WWW(World Wide Web)は, スイスのCERN(欧州素粒子物理研究所)において, 所内の研究者間の研究成果の共有を支援することを目的として, 1990年に分散形広域ハイパテキストシステムの構築のためのプロジェクトによって設立された。このハイパテキストでは, テキスト又はテキストの集合を分割してノードという単位に分け, ノード内にアンカ(端点)を定義して, アンカ間の関係としてハイパリンクを規定している。
WWWのプロジェクトができた当初は, CERNにおいて特定マシン上のラインモードブラウザが用意されただけであったが, 1991年にはCERN以外でもWWWの利用が可能になり, Xウィンドウシステム用のブラウザが開発された。1993年になると, イリノイ大学でMOSAICが発表されて文書中の画像表示が可能になり, Windows版に加えてMAC版も発表された。1994年のNetscape Navigatorのリリースは, WWWの爆発的普及のきっかけをつくり, それがさらにインタネット利用者を増やすことになった。
CERNでのハイパテキストの構造記述及びその交換手続きは, 開発当初は研究所内の仕様にとどまっていたが, WWWの普及と共にそれらの標準化への意識が高まり, IETF(Internet Engineering Task Force)において, HTML及びHTTP(Hypertext Transfer Protocol)の作業グループが設立されて本格的な標準化作業が開始された。HTML 2.0は, IETF RFC1866[1]として公表され, その後, HTMLの標準化作業は, W3C(World Wide Web Consortium)に移された。
W3Cでの初期のHTML改版作業は, ブラウザメーカの独自の拡張を吸収してスタイル指定を含む多くの機能を盛り込む方針で行われた。しかしその後, HTMLを本来の文書論理構造記述の言語に引き戻して, スタイル指定については別の交換様式で対応するという方針が主流となり, HTML 3.2[2], HTML 4.0[3]へと改版されてきた。
HTML 4.0は既に多くの処理系でサポートされ, HTML 4.0によって記述された多くの文書がウェブ環境に蓄積されている。(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の"文書処理及びフォントの標準化調査研究委員会(DDFD)"は, 1998年度の活動としてW3C勧告のHTML 4.0の調査研究を行い, その重要性を認識して, 標準情報(TR)として公表することが望ましいことを確認した。
そこで通商産業省の工業技術院は, "文書処理及びフォントの標準化調査研究委員会(DDFD)"に対してHTML 4.0のTR化作業を委託した。DDFDではその作業グループ(DDFD-WG)が, 1999年度にHTML 4.0のTR化の作業を担当し, 2000年5月に標準情報(TR)の原案を完成して工業技術院に提出している。これは, 2000年9月に, TR X 0033:2000として公表された。
公表の後, TR X 0033:2000の利用者から多くのコメントをいただき, 原案委員会はそのコメントへの対応を検討してきた。検討の結果, TR X 0033:2000に対して幾つかの修正の必要が明らかになった。W3CでもHTML 4.0に対する検討が継続され, 1999年12月には, HTML 4.01[7]が公表されている。
原案委員会は, 2001年度の作業として, TR X 0033:2000の改正原案を作成し, 利用者からのコメントの反映を行うと共に, 原規定のHTML 4.0からHTML 4.01への変更内容を附属書1として改正原案に含めた。改正原案は, 2002年5月に経済産業省に提出されている。
訳語選定に際しては,HTML 4.0と密接な関係のある標準情報 TR X 0032:2000 段階スタイルシート 水準2(CSS2)[4], JIS X 4156:2000 ハイパテキストマーク付け言語(HTML)[5], 及びSGML関連規格において使用している訳語との整合を配慮した。
この標準情報(TR)で採用した主な訳語を次に示し, 今後の関連規定の作成等に際しての参考とする。
原語 | 訳語 |
---|---|
active document | 活性文書 |
adapted phone | 多機能電話 |
administrator | 管理者 |
alignment property | 配置特性 |
annotate | 注釈をつける |
audio | 音声 |
base path | 基底パス |
bidirectional text | 双方向テキスト |
block-level | ブロックレベル |
body section | ボディ部 |
bookmark | ブックマーク |
border | 枠線 |
boundary | 境界 |
braille tactile feedback device | 点字触覚のフィードバック装置 |
browse | 閲覧する |
canvas | 描画面 |
cascading | 段階化 |
cell basis | セルベース |
clear text | 平文テキスト |
close delimiter | 閉じ区切り子 |
codebase | コードベース |
codepoint | コードポイント |
coherent linear document | 一貫性のある線形文書 |
compact document | 縮小文書 |
dereference | 参照解除する |
deselect | 選択解除する |
destination medium | リンク先メディア |
dialogue | 対話 |
document validation | 文書妥当性検査 |
dummy text | ダミーテキスト |
embedded direction changes | 埋込み方向変更 |
embedding object | 埋込みオブジェクト |
enclosed text | 囲みテキスト |
enclosing element | 囲み要素 |
executable code | 実行可能コード |
explicit directionalty | 明示的方向性 |
external resource | 外部資源 |
external style sheet | 外部スタイルシート |
fixed-pitch character grid | 固定ピッチ文字格子 |
flush left | 左揃え |
focus | 注目点 |
foot section | フット部分 |
foreign data | 外部データ |
form data set | フォームデータ集合 |
forward link | 順方向リンク |
frameset document | フレーム集合文書 |
global structure | 大域的構造 |
gradient | グラディエント |
head section | ヘッド部 |
header field | ヘッダフィールド |
hyphenation routine | ハイフン付けルーチン |
image resource | 画像資源 |
incremental rendering | 増加的レンダリング |
inflection | 抑揚 |
interactibity | 対話性 |
interoperability | 相互運用性 |
intrinsic event attribute | 組込みイベント属性 |
joining control | 結合制御 |
joining letter | 結合文字 |
language-sensitive | 言語依存性 |
leap second | うるう(閏)秒 |
legal value | 正当な値 |
legend | 説明 |
legibility | 読み易さ |
line style | 線種 |
list box | リストボックス |
local cache | 局所キャッシュ |
loose DTD | 不正確DTD |
mailto URI | メール先URI |
markup-significant character | マーク付けが有効な文字 |
mirrored character glyph | 鏡像化文字グリフ |
new line | 改行 |
open delimiter | 開き区切り子 |
phonemic | 音素の |
primary language | 一次言語 |
print preview mode | 印刷プレビューモード |
proprietary HTML extensions | 独自のHTML拡張 |
region-defining element | 領域定義要素 |
registry | レジストリ |
relational operator | 関係演算子 |
relative URI | 相対URI |
Resource Description Language | 資源記述言語 |
retrieval | 検索 |
reverse link | 逆方向リンク |
reverse video | 逆方向ビデオ |
right-to-left | 左向き |
screen flicker | 画面明滅 |
script engine | スクリプトエンジン |
scripting language | スクリプト言語 |
search-engine indexer | 検索エンジンインデクサ |
security protection | 安全性保護 |
serialized representation | 直列化表示 |
SGML construct | SGML構成子 |
SGML token | SGMLトークン |
shorthand markup | 速記マーク付け |
smart form | スマートフォーム |
sound clip | サウンドクリップ |
source | リンク元 |
source document | 入力文書 |
special entities | 特殊実体 |
speech synthesizer | 音声合成器 |
standard marked-up text | 標準マーク付けテキスト |
standard pixel | 標準画素 |
static banner | 静的バナー |
string matching | 文字列の一致 |
subwindow | サブウィンドウ |
successful control | 正常制御 |
tabbing navigation | タブナビゲーション |
tabindex | タブインデクス |
table border | 表枠線 |
target media | ターゲットメディア |
target semantics | ターゲットセマンティクス |
text accompany image | テキスト添付画像 |
text direction | テキスト方向 |
trailing white space | 末尾の空白 |
transaction | トランザクション |
transitional document type definition | 過渡的な文書型定義 |
unmodifable text | 変更不可のテキスト |
video clip | ビデオクリップ |
visual browser | 視覚的ブラウザ |
W3Cの規定は, 必ずしもJIS又は標準情報(TR)の様式には整合していないため, 整合化の対応が必要である。しかしTRの読者が原規定を参照する際の便を考慮すると, 章・節構成はなるべく原規定のそれを保存することが望まれる。そこで, 次に示すだけの修正(章・節番号の変更なし)を施して, この標準情報(TR)を構成した。
原規定は, HTMLを用いて記述されている。この標準情報(TR)も原則として, 原規定のタグを保存することにしたが, 特に次の点に留意した。
この標準情報(TR)の公表に際して, W3Cから和文及び英文による次の記載を求められている。この記述は原規定にはないため, ここに示して, W3Cの要求に応えることとする。
規定に準拠しているかどうかの基準となる版は, W3Cのサイトにある原規定とする。
この標準情報(TR)は原規定と技術的に同一であることを意図しているが, 翻訳上の誤りはあり得る。
The normative version of the specification is the English version found at the W3C site.
Although this TR is intended to be technically identical to the original, it may contain errors from the translation.
HTML 4.0からHTML 4.01への変更内容は, HTML 4.01のAnnex A Changesを翻訳し, 附属書1としてTR X 0033:2002に添付している。
HTML 4.01のAnnex Aの一部には, TR X 0033:2002の附属書Aと同じ記述があり, 重複を避けるために附属書1ではそれを削除してある。
原規定のAnnex Aには, 本文中にはない深い節番号が記述されているが, ハイパリンクは正しい箇所を指示している。そこで, 附属書1では指示箇所の節番号を訂正している。
英語の表現に関するもの(anをaにするなど), 及び翻訳に際して既に対応済みであるものに関しては, 附属書1ではTR X 0033:2002の記述には変更がない旨を"参考"で示した。
附属書1の追加に伴い, 前版のまえがき, 目次などを修正している。
この規定は, JIS X 4156 から参照されている。これは, 原規定がISO/IEC 15445[6]から参照されていることに対応する。この関係を, 次に図示する。
[国際] | ISO/IEC 15445 HyperText Markup Language (HTML) | ------> 参照 | W3C REC-html40 HyperText Matrkup Language (HTML) 4.0 Spec. |
↑ | ↑ | ||
一致 | 一致 | ||
↓ | ↓ | ||
[国内] | JIS X 4156 ハイパテキストマーク付け言語 (HTML) | ------> 参照 | TR X 0033 ハイパテキストマーク付け言語 (HTML) 4.0 |
[1] IETF RFC1866, HyperText Markup Language HTML 2.0, http://www.ietf.org/rfc/rfc1866.txt?number=1866, 1995-11
[2] W3C REC-html32, HyperText Markup Language HTML 3.2, http://www.w3.org/TR/REC-html32.html, 1997-01-14
[3] W3C REC-html40, HyperText Markup Language HTML 4.0, http://www.w3.org/TR/1998/REC-html40-19980424, 1998-04-24
[4] TR X 0032:2000 段階スタイルシート 水準2(CSS2), 2000-09-01
[5] JIS X 4156:2000 ハイパテキストマーク付け言語(HTML), 2000-10-20
[6] ISO/IEC 15445:2000, Information technology - Document description and processing languages - HyperText Markup Language (HTML), http://purl.org/NET/ISO+IEC.15445/15445.html, 2000-05-15
[7] W3C REC-html401, HTML 4.01 Specification, http://www.w3.org/TR/1999/REC-html401-19991224, 1999-12-24
原案作成委員会である(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の"文書処理及びフォントの標準化調査研究委員会"(DDFD)は, 学識経験者, メーカ及び利用者で構成され, その委員会の中に実際の翻訳作業を行う作業グループ1(DDFD-WG1)が設置されている。それらの構成員を次に示す。
氏名 | 所属 | |
---|---|---|
(委員長) | 池田 克夫 | 大阪工業大学 |
(幹事) | 鯵坂 恒夫 | 和歌山大学 |
(幹事) | 小町 祐史 | 松下電送システム株式会社 (SC34専門委員会委員長) |
安達 淳 | 株式会社沖データ | |
内山 光一 | 株式会社東芝 | |
小笠原 治 | 社団法人日本印刷技術協会 | |
高沢 通 | 大日本スクリーン株式会社 | |
高橋 亨 | 株式会社日立製作所 | |
岩田 悟志 | 経済産業省商務情報政策局 | |
木戸 達雄 | 経済産業省産業技術環境局 | |
大久保 彰徳 | 株式会社リコー | |
宮本 義昭 | 日本ユニシス株式会社 | |
(オブザーバ) | 高橋 昌行 | 経済産業省産業技術環境局 |
(事務局) | 内藤 昌幸 | 財団法人日本規格協会 |
氏名 | 所属 | |
---|---|---|
(主査) | 小町 祐史 | 松下電送システム株式会社 (SC34専門委員会委員長) |
(幹事) | 内山 光一 | 株式会社東芝 |
(幹事) | 高橋 亨 | 株式会社日立製作所 |
安達 淳 | 株式会社沖データ | |
今郷 詔 | 株式会社リコー | |
小笠原 治 | 社団法人日本印刷技術協会 | |
奥井 康弘 | 株式会社日本ユニテック | |
内藤 求 | 株式会社シナジー・インキュベート | |
内藤 広志 | 大阪工業大学 | |
海田 茂 | ネクストソリューション株式会社 | |
渡部 賢一 | 財団法人日本規格協会 | |
(オブザーバ) | 浅利 千鶴 | 浅利会計事務所 |
大久保 彰徳 | 株式会社リコー | |
高橋 昌行 | 経済産業省産業技術環境局 | |
(事務局) | 内藤 昌幸 | 財団法人日本規格協会 |