標準情報 TR X 0059:2002

XSLTライブラリ 解説



1. 公表の趣旨及び経緯

1.1 趣旨

XSL変換(XSLT)指定は, 通常, ソースのXML文書の文書型に対応したXSLTファイルとして記述される。それは, XSLTテンプレートの集合であって, 簡単な変換指定でもかなりの記述量が必要になることが多い。その記述内容には共通部分も多く含まれ, ライブラリ化が望まれていた。

しかしこれまで, 適切なライブラリ構成の提案はなく, サンプル記述が蓄積されるに止まっていた。

この標準情報(TR)は, サンプル記述ではなく, ライブラリとしてのXSLT記述を提供するものである。機能としては, 目次生成及び限られた機能の索引生成だけしか含まず, 決して充実したライブラリにはなっていないが, ここに示すライブラリ化の手法を使うことによって, 今後多くの機能に対応するライブラリが作成されることが期待される。

1.2 経緯

XSLTは, XSL(Extensible Stylesheet Language)と共にXML文書へのスタイル指定を標準的な方法で記述して, スタイル情報を保存した文書交換を可能にするものとして, W3C(World Wide Web Consortium)によって開発された。特にXSLTは, スタイル指定に先立ち, XML文書の構造変換を指定する言語として, XSLの規定本体から切り離された独立した規定として, XSLより早く公表された。

XSLTは, 既に幾つかの実装が発表され, 実運用が開始されている。XSLは, 最終的な勧告(Recommendation)がW3Cから公表される以前から, 実装が報告され, 解説書籍も出版されて, スタイル情報を保存した文書交換への強い要求と期待とが表面化している。

そこで, 財団法人日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の中に設けられた電子出版技術調査研究委員会は, 1999年度の活動としてXSLTの調査研究を行い, 2001年3月に標準情報(TR)の原案を完成して経済産業省産業技術環境局に提出した。これは, TR X 0048として2001年7月に公表されている。

電子出版技術調査研究委員会は, 2000年度からXSLTライブラリの検討に着手し, 2001年度末に標準情報(TR)の原案を完成して経済産業省産業技術環境局に提出した。


2. 審議中の主要検討課題

2.1 用語

この標準情報(TR)では, TR X 0048:2001[XSL変換(XSLT) 1.0]において規定されるXSLT関連用語を採用している。

2.2 ライブラリの提供

XSLTライブラリそのものは, 5.において示される。この標準情報(TR)のソフトコピー版では, 5.の下位見出しの()内に示すファイル名をクリックすることによって, そのファイルが得られる。

この標準情報(TR)のハードコピー版においては, 附属のフレキシブルディスクにこれらを含む解説表2.1のファイルが収録されている。

解説表2.1 附属フレキシブルディスクの内容
対応する規定箇所ファイル名
5.1 a) 目次生成ライブラリ file1.zip (xsltlib_toc.xsl)
5.1 b) 目次生成ライブラリの使用file2.zip (toc.xsl)
5.2 a) 索引生成ライブラリ file4.zip (xsltlib_index.xsl)
5.2 b) 索引生成ライブラリの使用file5.zip (index.xsl)
附属書 A. 目次生成サンプルXMLインスタンスfile3.zip (sample1.xml)
附属書 B. 索引生成サンプルXMLインスタンスfile6.zip (sample2.xml)
readme.txt


3. 懸案事項

現状のライブラリは, デスティネーションをHTMLにしており, 出力書式に関して自由度が低いものになっている。HTMLであることから, 抽出結果の再利用性も充分ではない。 本来ならば, ライブラリでデスティネーションのXMLボキャブラリ(目次, 索引等)を決めて, そこへの変換を行い, 実際のレンダリングは利用者に委ねるという機能分担が望ましい。

そのためには, ソース(XML) → XML → HTMLという2段階の変換が必要になる。しかし現状のXSLT 1.0には, これを1度に行なう仕組みがない。(ベンダー依存にすれば, 独自拡張機能を用いることによって実現は不可能ではないが, ある処理系への特化はライブラリには認められない。)

この制約は, XSLT 1.0のtree fragmentがnode setと同等には扱えないことに基づく。XSLT 1.1以降では, この制約はなくなることが期待される。この制約がなくなれば, 処理途中で作成した一時的なtreeを用いた変換が可能になり, 1回の処理の中でライブラリを呼び出して必要なtreeを新たに作成し, それをレンダリ ングすることが可能になる。


4. 原案作成委員会

この標準情報(TR)原案を作成した(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の電子出版技術調査研究委員会及び作業グループWG1の委員構成を, それぞれ解説表4.1, 解説表4.2に示す。

解説表4.1 電子出版技術調査研究委員会
氏名所属
(委員長)池田 克夫大阪工業大学
(幹事)小町 祐史松下電送システム株式会社
(幹事)大久保 彰徳株式会社リコー
(幹事)長村 玄株式会社ドキュメント・エンジニアリング研究所
(幹事)高沢 通大日本スクリーン製造株式会社
(幹事)内山 光一株式会社東芝
礪波 道夫日本新聞協会(読売新聞社)
小笠原 治社団法人日本印刷技術協会
木戸 達雄経済産業省産業技術環境局
(オブザーバ)高橋 昌行経済産業省産業技術環境局
(オブザーバ)有木 靖人日本新聞協会
(事務局)内藤 昌幸財団法人日本規格協会

解説表4.2 作業グループ WG1
氏名所属
(主査)小町 祐史松下電送システム株式会社
(幹事)内山 光一株式会社東芝
(幹事)大久保 彰徳株式会社リコー
奥井 康弘株式会社日本ユニテック
海田 茂ネクストソリューション株式会社
内藤 求株式会社シナジー・インキュベート
内藤 広志大阪工業大学
矢ケ崎 敏明キヤノン株式会社
長村 玄株式会社ドキュメント・エンジニアリング研究所
(オブザーバ)浅利 千鶴浅利会計事務所
(オブザーバ)佐々木 徹アクセリオジャパン株式会社
(オブザーバ)高橋 昌行経済産業省産業技術環境局
(オブザーバ)山田 篤財団法人京都高度技術研究所
(事務局)内藤 昌幸財団法人日本規格協会