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標準情報 TR X 0005-1998

Java言語規定 解説



1. 公表の趣旨及び経緯

Javaは, 主として家電製品のソフトウェアのための, コンパクトでアーキテクチャ非依存なプログラム言語として開発され, その後, Web環境におけるさまざまな計算機に適用できるプログラム言語として注目された。さらにJavaアプレットをサポートしたブラウザの登場によって, 対話的に動くコンテンツを容易に提供できることが多くの利用者に視覚的に確認され, その普及が加速されることになった。Java言語規定1)の内容は, Sun Microsystems, Inc.のWebに公開され, 環境の整備とともに規定内容の更新を継続している。

このように頻繁に改訂される可能性があるが, 我が国の技術革新にとって重要と判断される技術に対応するため, 標準情報(TR)の制度を制定した通商産業省は, Java言語規定の標準情報化の重要性を認識し, 1995年度末に, 既にマルチメディア/ハイパメディアの標準化に関する調査研究を開始していた(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)のマルチメディア/ハイパメディア調査研究委員会のメンバと共に日本サン・マイクロシステムズ(株)を訪れて, 打診を開始した。

日本サン・マイクロシステムズ(株)の快諾を確認した後, 通商産業省の工業技術院は, マルチメディア/ハイパメディア調査研究委員会に対して, Java言語規定の標準情報(TR)の原案作成を委託した。これを受けてマルチメディア/ハイパメディア調査研究委員会は, その作業グループWG2の中にマルチメディア/ハイパメディア対応言語小委員会(SWG)を設立し, 日本サン・マイクロシステムズ(株)を含む各社からの専門家の参加を得て, 1996年度の始めから, Java Language Specification, version 1.0の翻訳作業に着手した。

Java言語規定の翻訳原案(TR原案)は, 1996年度末に工業技術院に提出され, 1997年6月の情報部会で審議された。そこで原案の技術内容は承認されたが, その出版方法について多くの議論が行われた。ちょうどその当時, ISO/IEC JTC1において, Sun MicrosystemsのPAS投票が行われており, その成り行きが注目を集めていた。そこで, このTR原案の出版方法はPAS投票の結果に依存するとの判断があり, “1997年9月の情報部会までにPAS投票が承認されていれば, 原案をJISにして出版し, そうでなければ標準情報(TR)として出版する”との方針が情報部会の決定となった。

その間にもメディア/ハイパメディア調査研究委員会は, 1997年度の作業グループWG4において, TR原案の見直しを継続し, 編集上の修正によって原案をより洗練された内容にする活動が続けられた。

1997年9月の情報部会の段階では, PAS投票の結果は完全には確定してなく, 原案審議は1997年11月の情報部会に延期されて, そこで標準情報 TR X 0005としての出版が決定された。その際に, 関連する分散オブジェクトの実現技術におけるJavaの位置付けを示す記述の追加によって, この標準情報(TR)の有用性を高めることが求められ, TR X 0005第4章にJava言語規定を位置付けることが勧告された。

原案作成委員会は, この勧告に従ったTR X 0005改訂原案の第1章第3章を1998年1月に完成し, 既に承認済みのJava言語規定(第4章)と共に, 工業技術院へ提出した。

2. 審議中の主要検討課題

2.1 Sunによるレビュー

既に解説の1.に示したとおり, Java言語規定の翻訳原案は1996年度末に完成していたが, その出版方法に関する多くの議論によって, この標準情報(TR)の出版が遅れることになった。原案作成委員会は, 一貫して早期出版こそ標準情報(TR)の本来の価値を示すものであるとの立場をとり, 主張を行った。

これは次の判断に基づく。たとえPAS投票が承認されても, Java Language Specificationが国際規格になるまでには1年近くかかり, それ以前に標準情報(TR)として出版することは, 多くのJava利用者による日本語での詳細レビューを可能にする。このレビューの結果, 提出されるコメントがあれは, それを国際規格に反映することもでき, したがってその翻訳のJISの完成度を高めるのに寄与できる。

原案作成委員会の活動そのものは, 通商産業省のJava言語規定の標準情報化提案に対する日本サン・マイクロシステムズ(株)の快諾と委員参加によって, 開始したが, 正式な出版許諾については, 米国のSun Microsystems, Inc.に対して規格協会が1997年始めから接触を開始し, その後, 関係者による会合がもたれた。Sun Microsystemsも標準情報(TR)出版に積極的であり, 翻訳原案に対する同社によるレビューを求めてきた。

そのレビュー結果を待ってからの出版になると, さらに出版時期が遅れる可能性がある。そこで日本規格協会は, 同社に対して標準情報(TR)の意義を伝え, 標準情報(TR)の出版そのものが将来のJISに対するレビューであることを理解いただいて, 標準情報(TR)の原案段階から同社にその内容を提示してコメントを求めると共に, その出版後にもレビュー結果のコメントを受けることで合意を得た。

2.2 バグレポートの扱い

翻訳の対象となったJava Language Specification, version 1.0に関しては, 1997年6月にバグレポート2)が公表された。しかしこれはあくまでも非公式としての扱いであったため, この標準情報(TR)の内容にそれを反映させることはしなかった。

3. 原規定との比較

原規定には, 規定執筆者の感想及びメモが記されている箇所がある。これらの内容は, 標準情報(TR)としては不必要であるため, 削除している。

この標準情報(TR)は, Java Language Specification, version 1.0のHTML版を翻訳して, それを記述するHTMLタグをそのまま保存したフォーマットの日本語Web版として記録されている。出版された標準情報(TR)は, その日本語Web版をHTMLブラウザによって印刷した出力であり, その際のフォーマティングパラメタの設定に基づく原規定のハードコピー版3)との差異は存在する。

4. 懸案事項

この標準情報(TR)のWeb版は, 原案作成段階では幾つかのWeb上に置かれ, それに対して原案作成委員によるレビュー及び修正が繰返された。解説の3.に示すとおり, その原案はSun Microsystems, Inc.によってもレビューいただくことになっており, 次に示すWebを同社に通知して, 頻繁に更新される原案に対する同社によるレビューを容易にした。

http://www.y-adagio.com/public/standards/tr_javalang/index.htm
このレビューは今後も継続され, 必要に応じてコメントに基づく内容修正を行う。

5. 参考文献

1) The Java Language Specification (http://java.sun.com/docs/books/jls/index.html)
2) Errors and omissions in the Java Language Spesification 1.0 (http://www2.vo.lu/homepages/gmid/java-1.0spec-bugs.htm)
3) J. Gosling, B. Joy and G. Steele, The Java Language Specification, Sun Microsystems, Inc., 1996

6. 原案作成委員会

この標準情報(TR)原案を作成した(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)のマルチメディア/ハイパメディア調査研究委員会の委員構成を示す。さらに, その1996年度の原案作成を担当した作業グループ(WG2)及びM/H対応言語小委員会(SWG)の委員構成, 並びに1997年度の原案作成を担当した作業グループ(WG4)の委員構成を, その順に次に示す。

マルチメディア/ハイパメディア調査研究委員会
氏名所属
(委員長)池田 克夫京都大学
(幹事)鯵坂 恒夫和歌山大学
(幹事)小町 祐史松下電送株式会社
(幹事)藤村 是明電子技術総合研究所
植田 信吾株式会社グラフィックス・コミュニケーション・ラボラトリーズ(1996年度)
内山 光一株式会社東芝(1997年度)
兼谷 明男通商産業省工業技術院標準部(1996年度)
菊地 紀芳株式会社東芝(1996年度)
久保田 靖夫大日本印刷株式会社
黒川 利明日本アイ・ビー・エム株式会社(1997年度)
神野 俊昭株式会社日立製作所(1996年度)
斎藤 伸雄凸版印刷株式会社
澤田 位財団法人日本規格協会
滝川 啓NTTソフトウェア株式会社
田畑 孝一図書館情報大学
橋爪 邦隆通商産業省工業技術院標準部(1997年度)
長谷川 敬太日本電信電話株式会社
二本松 勝株式会社日立製作所(1997年度)
平山 亮ヒューレット・パッカード日本研究所
振角 秀行通商産業省機械情報産業局
古瀬 幸広国際大学グローバルコミュニケーションセンター
松本 充司早稲田大学(1997年度)
柳町 昭夫日本放送協会放送技術研究所
オブザーバ掘 純一郎日経BP社(1997年度)
(事務局)仁保 信市財団法人日本規格協会(1996年度)
(事務局)山中 正幸財団法人日本規格協会(1997年度)


1996年度の作業グループ(WG2)
氏名所属
(主査)小町 祐史松下電送株式会社
(幹事)滝川 啓NTTソフトウェア株式会社
石川 則夫通商産業省機械情報産業局
内山 光一株式会社東芝
北野 敬介日本サン・マイクロシステムズ株式会社
久保田 靖夫大日本印刷株式会社
黒川 利明株式会社CSK
郡山 龍株式会社アプリックス
澤田 位財団法人日本規格協会
西尾 高典株式会社日立製作所
古瀬 幸広国際大学グローバルコミュニケーションセンター
湯原 孝志通商産業省工業技術院標準部
小田 宏行通商産業省工業技術院標準部
(事務局)仁保 信市財団法人日本規格協会


1996年度のM/H対応言語小委員会(SWG)
氏名所属
(主査)小町 祐史松下電送松下電送株式会社
(幹事)滝川 啓NTTソフトウェア株式会社
石川 則夫通商産業省機械情報産業局
内山 光一株式会社東芝
北野 敬介日本サン・マイクロシステムズ株式会社本部
久保田 靖夫大日本印刷株式会社
黒川 利明株式会社CSK
郡山 龍株式会社アプリックス
澤田 位財団法人日本規格協会
西尾 高典株式会社日立製作所
古瀬 幸広国際大学グローバルコミュニケーションセンター
湯原 孝志通商産業省工業技術院標準部
小田 宏行通商産業省工業技術院標準部
(事務局)仁保 信市財団法人日本規格協会


1997年度の作業グループ(WG4)
氏名所属
(主査)小町 祐史松下電送株式会社
(幹事)内山 光一株式会社東芝
上村 圭介国際大学グローバルコミュニケーションセンター
北野 敬介日本サン・マイクロシステムズ株式会社
黒川 利明日本アイ・ビー・エム株式会社
郡山 龍株式会社アプリックス
澤田 位財団法人日本規格協会
山東 滋株式会社日立製作所
田中 義之通商産業省機械情報産業局
仁保 信市株式会社東芝
乃木 篤株式会社CSK
湯原 孝志通商産業省工業技術院標準部
オブザーバ浅利 千鶴浅利会計事務所
オブザーバ滝川 啓NTTソフトウェア株式会社
オブザーバ塚本 享治電子技術総合研究所
オブザーバ古瀬 幸広立教大学
オブザーバ吉川 徹志通商産業省機械情報産業局
(事務局)山中 正幸財団法人日本規格協会


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