標準仕様書(TS)   TS X 0069:2005

多目的インターネットメール拡張(MIME)
第1部 インターネットメッセージ本体のフォーマット 解説



この解説は,標準仕様書(TS)本体及び附属書に規定・記載した事柄,並びにこれらに関連した事柄を説明するもので,標準仕様書(TS)の一部ではない。


1. 公表の趣旨及び経緯

1.1 公表の趣旨

多目的インターネットメール拡張(MIME)は,インターネット公式プロトコル規定STD11(RFC 822)で規定されるインターネットメールのフォーマットを拡張し,US-ASCIIテキスト以外のメールを利用可能にする。MIMEは,インターネットでの日本語の電子メールの送受信を可能とし,電子メールにファイルを添付することも可能にする。これらの機能は,現在のインターネットメールにはなくてはならない。インターネットメールだけでなく,ワールドワイドウェブにおけるコンテンツフォーマットの種類の指定にも使用され,ウェブサーバの運用及びウェブ利用者エージェントでのコンテンツ閲覧のためにも必要となる。したがって,MIMEは,電子メールの拡張フォーマットであると考えるより,もっと広範なインターネット上のコンテンツのメディア記述のための統一的な枠組みであると考える方が適切といえる。

MIMEの枠組みによって定義される内容型は数多くあり,例えば,標準情報TR X 0045 [ディレクトリ情報のためのMIME内容型(RFC 2425に一致)]及び標準情報TR X 0046 [vCard電子名刺のMIMEディレクトリプロファイル(RFC 2426に一致)]は, MIMEの枠組みによって定義される。JIS X 4156 [ハイパテキストマーク付け言語(HTML)]による文書には,text/htmlというMIME内容型及び下位型が割り当てられる。これらの事例が示すとおり, MIMEは,JIS及び標準仕様書(TS)等からも頻繁に参照される基本的な規定であり,公表することが望まれた。

1.2 公表の経緯

経済産業省は,財団法人日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)に対して2001年度及び2002年度の活動として,MIMEを規定するRFCの標準情報(TR)化作業を委託した。INSTACでは,"電子出版技術調査研究委員会"がこの作業を担当して,MIMEを規定する五つのRFCのうち,まず,RFC 2045を原規定とする第1部を技術的内容を変えることなく翻訳し,標準情報(TR)原案を作成して2002年5月に経済産業省に提出した。この原案は, 工業標準化法に基づいて日本工業標準調査会(JISC) 標準部会の情報技術専門委員会(2002年6月開催)で公表を承認され,標準情報TR X 0069:2002として公表された。

このTRの公表後,JISCにおける制度が改められ,標準情報(TR)に代って標準仕様書(TS)及び標準報告書(TR)が導入された。この導入に伴い,RFC 2046,RFC 2047,RFC 2048及びRFC 2049を原規定とする第2部,第3部,第4部及び第5部が,順次,TS X 0070TS X 0071TS X 0106及びTS X 0107として公表された。

TR X 0069:2002の有効期限は3年間であるが, このTRが実際に広く使われて, しかも多くの規格から参照されていることを考慮して, TSとして公表を継続する必要があることが, INSTACのe-Book標準化調査研究委員会によってその2004年度の活動において指摘された[1]。e-Book標準化調査研究委員会の作業グループ(WG1)は, TR X 0069:2002の内容を変更することなくTSとしての体裁付けを行い, 2005年3月にTS原案を提出した。その原案は, 2005年7月の情報技術専門委員会で承認された。


2. 審議中の検討事項

2.1 訳語

訳語の選定に当っては,JIS X 0032[2]に訳語があって類似の意味で使われている場合には,その訳語を採用した。ただしここでは,JIS X 0032での定義と必ずしも同一の定義で用いられているわけではないことに注意する必要がある。

この標準仕様書(TS)で使った主な訳語を解説表2.1に示す。

解説表2.1 訳語一覧
原語訳語
3-in-4 base 64 scheme3-in-4 base 64方式
7-bit safe7ビット安全
augmented BNF notation強化BNF記法
big-endianビッグエンディアン
body本体
canonical encoding model正準符号化モデル
canonical form正準形式
compose作成する(メッセージを)
canonicalization-encoding正準符号化
content内容
email電子メール
encoding transformation符号化変換
external profiling information外部プロファイル情報
formal BNF形式BNF
generic BNF grammar共通BNF文法
hard line break指定(hard)行区切り
headerヘッダ
header fieldヘッダフィールド
identity encoding transformation同一符号化変換
identity transformation同一変換
Internet mailインターネットメール
interoperability相互運用性
local convention局所的な規約
mail processing agentメール処理エージェント
mail readerメールリーダ
mail systemメールシステム
mail transport mechanismメール転送機構
mail UAメールUA
media typeメディア型,MIMEメディア型
media typing systemメディア型付けシステム
messageメッセージ
message representation protocolメッセージ表現プロトコル
Message Transport Agentメッセージ転送エージェント
MIMEMIME
MIME character set nameMIME文字集合名
MIME-conformantMIME適合
MIME processorMIME処理系
multipart, multi-partマルチパート
multipart constructマルチパート構成
Multipurpose Internet Mail Extensions多目的インターネットメール拡張
paddingパディング
plain textプレーンテキスト
printable印字可能な
quoted-printablequoted-printable(印字可能引用)
quoted string引用文字列
to receive受信する(電子メールを)
to send送信する(電子メールを)
SMTP transportSMTPトランスポート
soft line break無指定(soft)行区切り
sub type下位型,MIME下位型
user agent利用者エージェント

2.2 章・節構成

RFCの原規定は,必ずしもJIS又はTSの様式には整合していないため,編集上の修正が必要になる。TSの読者が原規定を参照する際の便を考慮すると,章・節構成はなるべく原規定のそれを保存することが望まれる。そこで,次に示すだけの修正を施して,TS原案とした。2.から12.及び附属書A.の章・節構成は,原規定のそれに一致している。


3. 参考文献

[1] 平成16年度(2004年度)e-Book標準化調査研究委員会(e-Book)報告書, 日本規格協会, 2005-03

[2] JIS X 0032:1999, 情報処理用語−電子メール, 1999-11


4. 原案作成委員会の構成表

この標準仕様書(TS)の原案は,財団法人日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)のe-Book標準化調査研究委員会の作業グループ(WG1)で作成され, e-Book標準化調査研究委員会のレビューを受けた。それらの委員会の委員構成(2004年度)を解説表4.1及び解説表4.2に示す。

 
解説表4.1 e-Book標準化調査研究委員会の構成
氏名所属
(委員長)池田 克夫大阪工業大学
(委員)小町 祐史パナソニックコミュニケーションズ株式会社
大久保 彰徳株式会社リコー
長村 玄ネクストソリューション株式会社
内山 光一東芝ソリューション株式会社
植村 八潮東京電機大学出版局
礪波 道夫読売新聞
内藤 求株式会社シナジー・インキュベート
中村 幹株式会社印刷学会出版部
平山 亮金沢工業大学
矢ケ崎 敏明キヤノン株式会社
赤木 孝次社団法人日本新聞協会
堀坂 和秀経済産業省産業技術環境局
(事務局)内藤 昌幸財団法人日本規格協会
宮古 牧子財団法人日本規格協会

解説表4.2 e-Book標準化調査研究委員会 作業グループWG1の構成
氏名所属
(主査)小町 祐史パナソニックコミュニケーションズ株式会社
(委員)内山 光一東芝ソリューション株式会社
平山 亮金沢工業大学
大久保 彰徳株式会社リコー
石野 恵一郎アンテナハウス株式会社
内藤 求株式会社シナジー・インキュベート
長村 玄ネクストソリューション株式会社
矢ケ崎 敏明キヤノン株式会社
藤島 雅宏株式会社イー・エイド
山田 篤財団法人京都高度技術研究所
赤木 孝次社団法人日本新聞協会
堀坂 和秀経済産業省産業技術環境局
(事務局)内藤 昌幸財団法人日本規格協会
宮古 牧子財団法人日本規格協会