標準仕様書(TS) TS X 0077:2005

XMLフォーム言語(XForms)1.0 解説



1. 公表の趣旨及び経緯

1.1 公表の趣旨

Webの普及によって,Webブラウザから情報入力することが多くなり,HTMLのフォームでは対応できないより高機能なフォームへの要求が高まっている。また,携帯電話やPDA端末利用者の増加に応じて,情報入力もパソコンに限らず,多様な機構への対応が要請されている。XFormsはこの要求に応えるXML応用であって,従来のHTMLフォームをデータモデル,インスタンスデータ及び利用者インタェースに分けることによって,内容から表示を分離し,データの流通性,再利性を高める。

XFormsのこの機能に対する強い要求に応えるため,World Wide Web Consortium(W3C)から公表された XForms 1.0勧告(XForms 1.0, 14 October 2003)を翻訳して,標準仕様書(TS)として公表することとした。

1.2 公表の経緯

財団法人日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)の中に設けられた“XML関連の標準化調査研究委員会”において,日本における電子申請機構の実現の意義と様式類電子化の実装の現状の問題点が指摘され,様式類に対する次の課題の標準化への努力の必要性が提案[1]された。これを受け,“電子出版技術調査研究委員会”はXFormsの調査研究を2001年度に開始し,2002年8月にW3Cから公表されたXForms 1.0勧告案を翻訳して2003年9月に標準情報(TR X 0077)として公表した。その後,2003年10月にW3CからXForms 1.0勧告が公表され,その勧告を標準仕様書(TS)として公表することが望まれるとの意見が出された。 その背景には, 総務省で行われている電子政府のXML文書導入におけるユーザインタフェースへの要求[2]がある。

この提案を受けて,INSTACの“XML適用関連に関する標準化調査研究委員会(XML適用委員会)”は,“電子出版技術調査研究委員会”での調査研究結果を踏まえて2004年度にXForms 1.0勧告を全訳し,2005年5月に標準仕様書(TS)の原案を完成して経済産業省産業技術環境局に提出した。


2. 審議中の主要検討課題

2.1 用語

この標準仕様書(TS)では,採用した主な訳語を解説表2.1に示し,今後の関連規定の作成等に際しての参考とする。

解説表2.1 主な訳語
原語訳語
Abstract Modules 抽象モジュール
Action アクション
Actions content set アクション内容集合
Alert Element alert要素
Authors 文書作成者
Binding 結合
Binding expression 結合式
Bubbles バブル
Built-in 組込み
Built-in derived types 組込み派生型
Built-in primitive types 組込みプリミティブ型
CDATAsections CDATAセクション
Cancelable 取消し可能
Choices Element choices要素
Common Attributes 共通属性
Conformance Levels 適合性レベル
Conforming XForms Processors XForms適合プロセサ
Content Set 内容集合
Content-ID Content-ID
Context Info 文脈情報
Core Attribute 主要属性
Core Module 主要モジュール
DOM2 Events DOM2 Events
Data Binding Restrictions データ結合制限
Datatype データ型
Declarative Validation 宣言的な妥当性検証
Default Value デフォルト値
Default action デフォルトアクション
Deferred Updates 遅延更新
Document Structure 文書構造
Empty elements 空要素
Error Indications 誤り表示
Evaluation Context 評価文脈
Event Sequencing イベント列
Extension Functions 拡張関数
Fatal error 致命的な誤り
Filename Element filename要素
Form Controls フォーム制御
HTML Forms HTMLフォーム
Help Element help要素
Hint Element hint要素
Implementation Requirements 実装必要条件
Inheritance Rules 継承規則
Input Element input要素
Instance data インスタンスデータ
Internationalization issues 国際化の問題
Invited Experts 外部専門家
Item Element item要素
Label Element label要素
Legal Values 使用できる値
Linking Attributes Collection リンク付け属性集合
Markup マーク付け
Master Dependency Directed Graph 依存関係の有向マスタグラフ
Mediatype Element mediatype要素
Method メソッド
Minimal Content Model 最小内容モデル
Model Item Properties モデル項目特性
MustUnderstand MustUnderstand
Navigation ナビゲーション
Node-set ノード集合
Notification Events 通知イベント
Output Element output要素
Processing Model 処理モデル
Pseudo-element 擬似要素
Range Element range要素
Recalculation Sequence Algorithm 再計算順序アルゴリズム
Schema constraint スキーマ制約
Secret Element secret要素
Select Element select要素
Select1 Element select1要素
Single Node Binding 単一ノード結合
Special Attributes 特殊属性
Strong typing 強い型付け
Submit 送付
Submit Element submit要素
Submit Method 送付メソッド
Target ターゲット
Textarea Element textarea要素
Trigger Element trigger要素
UI Common attribute UI共通属性
UI Common content set UI共通内容集合
Unicode Unicode
Unicode normalization Unicode正規化
Upload Element upload要素
User Agent 利用者エージェント
User Interface 利用者インタフェース
Value Element value要素
W3C Technical Architecture Group W3C Technical Architecture Group
Working Group 作業グループ
XForms Actions module XFormsアクションモジュール
XForms Extension module XForms拡張モジュール
XForms Form Controls Module XFormsのフォーム制御モジュール
XForms Full 完全XForms
XForms Model definition XFormsモデル定義
XForms Model selector XFormsモデルセレクタ
XForms Processor XFormsプロセサ
XForms Repeat module XForms繰返しモジュール
XForms User Interface XForms利用者インタフェース
XForms property XForms特性
XForms tree XForms木
XHTML XHTML
XHTML Modularization XHTMLのモジュール化
XML Event XMLイベント
XML Events module XMLイベントモジュール
XML Schema XMLスキーマ
XML representations XML表現
XML resource bundle XML資源束
XML vocabularies XML語い(彙)
XPath XPath
XPath Expressions XPath式
accessibility アクセシビリティ
accesskey アクセスキー
activating 活性化
attributes 属性
back-end バックエンド
binding attributes 結合属性
bookmark ブックマーク
canonical 正準化
child element 子要素
circular dependency 循環依存
clickstream クリックストリーム
community コミュニティ
conformance profile 適合性プロファイル
constraint 制約
content negotiation 内容交渉
context node 文脈ノード
context position 文脈位置
default デフォルト
descendant 子孫(要素)
detached copy 分離コピー
digital cameras ディジタルカメラ
digitizer hardware 座標読取り装置
directed graph 有向グラフ
disclaimer text 特記事項
document 文書
document order 文書順
document profile 文書プロファイル
document-wide 文書全体
e-commerce revolution 電子商取引革命
electronic commerce 電子商取引
element 要素
element content 要素内容
encapsulate カプセル化
encoding 符号化
entry エントリ
event handler イベントハンドラ
event response イベント応答
event sequence イベント列
exception 例外
exclusive 排他的
external scripts 外部スクリプト
facet ファセット
feedback フィードバック
file dialog ファイルダイアログ
foreign attributes 外来の属性
form-fill experience フォーム入力を楽にする
fractional seconds 1秒未満の
fragment 素片
graphical browser グラフィカルブラウザ
high-level semantics 抽象度の高い意味
homogeneous collection 同種の集り
host language ホスト言語
in-scope 現在有効な
incremental processing 増分処理
infoset 情報集合
initial instance data 初期インスタンスデータ
inline content 行内内容
input focus 入力フォーカス
instance data node インスタンスデータノード
interaction 相互作用
legacy application 旧来のアプリケーション
lexical 字句
lexical space 字句空間
link traversal リンク走査
linking attribute リンク付け属性
literal リテラル
local name 局所名
local value 局所値
localization 現地化
locater 位置指定子
mapping マッピング
microphones マイクロフォン
model item モデル項目
model item property モデル項目特性
model-binding-expression モデル結合式
namespace 名前空間
namespace prefixes 名前空間接頭辞
navigation sequence ナビゲーション順序
navigation unit ナビゲーション単位
node-set ノード集合
normalization 正規化
notation 記法
open enumeration 追加可能な一覧表
parent element 親要素
path information パス情報
place-holders プレースホルダ
privacy policy プライバシ方針
processing instruction 処理命令
protocol プロトコル
pseudo-class 擬似クラス
push-button 押しボタン
re-use 再使用
reinitialized 再初期化
remote 遠隔の
remote resource 遠隔の資源
render 可視化する
request リクエスト
reset 再設定
resource 資源
root ルート
root element ルート要素
rotary control 回転式制御
scheme スキーム
scoped resolution 有効範囲を考慮した解決
security セキュリティ
selector セレクタ
self-references 自己参照
semantics 意味
separator characters 区切り文字
serialization 直列化
serialize 直列化する
step size ステップサイズ
storage value 格納値
strings 文字列
stylesheet スタイルシート
submit process 送付処理
success response 成功応答
text edit box テキスト編集ボックス
time zone 時間帯
valid 妥当な
validation 妥当性検証
value space 値空間
well-formed XML 整形式XML
word processing application ワードプロセサ

2.2 章・節構成

W3Cの規定は,必ずしもJIS又は標準仕様書(TS)の様式には整合していないため,整合化の対応が必要である。しかしTSの読者が原規定を参照する際の便を考慮すると,章・節構成はなるべく原規定のそれを保存することが望まれる。そこで,次に示すだけの修正(章・節番号の変更なし)を施して,この標準仕様書(TS)を構成した。

2.3 W3Cからの要求

この標準仕様書(TS)の公表に際して,W3Cから和文及び英文による次の記載を求められている。この記述は原規定にはないため,ここに示して,W3Cの要求に応えることとする。

規定に準拠しているかどうかの基準となる版は,W3Cのサイトにある原規定とする。

この標準仕様書(TS)は原規定と技術的に同一であることを意図しているが,翻訳上の誤りはあり得る。

The normative version of the specification is the English version found at the W3C site.

Although this TS is intended to be technically identical to the original, it may contain errors from the translation.


3. 懸案事項

3.1 標題の翻訳

TR X 0077において単一表記による原規定の標題である“XForms”の翻訳は,“Xフォーム”としたが,翻訳表記だけでは原規定の単一表記で検索した際に検出されないなどの弊害が生じるため,この標準仕様書(TS)では翻訳表記及び原規定の単一表記を併記する“XMLフォーム言語(XForms)”とした。TS本体では原規定の単一表記である“XForms”を使用した。


4. 参考文献

[1] XML関連の標準化調査研究委員会,わが国におけるXML標準化への提言,2001-03

[2] 村田 真, 電子政府のXML文書ユーザインタフェース,画像電子学会第15回VMA研究会, 2005-07


5. 原案作成委員会

この標準仕様書(TS)原案を作成した(財)日本規格協会 情報技術標準化研究センター(INSTAC)のXML適用関連に関する標準化調査研究委員会及び作業グループ WG1 SWG-Yの委員構成を,それぞれ解説表5.1解説表5.2に示す。

解説表5.1 XML適用関連に関する標準化調査研究委員会
種別氏名所属
委員長  小柳義夫    東京大学大学院情報理工学系研究科
幹事大野邦夫株式会社ジャストシステム
委員今村誠三菱電機株式会社
浦野昇株式会社富士通プライムソフトテクノロジ
岡部恵造株式会社サンブリッジソリューションズ
加藤博之株式会社NTTデータ
菊田昌弘シナジー・インキュベート株式会社
小町祐史パナソニックコミュニケーションズ株式会社
瀬戸和吉経済産業省産業技術環境局
三分一信之株式会社日立システムアンドサービス
杉山高弘日本電気株式会社
深見拓史株式会社廣済堂
湯浦克彦株式会社日立製作所
渡辺榮一株式会社東京商工リサーチ
経済省堀坂和秀経済産業省産業技術環境局
事務局山中正幸財団法人日本規格協会
河合聖子財団法人日本規格協会

解説表5.2 作業グループ WG1 SWG-Y
種別氏名所属
主査    小町祐史    パナソニックコミュニケーションズ株式会社
委員内山光一東芝ソリューション株式会社
内藤求株式会社シナジー・インキュベート
平野洋一郎インフォテリア株式会社
村田真国際大学研究所
協力者安藤崇周シナジー・インキュベート株式会社
加藤英崇シナジー・インキュベート株式会社
菊田昌弘シナジー・インキュベート株式会社
岸本和彦シナジー・インキュベート株式会社
北原淑行インフォテリア株式会社
長島良平シナジー・インキュベート株式会社
中村智史インフォテリア株式会社
滑川貴康シナジー・インキュベート株式会社
林均シナジー・インキュベート株式会社
藤原隆弘イースト株式会社
湯浦克彦株式会社日立製作所
経済省堀坂和秀経済産業省産業技術環境局
事務局山中正幸財団法人日本規格協会
河合聖子財団法人日本規格協会