ウェブの普及によって, ウェブ環境には大量のハイパ文書が蓄えられている。それらの文書へのアクセスを容易することは, ウェブ利用者にとっての大きな要求課題であり, 既にさまざまな対応が検討されている。
その一つの方策として, ハイパリンクをもつ電子文書においてインデクス対象を一貫性をもって記述し, 関連する文書セット及びそこでのインデクス対象としての共通トピックを識別するためのHyTimeの体系形式を規定し,関連するトピック間の関係を規定するというアプローチが, 1994年から始まったGCA(Graphic Communications Association)の"Conference on the Application of HyTime"において, トピックナビゲーションマップという名称で示された[1]。
この規定内容は, JTC1/SC18/WG8に提案され, さらにJTC1/SC34に引き継がれて, 2000年1月にISO/IEC 13250[2]として発行され, その後国内で翻訳されて, JIS X 4157[3]として制定されている。
このSC34における国際規格開発と並行して, ISO/IEC 13250のエディタであったMichel Biezunskiは, TopicMaps.Orgにおいて活動を行い, ウェブ環境への適用を容易にするXMLに基づくトピックマップの開発に着手した。それは, Steve Pepperらに引き継がれ, 2001年3月にXML Topic Maps (XTM) 1.0として公表され, さらに2001年8月に改訂されている。このXTMの活動は, GCA(2001年からIDEAlliance)が毎年USA及びヨーロッパで開催するXML Conferenceの大きな柱になっている。
これらの技術動向を踏まえ, 経済産業省は, (財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)に対して2001年度の活動として, XTM 1.0のTR化作業を委託した。INSTACでは"将来型文書統合システム標準化調査研究委員会(AIDOS)"がこの作業を担当し, 2001年8月版のXTMの翻訳を行い, 2002年2月にTR原案を提出している。
原規定の翻訳に際しては, その時既にJIS化のための翻訳作業が終わっていたISO/IEC 13250[2]の翻訳に用いた訳語, つまりJIS X 4157[3]の用語との整合に配慮した。
XTMにおいて新たに導入された用語である"reify"の訳語には, ソフトウェア工学などで使われる"具体化する"を用いた。"reify"は, 主題(subject)をトピックマップにおいてトピック(topic)として明確化することを意味する。そこで, ある種のモデル化を表現しているが, 必ずしも明確ではない主題を明確に具体的にすることを示すために, この訳語が適切と判断される。
"topic"は, カタカナで"トピック"と表記する立場を貫いた。"話題"などとしなかったのは,現実世界及びその中のものを結び付ける仮想世界をモデル化したトピックマップの世界の重要な用語として, 一般用語と区別することが強く望まれたことによる。
この標準情報(TR)で採用した主な訳語を解説表2.1に示し, 今後の関連規定の作成等に際しての参考とする。
原語 | 訳語 |
consistent topic map | 無矛盾トピックマップ |
construct | 構成要素 |
core | コア |
electronic artifacts | 電子的人工物 |
inline | 行内 |
merge | 併合(動詞では, 併合する) |
merging | 併合 |
origins | 経緯 |
paradigm | 考え方 |
parameter | パラメタ |
prose | 散文 |
proxy | プロキシ |
serialize | 直列化 |
sort name | 整列名 |
subelement | 下位要素 |
subject | 主題 |
subject index | 主題インデクス |
subtree | 部分木 |
subtype | 下位型 |
surrogate | 代理 |
theme | テーマ |
topic | トピック |
variant name | 異形名 |
TopicMaps.Orgの規定は, 必ずしもJIS又は標準情報(TR)の様式には整合していないため, 整合化の対応が必要である。しかしTRの読者が原規定を参照する際の便を考慮すると, 章・節構成はなるべく原規定のそれを保存することが望まれる。そこで, 次に示すだけの修正(章・節番号の変更なし)を施して, この標準情報(TR)を構成した。
XTMを翻訳し, 標準情報(TR)として公表することについては, TopicMaps.OrgのSteve Pepperから快諾を受けた(2001-08-22)。その際に, 規定内容に関する問題点があれば, そのフィードバックを期待されている。
翻訳に際して, 明らかに誤り(例えば, 附属書Eの最終箇所)については, 修正して標準情報(TR)に反映した。それらに関するTopicMaps.Orgへの通知は, 今後の作業として残されている。
[1] Jean-Luc Sanson and Michel Biezunski, The electronic library project at EDF's DER, 1st Conference on the Application of HyTime, Vancouver, 1994-07
[2] ISO/IEC 13250:2000, Information Technology — SGML Applications — Topic Maps, 2000-01
[3] JIS X 4157:2001, SGML応用 — トピックマップ
この標準情報(TR)の原案を作成した(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の将来型文書統合システム標準化調査研究委員会(AIDOS)及び作業グループ(WG1)の委員構成を,それぞれ解説表5.1及び解説表5.2に示す。
氏名 | 所属 | |
---|---|---|
(委員長) | 矢部 初男 | 電気通信大学 |
(幹事) | 大野 邦夫 | ドコモ・システムズ株式会社 |
(幹事) | 小町 祐史 | 松下電送システム株式会社 |
安達 文夫 | 国立歴史民俗博物館 | |
飯島 正 | 慶應義塾大学 | |
今門 政記 | インフォコム株式会社 | |
内山 光一 | 株式会社東芝 | |
海田 茂 | ネクストソリューション株式会社 | |
上村 圭介 | 国際大学 | |
河込 和宏 | 株式会社東芝 | |
菊田 昌弘 | 株式会社シナジー・インキュベート | |
出葉 義治 | ソニー株式会社 | |
内藤 求 | 株式会社シナジー・インキュベート | |
宮澤 彰 | 国立情報学研究所 | |
山田 篤 | 財団法人京都高度技術研究所 | |
高橋 昌行 | 経済産業省 産業技術環境局標準課 | |
オブザーバ | 篠原 章夫 | 日本電信電話株式会社 |
(事務局) | 内藤 昌幸 | 財団法人日本規格協会 |
氏名 | 所属 | |
---|---|---|
(主査) | 小町 祐史 | 松下電送システム株式会社 |
今門 政記 | インフォコム株式会社 | |
内山 光一 | 株式会社東芝 | |
大野 邦夫 | ドコモ・システムズ株式会社 | |
海田 茂 | ネクストソリューション株式会社 | |
上村 圭介 | 国際大学 | |
内藤 求 | 株式会社シナジー・インキュベート | |
宮澤 彰 | 国立情報学研究所 | |
矢部 初男 | 電気通信大学 | |
高橋 昌行 | 経済産業省産業技術環境局 | |
オブザーバ | 今村 剛 | 日本IBM株式会社 |
(事務局) | 内藤 昌幸 | 財団法人日本規格協会 |