標準情報 TR X 0024:2001

インタネット印刷プロトコル(IPP) 1.1: モデル及び機能定義 解説



1. 公表の趣旨及び経緯

インタネット印刷プロトコル(IPP)は, Internet Engineering Task Force (IETF)によって開発が行われており, Internet-Draftの段階から, インタネット環境における印刷プロトコルとして多くの利用者の注目を集めると共に, プリンタベンダによってその実装が行われている。(社)日本事務機械工業会の標準化委員会 PDL開発検討小委員会は, この動向に着目して調査研究を継続し, "技術標準等の早期公開によるJIS化の前提となるコンセンサスの形成を促進する" という標準情報(TR)によるIPPの公表の必要性を通商産業省工業技術院に提言した。

通商産業省工業技術院は, 1998年4月に(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の中に電子出版技術調査研究委員会を設立し, IPPの翻訳作業及び標準情報(TR)原案作成の委託を行った。電子出版技術調査研究委員会では作業グループWG1がこの作業を担当し, 1998年9月からまず, 1998年6月にInternet Engineering Task Force (IETF)によって公表されたInternet Printing Protocol 1.0: Encoding and Transport (Internet-Draft)の翻訳に着手して, 1999年2月に標準情報の原案を完成した。これは, TR X 0017:1999として, 1999年5月に公表されている。

IETFは, 1999年5月にInternet Printing Protocol 1.1: Model and Semantics (Internet-Draft)を公表した。電子出版技術調査研究委員会のWG1は直ちにその翻訳に着手し, 1999年8月に標準情報の原案を完成して工業技術院に提出した。これは, TR X 0024:1999として, 1999年11月に公表されている。

これらのIPP関連の標準情報(TR)においては, プリンタ業界で既にIPP対応プリンタが製造され, 市場に提供されているという背景の下に, TR公表を急ぐ必要があったので, IETFのInternet-DraftをTRの原規定(翻訳対象)として採用した(TR X 0024:1999の解説3.を参照)。

その後, IETFで検討が進み, 2000年9月に, RFC2911,Internet Printing Protocol 1.1: Model and Semanticsが公表された。そこで, 電子出版技術調査研究委員会のWG1は, それと, TR X 0024:1999の原規定であるInternet Printing Protocol 1.1: Model and Semantics (draft-ietf-ipp-model-v11-02.txt)との差異を調査して, RFC2911の翻訳に着手し, TR X 0024の改正原案を2001年8月に経済産業省に提出した。

2. 審議中の主要検討課題

2.1 訳語

この標準情報(TR)で採用した主な訳語を次に示し, 今後のIPP関連規定の翻訳に際しての参考とする。

解説表2.1 訳語一覧
原語訳語
abort中断
access control policyアクセス制御方針
access control violationアクセス制御違反
administrative policy管理方針
archive書庫
arrange配列
authentication認証
authorization credential認定信任
authorization policy認定方針
automatic staple action自動ステープル止め動作
cancel取消し
cardinality基数
companion attributes付随属性
component構成要素
credential信任状
cross feed direction主走査方向
denial-of-service attackサービス否認攻撃
deployed普及する
detectable探知できる
distribute分配
eavesdropping盗み見
enforcement実施
equality同等性
fan outファンアウト
feed direction副走査方向
filtered search絞込み検索
finishing仕上げ
generate生成する
generated発生された
geometric幾何
hold保留
identification識別
identity識別性
imager画像装置
impose組み付ける
impressions刷り
interrogate質問する
invocation起動
IPP Registration ProposalIPP登録提案
job sheetジョブシート
landscape document用紙横使い文書
linkage連動
malformed syntax形のくずれた構文
malicious document content悪意のある文書内容
markerマーカ
middle fold中央折り
mixed-case大文字小文字が混在した
n-tiern段の
on-the-wire回線上の
orientation-requested用紙の向き
out-of-band value範囲外の値
output bin排紙棚
outstanding未解決の
override上書きする
pause一時停止する
persistent永続的な
picks採用する
place配置
populate組み込む
portrait document用紙縦使い文書
pre-drilled media穴あけ済みメディア
pre-pend前付けする
print-stream印刷ストリーム
proxy代理人
purge破棄する
query問合せ
redirectリダイレクトする
reference back戻り参照
reject拒絶する
release解放
remote entity遠隔実体
replaying再生
repositoryレポジトリ
restart再始動
resume再開
retain保管する
reverse-landscape逆用紙横使い
search criteria探索基準
secure channel安全チャネル
security attackセキュリティ攻撃
security measureセキュリティ尺度
security policyセキュリティ方針
shared work-group printer共有作業グループプリンタ
spammingスパム
spoolerスプーラ
stapleステープル止めする
tampering勝手にいじる
threat脅威
time tick時間刻み
underlying configurations基本構成
validation有効性確認
web page publisherウェブページ発行者
wire stitch針金の綴じ


2.2 章・節構成

IETFの規定は, 必ずしもJIS又は標準情報(TR)の様式には整合していないため, 整合化の対応が必要である。しかしTRの読者が原規定を参照する際の便を考慮すると, 章・節構成及び章・節の順序表示はなるべく原規定のそれらを保存することが望まれる。そこで, 次に示すだけの修正を施して, この標準情報(TR)を構成した。

2.3 その他の翻訳表記上の配慮

原規定は, プレーンテキストとして記述されている。この標準情報(TR)はそれに最小限のHTMLタグを付けて読み易さ及び交換性を向上させた。その際に次の配慮を施してある。

3. 懸案事項

RFC2911, Internet Printing Protocol 1.1: Model and Semanticsと同時に公表された, RFC 2910, Internet Printing Protocol 1.1: Encoding and Transportに基づく, TR X 0017の早期改正が望まれる。この翻訳作業は, 電子出版技術調査研究委員会のWG1において現在進行中である。

IPPは, ISO/IEC JTC1/SC18で開発されたDPA(ISO/IEC 10175 Document Printing Application)のlight weight版に位置付けられ, その詳細理解には, DPAの参照が望まれる。DPAへの参照を容易にするためには, DPAのJIS化が望まれる。

4. 原案作成委員会

この標準情報(TR)原案を作成した(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の電子出版技術調査研究委員会及び作業グループWG1の委員構成を, それぞれ解説表4.1, 解説表4.2に示す。

解説表4.1 電子出版技術調査研究委員会
氏名所属
(委員長)池田 克夫大阪工業大学
(幹事)小町 祐史松下電送システム株式会社
(幹事)大久保 彰徳株式会社リコー
(幹事)長村 玄株式会社ドキュメント・エンジニアリング研究所
(幹事)高沢 通大日本スクリーン製造株式会社
(幹事)内山 光一株式会社東芝
礪波 道夫日本新聞協会(読売新聞社)
小笠原 治社団法人日本印刷技術協会
木戸 達雄経済産業省産業技術環境局
(オブザーバ)高橋 昌行経済産業省産業技術環境局
(オブザーバ)有木 靖人日本新聞協会
(事務局)内藤 昌幸財団法人日本規格協会

解説表4.2 作業グループ WG1
氏名所属
(主査)小町 祐史松下電送システム株式会社
(幹事)内山 光一株式会社東芝
(幹事)大久保 彰徳株式会社リコー
奥井 康弘株式会社日本ユニテック
海田 茂ネクストソリューション株式会社
内藤 広志大阪工業大学
矢ケ崎 敏明キヤノン株式会社
海田 茂ネクストソリューション株式会社
長村 玄株式会社ドキュメント・エンジニアリング研究所
(オブザーバ)浅利 千鶴浅利会計事務所
(オブザーバ)高橋 昌行経済産業省産業技術環境局
(事務局)内藤 昌幸財団法人日本規格協会