標準情報(TR)   TR X 0047:2001


XMLによる画像参照交換方式

Picture Reference Exchange by XML



序文

この標準情報(TR)は,日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)に設立された次世代ネットワークの標準化に関する調査研究委員会で,2000年度に行われた調査研究をもとに,工業標準化の促進に関連して特に重要と判断される技術情報をまとめ,標準情報(TR)(タイプU)として公表するものである。


1. 適用範囲

この標準情報(TR)は,XMLを用いて共有される画像データへの参照情報を交換する言語を規定する。

 参考 画像データには,利用者間で共有されるシンボルを示すものがある。これらのシンボルを検索(シンボルの属性情報を得るのではなく, 文書中のシンボルの同一性を判定する)したいという要求はしばしば生じるが,同じ概念を示すシンボルが常に同一のファイル名又は[URI]を示すわけではなく,事実上,そのままでは検索することができない。同じ概念を示すシンボルであっても,それを表示するデバイスの性能に合わせて,解像度又は形式の異なる複数のファイルを用意することもある。その意味でも,ファイル名又は[URI]によらない識別方法に対する要求が存在する。

この標準情報(TR)で規定される画像データは, 他の画像データと識別するために, 一意の名前をもつ。この名前を利用者間で共有することによって, 異なる文書に含まれる画像データの同一性の判定を可能とする。

 参考 この標準情報(TR)は,画像データの名前を利用する枠組みを規定し, 画像データの名前は規定しない。

画像データ情報を含む情報交換用のXML文書には, 画像データの名前を記述する。この標準情報(TR)では, 画像データの名前をXML文書の中で指定するための言語を規定する。

 参考 この言語は, 他のXML語い(彙)と併用することを前提する。そのため, この言語だけでXML文書を記述することはできない。

画像データの名前と画像データ本体(複数)との関係を記述する言語も規定する。


2. 引用規定

次に示す規格などは, この標準情報(TR)の文中での引用によって, この標準情報(TR)の規定の一部となる。標準情報(TR)については最新版を適用する。RFCが他のRFCによって置き換えられた場合は,新しいRFCを適用する。

[ISO/IEC 10036] ISO/IEC 10036:1996, Information Technology -- Font information interchange -- Procedures for registration of font-related identifiers

[JIS X 4172] JIS X 4172:1998 SGML公開テキスト所有者識別子

 備考 ISO/IEC 9070:1991, Information Technology -- SGML support facilities -- Registration procedures for public text owner identifiers が, この規格に一致している。

[GIF] GRAPHICS INTERCHANGE FORMAT(sm) Version 89a, CompuServe Incorporated, Columbus, Ohio, 1990-07-31

[IETF RFC 2046] IETF(Internet Engineering Task Force) RFC 2046, Multipurpose Internet Mail Extensions (MIME) - Part 2: Media Types, 1996

[ISO/IEC 10646] ISO/IEC 10646-1:2000, Universal multi-octet character set - UCS - Part 1: Architecture and Basic Multilingual Plane

 備考 JIS X 0221[国際符号化文字集合(UCS)-第1部 体系及び基本多言語面]-1995が, この国際規格に対応(三つの附属書を付加)している。

[JPEG] JPEG File Interchange Format Version 1.02, http://www.ijg.org/, 1992-09-01

[PNG] W3C(Worlde Wide Web Consortium) Recommendation, PNG (Portable Network Graphics) Specification Version 1.0, 1996-10-01

[TR X 0008] 標準情報 TR X 0008:1999 拡張可能なマーク付け言語(XML) 1.0

 備考 W3C(Worlde Wide Web Consortium) Recommendation, Extensible Markup Language (XML) 1.0, 1998, http://www.w3.org/TR/REC-xml が, この標準情報(TR)に一致している。

[TR X 0023] 標準情報 TR X 0023:1999 XML名前空間

 備考 W3C(Worlde Wide Web Consortium) Recommendation, Namespaces in XML, 1999, http://www.w3.org/TR/REC-xml-names が, この標準情報(TR)に一致している。

[TrueType] TrueType Open Font Specification Version 1.0, Microsoft Corporation, 1995-07

[IETF RFC 2396] IETF(Internet Engineering Task Force) RFC 2396, Uniform Resource Identifiers (URI): Generic Syntax and Semantics, 1997-11-18.


3. 定義

3.1 参照画像 (Referenced Picture)

この標準情報(TR)の規定によって参照される画像。RPと略記する。


3.2 参照画像データ名 (RP Name)

参照画像を特定するための名前。[JIS X 4172]の手続きで登録されるSGML公開識別子の中で,何らかの画像情報に対して与えられた識別子を使用する。[ISO/IEC 10036]の手続きで登録されるGlyphsに対する識別子を使用してよい。

 参考 この規定は,[JIS X 4172]の手続きによって登録可能な画像情報として,[ISO/IEC 10036]で登録されるGlyphsが存在していることを示すと同時に,将来的にこれ以外の画像関連情報が追加される可能性があることを示す。

4. 適合性

この標準情報(TR)への適合性を主張する場合は,画像データ参照言語を使用しなければならない。しかし,画像データに関する定義を入手する手段は規定しないため,参照画像データ情報言語で記述された情報を用いてもよいし,自然言語などで記述された情報を用いても良い。

5. 画像データ参照言語

5.1 機能

画像データ参照言語は, [TR X 0008]及び[TR X 0023]に従ったXML文書に参照画像データ名を指定する。

画像データ参照言語を短縮して, XPRと略記する。この言語による記述を含むXML文書を, XPR文書とよぶ。


5.2 言語規定

名前空間名は, "http://www.xml.gr.jp/xmlns/PRE/Reference"とする。文字列中に参照画像データを記述するために使用する。


5.2.1 name属性

<!ATTLIST AnyElement name CDATA #REQUIRED>

 備考 この標準情報(TR)では, 表記の便宜上DTDの構文を使用しているが, 実際に記述する場合には, 必要に応じて属性には名前空間接頭辞を付加する。AnyElementは, 要素名は何でもよいことを示す。以降のDTD表記も同じとする。

name属性は, その属性が付加された要素が参照画像データを参照していることを示す。name属性の値には, 参照画像データ名を記述する。name属性の値は, [TR X 0008]の属性に関する規定に従う。

name属性は,主に参照画像の検索の目的に使用されるものであり,表示,印刷を意図するシステムは,name属性を読み飛ばす。しかし, システムが,参照画像の表示・印刷用の情報を保持していたり,問い合わせる機構をもっている場合には,name属性をもつ要素及びその下位の要素をすべて無視し,その代わりにシステムが用意した画像データを表示してもよい。

 参考1 この規定は,標準的な画像データでは適切に表示できないデバイスを利用する場合,より高品位の画像データを特定のシステムで利用するときに限って適用する場合などを想定して設けている。

 参考2 次に, XHTML 1.0と併用した場合の記述例を示す。name属性の内容に含まれる番号はダミーであり,この例で使用された画像データが,この番号に登録されているわけではない。

<body xmlns:xpr="http://www.xml.gr.jp/PRE/Reference">
<p><img xpr:name="ISO/IEC 10036/RA//Glyphs:123456789"
src="http://www.mojikyo.gr.jp/gif/003/003290.gif"
alt="吉(上が土)" />田茂は昭和21年より5次に渡る内閣を組閣した。</p>
</body>


6. 参照画像データ情報言語

6.1 機能

参照画像データ情報言語は, XML 1.0を規定する[TR X 0008]及びXML名前空間を規定する[TR X 0023]を用いて, 参照画像データに関する表示情報を記述する方法を記述する。

参照画像データ情報言語を短縮してXPDと略記する。この言語で記述されたXML文書を, XPD文書とよぶ。

 参考 参照画像データ情報言語は,ある参照画像データ名が指し示す画像に関する具体的な内容を記述するために使用される。画像データ参照言語を用いてオーサリングを行う場合には,XPD文書を入手することによって,ある参照画像データ名が指し示す画像の詳細な内容を把握することができる。


6.2 言語規定

参照画像データ情報言語で規定される要素および属性の名前空間名は, xml:lang属性を除き,"http://www.xml.gr.jp/xmlns/PRE/Information"とする。


6.2.1 definition要素

<!ELEMENT definition (annotation?,visual+,inputAssist*)>
<!ATTLIST definition name CDATA #REQUIRED>

definition要素は, 一つの参照画像データに関する情報を記述する要素とする。 definition要素は, XPD文書のルート要素とする。 name属性は, 参照画像データ名を記述する。


6.2.2 annotation要素

<!ELEMENT annotation (documentation)*>

annotation要素は, 参照画像データに関する注釈を記述する要素とする。 注釈本文は, documentation要素によって記述する。


6.2.3 documentation要素

<!ELEMENT documentation (#PCDATA)?>
<!ATTLIST documentation source   CDATA #IMPLIED
                        xml:lang CDATA #IMPLIED >

documentation要素は, 参照画像データに関する注釈の本文を記述する要素とする。 source属性が記述された場合, source属性は注釈を記述した文書を参照するURIを記述する。URIは, [IETF RFC 2396]によって規定される。source属性が記述されている場合は, documentation要素の子のテキストは無視される。

xml:lang属性は, 注釈がどの自然言語で記述されているかを明示的に指定する。xml:lang属性は, [TR X 0008]において規定されている。


6.2.4 visual要素

<!ELEMENT visual (owner,(img|font))>
<!ATTLIST visual priority CDATA #REQUIRED
                 permitCopyFlag CDATA #REQUIRED>

visual要素は, 参照画像データを一つ定義する要素とする。 priority属性は, 複数のvisual要素間の優先順位を決定する手助けとなる情報を提供する。priority属性は, 10進数で記述された1〜32767の範囲の整数をもつ。参照画像データを利用するアプリケーションは, 利用可能なvisual要素の中で, priority属性の値が最も小さなものを選択して利用できる。priority属性の値は参照してもよく, 参照しなくてもよい。

permitCopyFlag属性は, ファイルの自由なコピーが許可されているか否かを指定する。その値は, true又はfalseをとる。trueの場合は, img又はfont要素によって指定されたファイルにアクセスし, これを利用して出力できる。falseの場合は, 何らかのライセンス手続きを取らなければimg又はfont要素で指定されたファイルにアクセスすることはできないことを示す。ライセンス手続きは, それぞれのファイルの提供者と利用者との間で協議する課題であって, この標準情報(TR)では言及しない。


6.2.5 owner要素

<!ELEMENT owner (#PCDATA)>
<!ATTLIST owner mailaddress CDATA #IMPLIED>

owner要素は, 画像データの所有者の名前を自然言語で記述する。 mailaddress属性は, 所有者の連絡先電子メールアドレスを記述する。

 参考 owner要素の子要素としては, mailaddress要素だけが規定されているが, 必要に応じて,もっと詳細な個人情報記述言語の要素を,owner要素の子要素として記述してよい。


6.2.6 img要素

<!ELEMENT img EMPTY>
<!ATTLIST img src CDATA #REQUIRED>
              width CDATA #IMPLIED
              height CDATA #IMPLIED
              ContentType CDATA #IMPLIED>

img要素は, [JPEG],[PNG],[GIF]のいずれかの形式の画像ファイルを参照する画像データを参照する要素とする。

 参考 [GIF]は, 既存のリソースを利用する場合を配慮して利用を許す。特に理由がなければ[GIF]ではなく,[PNG]の使用を推奨する。

src属性は,画像データを指し示すURIを記述する。URIは[IETF RFC 2396]によって規定される。 width属性は,画像データのサイズが固定されている場合に,幅を表す画素数を10進数の数値で記述する。 height属性は,画像データのサイズが固定されている場合に,高さを表す画素数を10進数の数値で記述する。 ContentType属性は,画像データのメディア型を記述する。メディア型は,[IETF RFC 2046]によって規定される。この属性に記述することが許されるメディア型は,次の値に限定される。[JPEG]の場合はimage/jpegを,[PNG]の場合はimage/pngを,[GIF]の場合はimage/gifを指定する。

 参考 width属性,height属性,ContentType属性は,実際にsrc属性で示されるURIに要求を出せば取得できる。しかし,複数のvisual要素の中から最適な画像データを選ぶ際に,実際に利用しないすべての画像データを取得する要求を行うことは,無駄であるので,画像データ選択の判定で重要な役割をもつ情報を,XPD文書中にあらかじめ含め,無用なトラフィックの増加を抑える。これらの属性はオプションであり,記述するかどうか,利用するかどうかは利用者の判断による。


6.2.7 font要素

<!ELEMENT font EMPTY>
<!ATTLIST font src CDATA #REQUIRED
               face CDATA #REQUIRED
               codePoint CDATA #REQUIRED>

[TrueType]形式のファイルを画像データとして使用する場合に記述する。 src属性は,フォントファイルのURIを指定する。URIは[IETF RFC 2396]によって規定される。 face属性は,フォントに含まれる書体名のうち,目的のグリフを含む書体名を指定する。 codePointは,目的のグリフを含む符号位置を指定する。書式は"U+x"形式とする。先頭の2文字は, 必ず"U"(U+0055), "+"(U+002B)とする。 3文字目以降は, 0(U+0030)〜9(U+0039), A(U+0041)〜F(U+0046), a(U+0061)〜f(U+0066) の範囲内の文字を任意の桁数並べたものとする。

 参考 フォントは通常,符号化文字集合に対して具体的な字形画像表示情報を与えるために使用されるが,符号化文字集合とは無関係に画像を割り当てているフォントも存在する。font要素は,これらのフォントを参照する。