標準仕様書 TS X 0085:2003

ハイパテキスト転送プロトコル HTTP/1.1 解説



1. 公表の趣旨及び経緯

財団法人日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の中に設けられた電子出版技術調査研究委員会は, World Wide Web Consortium (W3C)が規定する一連のWeb文書関連規定のTR化を行ったきた。それらに基づく文書情報は, ネットワーク環境で交換されることが多く, Internat Engineering Task Force (IETF)が規定するプロトコルと密接な関係がある。

そこで電子出版技術調査研究委員会の作業グループWG3は, 2001年度の活動としてこれらのプロトコルの調査を行い, 多くのWeb文書関連規定から参照される次のプロトコル規定が重要であって標準情報(TR)として公表することが望ましいことを確認した。

電子出版技術調査研究委員会は, これらのTR化作業を作業グループWG3の課題として2001年度から開始し, HTTP/1.1のTR原案を2002年12月に完成して, 経済産業省産業技術環境局に提出した。


2. 審議中の主要検討課題

2.1 訳語

訳語選定に際しては,IETFの関連プロトコルを規定する他のTRとの整合を配慮した。この標準仕様書(TS)で採用した主な訳語の例を解説表2.1に示し, 今後の関連規定の翻訳に際しての参考とする。

解説表2.1 訳語一覧
原語訳語
absolute form絶対形式
age経過時間
agent-driven negotiationエージェント駆動(の)折衝
alert警告する
amount of trafficトラフィック量
annotation注記
audience視聴者
augmented BNF強化BNF
authentication認証
authorization認定
backwards compatibility後方互換性
basic authentication scheme基本認証方式
basic expiration mechanism基本有効期限切れ機構
basic parsing construct基本構文解析構成子
cachableキャッシュ可能な
canonical form正準形式
canonicalization正準化
cashing mechanismキャッシュ化機構
chain連鎖
chunked encodingかたまり符号化
clear text暗号化されていないテキスト
clock-skew-relatedクロック歪みに関係する
collaborative協調的な
collapseたたむ
comment注釈
common form共通形式
compliant適合
composite複合の
conditional request条件付き要求
congestion輻輳
connectionコネクション
connection-tokenコネクショントークン
construct構成子
content encoding内容符号化
content negotiation内容折衝
continuation line連続行
convention規約
credential身分証明(書)
current time現時間
data typingデータ型付け
delta seconds差分秒
deploy配備する
destination server宛先サーバ
digest authenticationダイジェスト認証
disambiguatingあいまいさ削除
diversity多様性
domain name serviceドメイン名サービス
downgrade格下げする
e-mail address電子メールアドレス
encryption mechanism暗号化機構
end-of-line marker行末マーカ
end-to-end端点間
entity実体
entity body実体本体
entryエントリ
epilogueエピローグ
exacerbate悪化させる
expiration model有効期限切れモデル
expiration value有効期限切れ値
export移出する
firewallファイアウォール
first-hand直接の
fold折り返す
forward回送する
fraction一部
freshness lifetime新鮮保持期間
front-end updateフロントエンド更新
fulfill果す
full date省略なし日付
full form省略のない形式
gatewayゲートウェイ
general syntax一般構文
generic grammar共通文法
generic message共通メッセージ
GET-based formsGETに基づく形式
Greenwich mean timeグリニッチ標準時
guarantees保証
heuristic expiration発見的(な)有効期限切れ
heuristic expiration time発見的な有効期限
heuristics発見的手法
hop-by-hopホップごとの
hostile server悪意をもったサーバ
hung異常停止
idempotent多重呼出し不変な
identical同一の
identifiable識別可能な
identity同一性,識別性。文脈による。
idle未使用の
illicit access不正なアクセス
intelligible明瞭な
intermediary仲介
intermediate cache中間キャッシュ
intermittent connectivity断続的な接続性
invalid無効な,有効でない,妥当でない。文脈による。
invalidation無効化
known base URI既知の基底URI
leading zero先行するゼロ
line break行区切り
line terminator行終端子
linear whitespace (LWS)連続する空白 (linear whitespace, LWS)
listening待ち受けている
logログ
loggingログ取得
low-power radio link低電力無線リンク
machine-usable機械使用可能
mailing listメーリングリスト
major (version)主版
message bodyメッセージ本体
minor (version)副版
modifier修飾子
multiple responses多重応答
multipurpose internet mail extensions多目的インターネットメール拡張
naive user未経験の利用者
national hierarchies国レベルの階層
negotiate折衝する
non-casheableキャッシュ不可能である
non-modifiable修正不可
notify通知する
no-transform非変換
no-transform directiveno-transform指令
numbering scheme番号付け方式
one-time password一時パスワード
opaque不透明な
open開く
open-ended拡張可能な
operator操作主体,操作員
optionオプション
origin生成元
origin server原サーバ
original URI元のURI
overheadオーバヘッド
overlap重複する
path name経路名
payloadペイロード
persistent永続性,永続的
persistent connection mechanism永続的接続機構
persistent connection永続的コネクション
platformプラットホーム
portalポータル
preference好み
a priori limit予め決まった制限
product token製品トークン
property特性
property of the messageメッセージの特性
protection space保護空間
protocol streamプロトコル(の)ストリーム
proxyプロキシ
pseudonym仮名
public proxy公共プロキシ
quality value品質値
quoted-string引用文字列
range unit範囲単位
realm範囲
reason phrase理由句
received-protocol受信したプロトコル
recipient受け手
redirect宛先を切り替える,宛先切替えする
registry登録組織, レジストリ
regulate規制する
relax緩和する
relay point中継点
request要求
request-line要求行
resource資源
response応答
retrieval検索,取得。文脈による。
revalidation有効性再検証
rule規則
safe and proper transfer安全で適切な転送
sanitized浄化された
security holeセキュリティホール
security limitationセキュリティ制限
security policyセキュリティ方針
semantic transparency意味的透過性
semanticsセマンティクス,意味。文脈による。
server machineサーバ機
server-drivenサーバ駆動の
side effect副作用
signal通知する
sourceソース
spanわたる
spoofingなりすまし
stale新鮮でない
stateless状態のない
status code状態コード
status-line状態行
subordinate下位要素
sub-product部分製品
subrange補助範囲
Internet assigned numbers authority (IANA)インターネット割当て番号機関 (IANA)
the nearest, non-tunnel neighbor直近の非トンネルの隣接
time stamp時刻印
time standard基準時間
toggle switchトグルスイッチ
tolerant耐障害
trace追跡,トレース。文脈による。
transactionトランザクション
transfer転送する
transfer coding転送符号化
transfer encoding転送符号化
transformation applied変換適用
transmit伝送する
transparent透過的な
tunnelトンネル
typing型付け
uniform resource identifier統一資源識別子
universal resource identifier普遍資源識別子
upgrade格上げする, 向上
usefully cachable都合よくキャシュ可能
user agent利用者エージェント
validate有効性検証を行う,有効性を検証する
validation model有効性検証モデル
validator有効性検証子
vanity hostname虚構ホスト名
variance変形, 可変部
variant変形
version number版番号
versioning policy版付け方針
violation違反
virtual host仮想ホスト
warn-agent警告エージェント
weak validator弱有効性検証子
weakness indicator弱さ表示子
World-Wide Web global information initiativeWWW大域情報イニシアティブ
write-through通し書き

備考 validatorは, 装置ではなくフィールドなどのデータであるため, 有効性検証器ではなく, 有効性検証子とした。

2.2 章・節構成

IETFの規定は, 必ずしもJIS又は標準仕様書(TS)の様式には整合していないため, 整合化の対応が必要である。しかしTSの読者が原規定を参照する際の便を考慮すると, 章・節構成及び章・節の順序表示はなるべく原規定のそれらを保存することが望まれる。そこで, 次に示すだけの修正を施して, この標準仕様書(TS)を構成した。

2.3 その他の翻訳表記上の配慮

原規定は, プレーンテキストとして記述されている。この標準仕様書(TS)はそれに最小限のHTMLタグを付けて読み易さ及び交換性を向上させた。その際に次の配慮を施してある。


3. 原案作成委員会

この標準仕様書(TS)の原案を作成した財団法人日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の電子出版技術調査研究委員会及びその作業グループ(WG3)の構成表を,次に示す。委員氏名及びその所属は,原案作成を完了した年度である2002年度末のものである。

解説表3.1 電子出版技術調査研究委員会 構成表
氏名所属
(委員長)池田 克夫大阪工業大学
(幹事)小町 祐史パナソニックコミュニケーションズ株式会社
大久保 彰徳株式会社リコー
長村 玄ネクストソリューション株式会社
高沢 通大日本スクリーン製造株式会社
内山 光一株式会社東芝
(委員)小笠原 治社団法人日本印刷技術協会
礪波 道夫社団法人日本新聞協会(読売新聞社)
木戸 達雄経済産業省産業技術環境局
(オブザーバ)三瀬 元康社団法人日本新聞協会
高橋 昌行経済産業省産業技術環境局
(事務局)内藤 昌幸財団法人日本規格協会

解説表3.2 作業グループ(WG3) 構成表
氏名所属
(主査)小町 祐史パナソニックコミュニケーションズ株式会社
(幹事)平山 亮金沢工業大学
(委員)今門 政記株式会社モスインスティテュート
内山 光一株式会社東芝
志田 智株式会社インターネット総合研究所
矢ケ崎 敏明キヤノン株式会社
大久保 彰徳株式会社リコー
(オブザーバ)安達 淳株式会社沖データ
澤田 位財団法人日本規格協会
市川 孝アドビシステムズ株式会社
山本 太郎アドビシステムズ株式会社
三瀬 元康社団法人日本新聞協会
長村 玄ネクストソリューション株式会社
高橋 昌行経済産業省産業技術環境局
(事務局)内藤 昌幸財団法人日本規格協会