF-16 encoded string | UTF-16符号化文字列 |
visibility | 可視性 |
visible node | 可視ノード |
walk | 散策 |
well-defined | 明確に定義された |
well-designed | 明確に設計された |
W3Cの規定は, 必ずしもJIS又は標準情報(TR)の様式には整合していないため, 整合化の対応が必要である。しかしTRの読者が原規定を参照する際の便を考慮すると, 章・節構成はなるべく原規定のそれを保存することが望まれる。そこで, 次に示すだけの修正(章・節番号の変更なし)を施して, この標準情報(TR)を構成した。
この標準情報(TR)の公表に際して, W3Cから和文及び英文による次の記載を求められている。この記述は原規定にはないため, ここに示して, W3Cの要求に応えることとする。
規定に準拠しているかどうかの基準となる版は, W3Cのサイトにある原規定とする。
この標準情報(TR)は原規定と技術的に同一であることを意図しているが, 翻訳上の誤りはあり得る。
The normative version of the specification is the English version found at the W3C site.
Although this TR is intended to be technically identical to the original, it may contain errors from the translation.
Document Object Model (DOM) Level 2 については, 2000年11月付けで次の勧告がW3Cから公表されている。
a), b), c)に一致する標準情報(TR)は, 既に公表済みであり, d), e)のTR原案はそれぞれ2002年11月, 2003年3月に将来型文書統合システム標準化調査研究委員会(AIDOS)によって提出され, いずれも2003年7月の経済産業省 情報技術専門委員会で承認された。
さらにW3Cは, Document Object Model (DOM) Level 2 の勧告
[1] TR X 0019:1999, 文書オブジェクトモデル(DOM)水準1 規定, 1999-09
[2] TR X 0065:2002, 文書オブジェクトモデル(DOM)水準2 コア規定, 2002-09
この標準情報(TR)の原案を作成した(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の将来型文書統合システム標準化調査研究委員会(AIDOS)及び作業グループ(WG1)の委員構成を,それぞれ解説表5.1及び解説表5.2に示す。
氏名 | 所属 | |
---|---|---|
(委員長) | 矢部 初男 | 電気通信大学 |
(幹事) | 大野 邦夫 | ドコモ・システムズ株式会社 |
(幹事) | 小町 祐史 | パナソニック コミュニケーションズ株式会社 |
安達 文夫 | 国立歴史民俗博物館 | |
飯島 正 | 慶應義塾大学 | |
今門 政記 | 株式会社モスインスティテュート | |
内山 光一 | 株式会社東芝 | |
上村 圭介 | 国際大学 | |
河込 和宏 | 株式会社東芝 | |
菊田 昌弘 | 株式会社シナジー・インキュベート | |
出葉 義治 | ソニー株式会社 | |
内藤 求 | 株式会社シナジー・インキュベート | |
宮澤 彰 | 国立情報学研究所 | |
山田 篤 | 財団法人京都高度技術研究所 | |
高橋 昌行 | 経済産業省 産業技術環境局標準課 | |
オブザーバ | 篠原 章夫 | 日本電信電話株式会社 |
(事務局) | 内藤 昌幸 | 財団法人日本規格協会 |
氏名 | 所属 | |
---|---|---|
(主査) | 小町 祐史 | パナソニック コミュニケーションズ株式会社 |
今門 政記 | 株式会社モスインスティテュート | |
内山 光一 | 株式会社東芝 | |
大野 邦夫 | ドコモ・システムズ株式会社 | |
上村 圭介 | 国際大学 | |
内藤 求 | 株式会社シナジー・インキュベート | |
宮澤 彰 | 国立情報学研究所 | |
矢部 初男 | 電気通信大学 | |
高橋 昌行 | 経済産業省産業技術環境局 | |
オブザーバ | 今村 剛 | 日本IBM株式会社 |
(事務局) | 内藤 昌幸 | 財団法人日本規格協会 |