標準仕様書(TS)  TS X 0039:2005

ユニバーサルディスクフォーマット(UDF) 1.50
解説



1. 公表の趣旨及び経緯

1.1 背景

OSTA(Optical Storage Technology Association)は, ISO/IEC 13346(Volume and file structure of write-once and rewritable media using non-sequential recording for information interchange)についてその実装のためのサブセティングと属性値の設定とを行い, 一連の規定UDF(Universal Disk Format)として公表している。これらのUDFは, DVD Forumの規定に盛り込まれ, DVDなどのボリューム構造及びファイル構造に関する各種規定の基本となっている。

ISO/IEC 13346に一致する日本工業規格JIS X 0607-1996(非逐次記録を用いる追記形及び書換形の情報交換用媒体のボリューム及びファイルの構造)の原案作成を行なった財団法人光産業技術振興協会の光ディスク標準化委員会 フォーマット分科会は, UDF Revision 1.01(1995-11)の翻訳を行ない,標準情報(TR)[情報交換のための非逐次記録高密度光ディスク(DVDなど)のボリューム構造及びファイル構造]の原案として,1996年3月に工業技術院(当時)に提出した。それは, TR X 0001:1996[1]として同年8月に公表されている。

OSTAは, Revision 1.01で指摘されていた問題点を解決して, UDF Revision 1.02(1996-08)をウェブ上で公表してた。フォーマット分科会は,このUDFの改訂内容を翻訳に盛込む作業を行い, さらにTR X 0001に含まれていた編集上の誤りを修正して, 1997年6月にJIS原案として工業技術院に提出した。それは, JIS X 0609:1998[2]として1998年2月に制定されている。このJIS X 0609及びTR X 0001は, JIS X 0607の記述に, UDFの規定内容を追加した体裁をとり, 原則としてISO/IEC 13346の参照を不要にしている。

さらにOSTAは, CD-R/RW対応のUDF Revision 1.50(1997-02)を公表し, 引き続いてWindows NT対応のUDF Revision 2.00(1998-04)を発表した。これらのRevision 1.02, 1.50, 2.00(以降, それぞれUDF 1.02, UDF 1.50, UDF 2.00)については, 大きい版数の公表によって, それより小さい版数が廃止されることはなく, 並存したままOSTAのウェブで公開されている。


1.2 公表の趣旨及び経緯

通商産業省の工業技術院(当時)は, OSTAの活動の重要性を早くから認識し, UDF 1.01が公表されると, UDFのJIS化を視野に入れた翻訳標準情報(TR)の原案作成を財団法人光産業技術振興協会の光ディスク標準化委員会 フォーマット分科会に指示した。

フォーマット分科会は, UDFの規定内容をJIS X 0607に追加して盛り込む体裁で, UDF 1.01をTR X 0001とし, UDF 1.02をJIS X 0609としてそれぞれの原案作成を行うと共に, UDF 1.02の翻訳を原規定に忠実な体裁で, "ユニバーサルディスクフォーマット規定"[3]として日本規格協会から出版した。UDFの規定の翻訳に際して, OSTAから日本規格協会に対する翻訳・出版の許諾を受けている。

UDF 1.50及びUDF 2.00の翻訳については, 当初はTR X 0001の改正原案の作成として, その作業を開始した。その後, 規定文書としての完結性よりもUDFとの一致性を望む利用者要求(TR X 0001及びJIS X 0609では, ISO/IEC 13346からの差分を規定するUDFの内容に, ISO/IEC 13346の必要な規定内容を加えているため, 規定文書の項目番号が, UDFのそれと異なる。)を受けて, UDFの完全翻訳の体裁でTR原案を作成する方針に切り替えた。

フォーマット分科会は, 2001年2月にUDF 1.50の翻訳としての標準情報(TR)の原案を完成して, 経済産業省産業技術環境局に提出した。 それは, TR X 0039:2001として公表された。その後, 日本工業標準調査会(JISC)におけるTS制度導入に伴い, このTRが実際に広く使われていることを考慮して, TSとして公表を継続する必要があることが2003年度のフォーマット分科会で提案され, 光ディスク標準化委員会で承認を受けた。

しかし, TR X 0039:2001の内容を変更することなくTSとして体裁付けして公表することの情報技術専門委員会での承認は, 事務処理の著しい遅れによって, 2005年7月になった。


2. 審議中の主要検討課題及び懸案事項

2.1 訳語

原案作成委員会では, 関連するJIS又は標準情報(TR)との整合を考慮して, 訳語を選定した。この標準仕様書(TS)の作成に際して参照した訳語一覧を解説表 2.1に示す。

解説表 2.1 訳語一覧
原語 訳語
Abstract File Identifier抄録ファイル識別子
Access Typeアクセス種別
address番地
Allocation Descriptor割付け記述子
Allocation Extent Descriptor割付けエクステント記述子
Alternative Permissions代替許可条件
anchor point開始点
Anchor Volume Descriptor Pointer開始ボリューム記述子ポインタ
application応用プログラム
Application Use Extended Attribute応用プログラム用拡張属性
Architecture Type体系種別
Attribute Subtype属性副種別
Attribute Type属性種別
Beginning Extended Area Descriptor拡張領域先頭記述子
Boot Descriptor起動記述子
Checkpointチェックポイント
Close Integrity (Descriptor/Entry)クローズ保全(記述子/エントリ)
cyclic redundancy check (CRC)巡回冗長検査
descriptor記述子
Descriptor Character Set記述子用文字集合
dirty不正
Domain Identifier範囲識別子
Entity実体
Equivalent Volume Descriptor Sequence同等ボリューム記述子列
Escape Sequenceエスケープシーケンス
Explanatory Character Set説明用文字集合
Extended Allocation Descriptor拡張割付け記述子
Extended Attribute Header Descriptor拡張属性ヘッダ記述子
extentエクステント
field
fileファイル
File Entryファイルエントリ
File Identifier Descriptorファイル識別記述子
file setファイル集合
File Set Descriptorファイル集合記述子
File Time Existenceファイル日時存在
flagフラグ
Free Space Table利用可能空間テーブル
freed space未初期化空間
Freed Space Bitmap未初期化空間ビットマップ
Freed Space Table未初期化空間表
Generic format共通フォーマット
generic partition map区画マップの共通フォーマット
group IDグループID
ICB hierarchyICB階層
identifier識別子
implementation処理システム
implementation use処理システム用
Implementation Use Extended Attribute処理システム用拡張属性
Implementation Use Volume Descriptor処理システム用ボリューム記述子
Indirect Entry間接エントリ
Information Control Block情報制御ブロック
Information Time Existence情報日時存在
instance of an extended attribute拡張属性のインスタンス
Integrity Sequence Extent保全列エクステント
Integrity Type保全種別
Load Addressロード番地
logical block論理ブロック
Logical Block Size論理ブロック長
logical sector論理セクタ
logical volume論理ボリューム
Logical Volume Contents Use論理ボリューム内容用
Logical Volume Descriptor論理ボリューム記述子
Logical Volume Integrity Descriptor論理ボリューム保全記述子
Long Allocation Descriptor長割付け記述子
Main Volume Descriptor Sequence主ボリューム記述子列
Major Device Identification主装置識別情報
Minor Device Identification副装置識別情報
Next Extent後続エクステント
Next Integrity Extent保全列続きエクステント
Next Volume Descriptor Sequence Extentボリューム記述子列続きエクステント
Non-Allocatable Space List割付け禁止空間リスト
non-sequential recording非逐次記録
Open Integrity (Descriptor/Entry)オープン保全(記述子/エントリ)
originating system作成システム
padding埋込み
partition区画
Partition Descriptor区画記述子
Partition Integrity Table区画保全表
Path Componentパス要素
Pathnameパス名
Permissions許可条件
Predecessor Volume Descriptor Sequence Location先行ボリューム記述子列位置
prevailing最新
Previous Allocation Extent Location先行割付けエクステント位置
Primary Volume Descriptor基本ボリューム記述子
Prior Recorded Number of Direct Entries記録済み直接エントリの個数
protected保護
receiving system受領システム
recordレコード
record structureレコード構造
Recorded Address記録番地
reserved予備
Reserved Volume Descriptor Sequence予備ボリューム記述子列
resolved pathname帰着パス名
schemaスキーマ
sectorセクタ
sequence
Short Allocation Descriptor短割付け記述子
Size Tableサイズテーブル
space bitmap空間ビットマップ
Space Bitmap Descriptor空間ビットマップ記述子
space table空間表
standard for recording記録のための規格
Strategy Parameter方策パラメタ
Strategy Type方策種別
suffix添字
Tag Checksumタグチェックサム
Tag Serial Numberタグ通し番号
Terminal Entry終端エントリ
Terminating Descriptor終端記述子
Terminating Extended Area Descriptor拡張領域終端記述子
type種別
Type 1(2) Partition Map第1(2)種区画マップ
Unallocated Space Bitmap未割付け空間ビットマップ
Unallocated Space Descriptor未割付け空間記述子
Unallocated Space Entry未割付け空間エントリ
Unallocated Space Table未割付け空間表
Unique Id一意ID
user ID利用者ID
version版数
volumeボリューム
Volume Descriptor Pointerボリューム記述子ポインタ
Volume Descriptor Sequenceボリューム記述子列
Volume Descriptor Sequence Numberボリューム記述子順序番号
Volume Sequence Numberボリューム順序番号
volume setボリューム集合
volume spaceボリューム空間


2.2 構成

2.2.1 章・節構成

UDFの規定は, 必ずしもJIS又は標準仕様書(TS)の様式には整合していないため, 整合化の対応が必要である。しかしTSの読者が原規定を参照する際の便を考慮すると, 章・節構成はなるべく原規定のそれを保存することが望まれる。そこで, 次に示すだけの修正(章・節番号の変更なし)を施して, この標準仕様書(TS)を構成した。

2.2.2 その他の翻訳表記上の規則

原規定は, ウェブ上のPDFの様式で書かれた電子化テキストで提供されている。この標準仕様書(TS)は, 翻訳作業に際してテキストにHTMLタグを付与し, 将来のウェブ配布に備えている。タグ付けは, 原規定の文書スタイルから読み取れる構造をできるだけ保存するものとし, 次の配慮を施した。


2.3 正誤票

UDF 1.50に対する正誤表は, 2000年3月付けで2001年になって公表された。その内容は, この標準仕様書(TS)には未反映であるため, 解説として次に示す。

2.3.1 逐次記録ファイルシステムの記述追加

UDF 1.5の逐次記録ファイルシステムにおいて, ランダムアクセスファイルシステムが与える情報, つまり, ボリューム名並びにボリューム上のファイル数及びディレクトリ数が抜けているので, この情報ををVATファイルエントリにオプションの拡張属性として追加する。

変更点

次の記述を本文中に追加する。

3.3.4.5.1.3 論理ボリューム拡張情報

LVExtensionEAは, VATファイルエントリだけに記録される。それは, オプションとする。それは, UDF 1.5に適合するメディアだけに記録され, UDF 2.0(UDF 2.0は, 既に異なる方法で提供している。)又はそれ以降に適合するメディアには記録されない。

この拡張属性は, ImplementationIdenfifierに

"*UDF VAT LVExtension"
と記録された処理システム用拡張属性として記録される。

表 LVExtensionEAフォーマット
RBP 長さ 名前 内容
0 2 ヘッダチェックサム Uint16
2 8 検証識別子 Uint64
10 4 ファイル数 Uint32
14 4 ディレクトリ数 Uint32
18 128 論理ボリューム識別子 dstring

a) 検証識別子 この拡張属性を記録する際, VAT ICBのファイルエントリの一意ID欄のコピーをここに記録する。読み出す際に, この値によってファイル数及びディレクトリ数の値が正しいかどうかがわかる。この欄の値が一意ID欄と同じであるときだけこの値は有効であり, そうでない場合には, 読出しシステムはこの欄が有効でないと見なす。ファイル数及びディレクトリ数が既知である場合だけ, その値は更新されなければならず, そうでない場合は, その値は変更してはならないか, 又はZEROバイトで埋めなければならない。

b) ファイル数 2.2.6.4と同じ

c> ディレクトリ数 2.2.6.4と同じ

d) 論理ボリューム識別子 利用者によって割り当てられる現在の論理ボリューム名を指定する。この名前は, LVD及びFSDの両方にあるL.V.I.とは異なることがある。異なる場合, この値が他の値に優先する。

2.3.2 割付け禁止空間ファイルの訂正

欠陥管理に使うファイルの名前"Non-Allocatable Space"の表記が誤っている(UDF 1.5の2.3.13)。

変更点

2.3.13の記述

(#4E,#6F,#6E,#2D,#41,#6C,#6C,#6F,#61,#74,#61,#62,#6C,#65,#20,#70,#61,#63,#65)

を次の記述で置き換える。

(#4E,#6F,#6E,#2D,#41,#6C,#6C,#6F,#63,#61,#74,#61,#62,#6C,#65,#20,#53,#70,#61,#63,#65)

2.3.3 許可条件の訂正

UNIXにおいて, 属性及び削除の許可条件を実行から無視に変更する。

変更点

3.3.3.3表3.1

表3.1 各OSの許可条件ビット処理
許可 ファイル/ディレクトリ 記述 DOS OS/2 Win95 WinNT MacOS UNIX
読出し ファイル ファイルを読み出してもよい。 E E E E E E
読出し ディレクトリ ディレクトリを読み出してもよい。 E E E E E E
書込み ファイル ファイルの内容を更新してもよい。 E E E E E E
書込み ディレクトリ ファイル又はディレクトリを作成,削除又は名前変更してもよい。 E E E E E E
実行 ファイル ファイルを実行してもよい。 I I I I I E
実行 ディレクトリ ファイル又はサブディレクトリを規定するために,ディレクトリを検索してもよい。 E E E E E E
属性 ファイル ファイルの許可条件を変更してもよい。 E E E E E E
属性 ディレクトリ ディレクトリの許可条件を変更してもよい。 E E E E E E
削除 ファイル ファイルを削除してもよい。 E E E E E E
削除 ディレクトリ ディレクトリを削除してもよい。 E E E E E E
E - 実行する, I - 無視する
を次の表で置き換える。

表3.1 各OSの許可条件ビット処理
許可 ファイル/ディレクトリ 記述 DOS OS/2 Win95 WinNT MacOS UNIX
読出し ファイル ファイルを読み出してもよい。 E E E E E E
読出し ディレクトリ ディレクトリを読み出してもよい。 E E E E E E
書込み ファイル ファイルの内容を更新してもよい。 E E E E E E
書込み ディレクトリ ファイル又はディレクトリを作成,削除又は名前変更してもよい。 E E E E E E
実行 ファイル ファイルを実行してもよい。 I I I I I E
実行 ディレクトリ ファイル又はサブディレクトリを規定するために,ディレクトリを検索してもよい。 E E E E E E
属性 ファイル ファイルの許可条件を変更してもよい。 E E E E E I
属性 ディレクトリ ディレクトリの許可条件を変更してもよい。 E E E E E I
削除 ファイル ファイルを削除してもよい。 E E E E E I
削除 ディレクトリ ディレクトリを削除してもよい。 E E E E E I
E - 実行する, I - 無視する


3. 著作権表示

この規定の発行は, OSTAから日本規格協会に対する翻訳・出版の許諾に基づく。

©1994, 1995, 1996, 1997, OSTA. All right reserved. UNIVERSAL DISK FORMATTM and UDFTM are trademarks of OSTA, and are used with permission od OSTA.

Optical Storage Technology Association
311 East Carrillo Street
Santa Barbara, CA 93101

This document is a translation from the English version issued by OSTA. The English version was translated into Japanese by JSA, and OSTA shall have no liability whatsoever for any errors in translation. In the case of any consistencies between this document and the English version of this document, the English version shall be controlling, and the user is advised to consult the English version of this document.


4. 参考文献

[1] TR X 0001:1996, 情報交換のための非逐次記録高密度光ディスク(DVDなど)のボリューム構造及びファイル構造, 1996-08-06

[2] JIS X 0609:1998, 情報交換用非逐次記録高密度光ディスクのボリューム構造及びファイル構造, 1998-02-20

[3] 光ディスク標準化委員会 フォーマット分科会, ユニバーサルディスクフォーマット規定, 日本規格協会, 1997-08-20


5. 原案作成委員会

このTSの原案は,財団法人光産業技術振興協会に設置された光ディスク標準化委員会のフォーマット分科会で作成され,光ディスク標準化委員会のレビューを受けた。これらの委員会の委員構成(2003年度末)を, それぞれ解説表5.2及び解説表5.1に示す。

解説表5.1 光ディスク標準化委員会の構成
氏名所属
(委員長)小町 祐史パナソニックコミュニケーションズ株式会社
(副委員長)入江 満大阪産業大学
(副委員長)菅谷 寿鴻株式会社東芝
布施 剛之ソニー株式会社
横川 文彦パイオニア株式会社
入江 英之DVDフォーラム
小川 博司ソニー株式会社
金澤 安矩日立マクセル株式会社
高橋 正悦株式会社リコー
田中 誠一財団法人デジタルコンテンツ協会
田辺 隆也日本電信電話株式会社
土屋 洋一三洋電機株式会社
徳丸 春樹日本放送協会
戸島 知之NTTエレクトロニクス株式会社
中根 和彦三菱電機株式会社
八谷 祥一株式会社ガイア・システム・ソリューション
藤本 健文日本フィリップス株式会社
山下 経株式会社日立製作所
山田 昇松下電器産業株式会社
渡部 賢一財団法人日本規格協会
谷口 裕則経済産業省産業技術環境局
(事務局)増田 岳夫財団法人光産業技術振興協会
(事務局)伊藤 和弘財団法人光産業技術振興協会
(事務局)川井 隆志財団法人光産業技術振興協会

解説表5.2 フォーマット分科会の構成
氏名所属
(統括)小町 祐史パナソニックコミュニケーションズ株式会社
(副統括)高橋 正悦株式会社リコー
(副統括)八谷 祥一株式会社ガイア・システム・ソリューション
石井 正則日本電気株式会社
伊藤 精悟株式会社東芝
工藤 芳明大日本印刷株式会社
小出 大一日本放送協会
後藤 芳稔松下電器産業株式会社
沢田 要川鉄情報システム株式会社
菅谷 寿鴻株式会社東芝
徳光 健司株式会社日立製作所
中根 和彦三菱電機株式会社
吉岡 誠有限会社aIPid
渡部 賢一財団法人日本規格協会
谷口 裕則経済産業省産業技術環境局
(事務局)増田 岳夫財団法人光産業技術振興協会
(事務局)川井 隆志財団法人光産業技術振興協会