標準情報 TR X 0020:2000

ニュース情報交換のための文書型定義 解説



1. 公表の趣旨及び経緯

1.1 公表の趣旨

ニュース情報はほとんどの国民が日々接する大量情報であるが, これまでは新聞でも放送でもプレゼンテーション情報になった最終形式で利用者に届けられてきた。しかしインタネット及びディジタル放送の利用により, 利用者レベルでの多様なニュース情報の閲覧形態がサポート可能になり, SGML(Standard Generalized Markup Language, 標準一般化マーク付け言語)などによって構造化したデータとしてマルチメディアのニュース情報を交換することが強く望まれている。

この標準情報(TR)は, この要求に応えるものであり, ニュース情報の配信業者だけでなく, ニュース情報の受け手(最終閲覧者, 二次利用者), 及びニュース情報ブラウザの提供者に対して, ニュース情報の構造を明らかにして, その交換性及び再利用性を高めることを目的として開発された。SGMLの記法を用い, その文書型定義(Document Type Definition, DTD)によってニュース情報の構造を規定する。

1.2 公表の経緯

社団法人日本新聞協会技術委員会の制作部会は, 更新時における機種選択の自由度の確保及びコストダウン, 他産業分野への標準対応などのCTS関連の標準化について検討を行ない, その一環として"SGML等利用研究会"を実務者20名で1996年1月に発足させた。このSGML等利用研究会は, CD-ROM, インタネットなどの各種メディア及び他産業分野にデータ提供する際の標準様式にSGMLに代表される文書記述言語を利用する可能性を探り, 次のステップとして組版データのSGML化について調査研究を行うことを主な目的とした。

1996年度の活動においては, SGMLの利用形態, SGMLによる集配テキストの表現方法, アメリカ新聞協会が提案しているNITFについて検討を行い, 同年11月には, 中間報告の形で文書構造の要素ツリー図第1版を完成し, 制作部会に報告した。これは, SGML等利用研究会のメンバ各社から提案された要素をすべて取り込んだものであったが, 制作部会で多くのコメントを受け, その後は, 対象文書を実際の配信電文に絞って検討を続けた。

この検討成果は報告書1)としてまとめられ, 1998年12月には対外的(XMLセミナー, 1998-12-08)にも報告された。その段階で, ニュース情報が極めて多くの利用者をもつことから, 公的な文書として公開されることの必要性が議論2)されることになり, (財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の電子出版技術調査研究委員会と協同して標準情報(TR)としての公表の検討3)が進められた。電子出版技術調査研究委員会は, 工業技術院と緊密な連絡をとり, 1999年度から同委員会に作業グループWG3を設置して, そこでさらにニュース情報のTR化の検討4)を行うことになった。

このTRの幅広い適用範囲を考慮し, ニュース情報に関連するさらに多くの業者及び利用者のレビューを受けるために, 新聞協会は, 新聞, 放送, 通信関係各社に連絡して, 1999年8月に"ニュース情報交換のための文書型定義の標準情報化に関する説明会"を開催し, TR素案の内容説明を行い, 参加いただいた33社の44人に対して検討及びコメントの提出を依頼した。

電子出版技術調査研究委員会は, その構成メンバの中でTR素案のレビューを行うと共に, ディジタル放送のためのデータ構造をW3C(World Wide Web Consortium)と共に検討している国際大学グローバルコミュニケーションセンターのWWVI(World Wide Vision Initiative)の技術委員会にTR素案を紹介してレビューを依頼した。

それらの結果得られたコメントを反映したTR原案は, 1999年11月に完成し, 電子出版技術調査研究委員会から工業技術院に提出された。

2. 審議中の主要検討課題及び懸案事項

2.1 XMLの導入

SGMLは, 特にWeb環境での利用を重視したXML(Extensible Markup Language)としてその利用者が拡大し, さまざまなXMLツールが開発されると共に無料で配布され始めている。

そこでニュース情報の最終利用者にとっての利便性を考慮すると, ニュース情報の記述もXMLのDTDによって行われることが望まれる。これまでの研究成果をもとに, 既に, XMLによって記述したDTDの例を附属書Cに示しているが, 今後のXML及び電子化ニュース情報の普及を考慮して, この標準情報(TR)の改正に際して, XMLの全面的導入を検討する必要がある。

2.2 フォーマット電文

附属書Dのフォーマット電文については, 特に利用者の多いプロ野球電文を取り上げて, そのDTDをD.1に示した。今後は, 選挙電文, 人事電文などの利用者要求の強いものから優先的に追加していくことが望まれる。

3. 参考文献

1) 日本新聞協会 技術委員会, SGML等利用研究会活動報告, 1997-05

2) 日本新聞協会 技術委員会, 第2期SGML等利用研究会活動報告, 1999-06

3) 日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC), 平成10年度(1998年度) 電子出版技術調査研究委員会報告書, 1999-03

4) 日本新聞協会, 新聞製作技術用語集, 1990-06

4. 原案作成委員会

この標準情報(TR)原案を作成した(社)日本新聞協会 技術委員会制作部会の SGML等利用研究会, 並びに(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の 電子出版技術調査研究委員会及び作業グループWG3の委員構成を, その順に次に示す。

SGML等利用研究会
氏名所属
(幹事)礪波 道夫読売新聞社
(副幹事)小野寺 尚希毎日新聞東京本社
(副幹事)榎本 宏幸東京新聞
(委員)岩下 毅朝日新聞東京本社(1996.1〜1997.5)
齋藤 恭之朝日新聞東京本社(1997.9〜1998.3)
佐藤 知直朝日新聞東京本社(1998.4〜1999.3)
後藤 浩二朝日新聞東京本社(1999.4〜)
藤田 雅巳日本経済新聞社(1996.1〜1997.5)
塩川 浩記日本経済新聞社(1997.9〜)
鬼頭 知義産経新聞東京本社
小堀 弘治報知新聞社
梶川 悟日刊スポーツ新聞社(1996.1〜1999.4)
上野 耕太郎日刊スポーツ新聞社(1999.5〜)
井上 忠幸共同通信社
杉目 覚時事通信社(1996.1〜1997.5)
津吉 文彦時事通信社(1997.9〜1999.5)
西村 利則時事通信社(1999.8〜)
安藤 久泰産経新聞大阪本社
太田 圭一北海道新聞社(1996.1〜1997.5)
山口 康彦北海道新聞社(1997.9〜)
高橋 和幸河北新報社
丸野 暢久神奈川新聞社(1997.9〜)
八木 一昌静岡新聞社
鈴木 政彦中日新聞社(1996.1〜1997.5)
山田 吉孝中日新聞社(1997.9〜1999.4)
山尾 信二中日新聞社(1999.5〜)
児玉 義則中国新聞社(1996.1〜1997.5)
本条 英彰四国新聞社(1996.1〜1997.5)
中村 寿徳四国新聞社(1997.9〜)
筒井 正高知新聞社
塩崎 真治西日本新聞社
河合 日出男熊本日日新聞社(1997.9〜)
藤崎 英世南日本新聞社
(オブザーバ)加藤 博之株式会社NTTデータ(1996.11〜)

 備考 SGML等利用研究会は, 調査研究に際して, 次の企業・個人から助言・協力を得た。


電子出版技術調査研究委員会
氏名所属
(委員長)池田 克夫京都大学
(幹事)小町 祐史松下電送システム株式会社
(幹事)大久保 彰徳株式会社リコー
(幹事)長村 玄株式会社ドキュメント・エンジニアリング研究所
(幹事)高沢 通大日本スクリーン製造株式会社
(幹事)礪波 道夫日本新聞協会(読売新聞社)
(委員)内山 光一株式会社東芝
小笠原 治社団法人日本印刷技術協会
前沢 克俊大日本印刷株式会社
八田 勲通商産業省工業技術院標準部
(工技院)稲橋 一行通商産業省工業技術院標準部
(工技院)永井 裕司通商産業省工業技術院標準部
(オブザーバ)有木 靖人日本新聞協会
(事務局)大川 和司財団法人日本規格協会

作業グループ WG3
氏名所属
(主査)小町 祐史松下電送システム株式会社
(幹事)平山 亮金沢工業大学
(委員)安達 淳株式会社沖データ
今門 政記日商岩井インフォコム株式会社
内山 光一株式会社東芝
大久保 彰徳株式会社リコー
志田 智株式会社インターネット総合研究所
礪波 道夫日本新聞協会(読売新聞社)
長村 玄株式会社ドキュメント・エンジニアリング研究所
矢ケ崎 敏明キヤノン株式会社
(工技院)永井 裕司通商産業省工業技術院標準部
(オブザーバ)澤田 位財団法人日本規格協会
(オブザーバ)市川 孝アドビシステムズ株式会社
(オブザーバ)山本 太郎アドビシステムズ株式会社
(オブザーバ)有木 靖人日本新聞協会
(事務局)大川 和司財団法人日本規格協会