この標準情報(TR)は, 情報処理技術を用いて文字概念を可視化し表示・印刷する際に必要なフォント関連技術の用語を体系的に整理し, 定義及び対応する英語を規定する。
分類項目ごとに区分して, 関連する概念の用語をまとめる。主となる概念があれば, それに対応する用語を先に, 従となる概念に対応する用語を後にして, 順次系統的に並べる。
番号
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用語
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定義
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対応英語
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参考
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01.01* |
文字 |
可視化表現(形状,大きさ,意匠など),筆順,音,意味,起源,機能などを属性としてもつ情報表現要素。 |
character |
文書情報処理においては,限定された属性だけが対象となることが多く,その限定された属性に対して符号化表現などの識別子を割り当てる。この標準情報(TR)における文字は,その属性として可視化表現だけを対象とする。 |
01.01.01 |
漢字 |
古代中国で発生した表意文字。 |
kanji |
いん(殷)時代の甲骨文字にその起源を求めることができる。 |
01.01.02 |
国字 |
漢字と同じ字形要素及び造字法によって日本で作られた文字。和製漢字。 |
Japan originated kanji |
国字の総数を完全に把握することは困難である。わ(倭)字ともいわれる。 |
01.01.03 |
仮名 |
漢字を起源にもつ,日本固有の音節文字。 |
kana |
広義には万葉仮名を含むが,狭義には平仮名及び片仮名を指す。 |
01.01.04 |
変体仮名 |
1900(明治33)年の“小学校令施行規則”第十六条に含まれない仮名。 |
anomalous kana |
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01.02 |
字体 |
漢字の骨格であって,視覚的認識のために他と明確に区別できる特徴を備えている。 |
abstract letter shape |
漢字符号の幾つかの規格では字体を抽象的な概念と位置付け,その具体的な形として実現されたものを字形と定義している。字体差の大小によって,差の少ないものは同値とみなし,差の大きいものを独立としている。
文字の可視化表現から大きさ及び意匠デザインを正規化した抽象化表現を字体ということもある。(解説4.3参照) |
01.02.01 |
正字 |
ある時代に公的又は社会的な規範とされる字体。 |
authorized letter shape |
字体の規範は時代と共に変化する。したがって,正字とされる文字も時代によって変わる性格をもつ。従来の習慣として“康き(熙)字典”に準拠した字体を,正字と呼んでいる。 |
01.02.02 |
本字 |
正字として認められる以前の時代から社会的に認知されている字体。 |
true letter shape |
略字に対して,正字の漢字。ある漢字のもととなった漢字(大辞林参照)。 |
01.02.03* |
異体字 |
同じ音及び意味をもつ漢字の,正字とは異なる字体。 |
variant |
解説4.3を参照。 |
01.02.03.01 |
新字体 |
当用漢字制定後の政令文字において,従来の字体から変更された文字。 |
new letter shape |
|
01.02.03.02 |
旧字体 |
新字体の以前の字体。 |
old letter shape |
当用漢字制定前の漢字は“康き(熙)字典”体を採用した経緯から,旧字体は康き(熙)字典体を意味するものとの解釈もある。常用漢字表の括弧内の文字を康き(熙)字典体としたことは,この解釈による。 |
01.02.03.03 |
俗字 |
公的な文書には用いられないが,日常生活の場で用いられる異体字。 |
informal variant |
本来の字体に対し,増画,減画,崩れなど,主に筆写の揺れなどに起因する変形が生じた字体。 |
01.02.03.04 |
別体字 |
異なる成り立ちをもつと判断される異体字。 |
variant with other origin |
従来,わく(或)体とされていた。わく(或)体は小てん(篆)に対して用いられる概念である。 |
01.02.03.05 |
か(譌)字 |
一部では通用しているが,成り立ちから誤りであると判断できる字体。 |
|
日常生活における“間違い字”とは区別して定義している。 |
01.02.03.06 |
略字 |
字画の一部の省略などの簡略化を施した俗字。 |
simplified letter shape |
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01.02.03.07 |
古字 |
漢時代に通用していた隷書に対して“古い文字”という意味で名付けられ,中国の戦国時代に用いられた字体。 |
ancient letter shape |
ろ(魯)の地方にあった孔子の旧宅の壁中から発見された経書に書かれた書体とされる。“説文解字”における解釈上,“古文”又は“古〜に作る”とある。
昔使われていて,今は使われない文字又は書体。 |
01.03* |
グリフ |
文字の可視化表現又はその構成部分から大きさ及び意匠を正規化した抽象表現(JIS X 4161及びISO/IEC 10036を参照)。 |
glyph |
ISO/IECの国際登録機関AFII(Association for
Font Information Interchange)が,組織又は個人からの要求に応じて, ISO/IEC 10036に従って割り当てる識別子の識別対象。 |
01.03.01 |
合字 |
二つ以上のグリフを合わせて一体化したグリフ。 |
composite glyph |
日本では,“こと”,“トキ”などを一つのグリフとして使用したことがある。 |
01.03.01.01* |
リガチャ |
合成でない欧文の合字。 |
ligature |
グリフf,i及びlを合わせて一体化したfi,fl,ffi,fflなどが, よく用いられる。 |
01.03.01.02 |
連字 |
二つ以上の文字からなる語又はつづ(綴)りを一つのグリフにまとめたもの,又はまとめること。 |
inter-glyph connection |
|
01.03.01.03 |
合成 |
二つ以上のグリフの配置を制御して,ひとまとまりのグリフとしたもの,又はひとまとまりのグリフにすること。 |
combined glyph |
○及び数字の中心を合わせて,丸入りの数字のグリフを実現することがある。 |
01.04 |
字形 |
文字の骨格に対して,筆法,意匠などに基づく処理を施した結果の実際の文字可視化表現。 |
letter form |
字体の項を参照。 |
01.05* |
書体 |
表示などに使用するため,統一的なコンセプトに基づいて作成された,一組の文字などの意匠。 |
typeface |
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01.06* |
フォント |
ある書体でデザインされた字形の集合(JIS X 4161参照)。 |
font |
本来は, 同一書体及び同一文字サイズの活字の一そろ(揃)い。 |
01.06.01 |
アナログフォント |
活字,文字盤などのフォント。 |
analogue font |
ディジタルフォントの普及の結果,それ以前のフォントを特に対比して区別するために,アナログフォントと呼ぶ。
JIS Z 8123参照。 |
01.06.01.01* |
活字 |
鉛,アンチモニー,すず(錫)などの合金を用いた印刷用字形の鋳造品(ISO TR 9544参照)。 |
type |
歴史的には木活字,銅活字などもある。JIS Z 8123参照。 |
01.06.01.02* |
写真植字 |
光学的に文字などを印画紙又は感光フィルムの上に,文字ごとに又はブロックごとに露光して組版する技術。 |
phototype-setting |
活字では表現できない,拡大縮小,変形などを施した字形表現が可能であり,一つの字母から無限の文字が再生できる。JIS Z 8123参照。 |
01.06.02 |
ディジタルフォント |
ディジタルデータとして記録されたフォント。 |
digital font |
|
01.06.02.01 |
スクリーンフォント |
画面表示に用いるフォント。 |
screen font |
画面表示専用のフォントの場合と,プリンタフォントと共通の場合とがある。 |
01.06.02.02 |
システムフォント |
システムソフトウェアに組み込まれたフォント。 |
system font |
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01.06.02.03 |
デバイスフォント |
表示装置に組み込まれたフォント。 |
device font |
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01.06.02.04 |
プリンタフォント |
プリンタに組み込まれたフォント。 |
printer font |
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番号
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用語
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定義
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対応英語
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参考
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03.01* |
メトリク |
フォント又は一つの字形に固有の寸法情報を含む各種計量情報の総称。 |
metric |
|
03.01.01* |
フォントメトリク |
フォントに固有の寸法情報を含む各種計量情報の総称(JIS X 4161及びJIS X 4162参照)。 |
font metric |
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03.01.02* |
グリフメトリク |
一つの字形に固有の寸法情報を含む各種計量情報の総称(JIS X 4161及びJIS X 4162参照)。 |
glyph metric |
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03.02 |
字幅 |
配列する方向の文字の外枠の大きさ。 |
character width |
グリフに外接するく(矩)形に両サイドベアリングを加えた幅。仮想ボディをもつ場合は, その幅に一致する。 |
03.02.01 |
a-zレングス |
aからzまでの全文字の字幅の合計。 |
a-z length |
|
03.02.02* |
プロポーショナル |
一つの書体中で文字の字幅が一定でなく,そのデザインに応じて文字ごとに独立した字幅の値をもっていること。 |
proportional |
欧文書体は,一般的にプロポーショナルに作られている。 |
03.02.03 |
モノスペース |
一つの書体中で,主要な文字の字幅がすべて等しくなるようにデザインされていること。 |
mono-space |
和文書体の各文字は,一般にモノスペースであり,正方形の中にデザインされる。 |
03.03 |
サイドベアリング |
欧文グリフの左端から仮想ボディの左辺又は右端から仮想ボディの右辺までの長さ。 |
side bearing |
左側のサイドベアリングをLSB(Left Side Bearing),右側のサイドベアリングをRSB(Right
Side Bearing)と表記することがある。 |
03.04* |
xハイト |
欧文フォントのベースラインからの小文字xの高さであって,小文字の高さの基準(ISO TR 9544参照)。 |
x-height |
小文字のxは,文字の下端をベースライン上にそろ(揃)えてデザインされている。オーバシュートがないため,文字の高さの基準として用い,キャップハイトに比較して小文字の大きさを示す。 |
03.05* |
キャップハイト |
欧文フォントのベースラインからの大文字の高さ。 |
cap height |
キャップハイトは,書体ごとに異なる。 |
03.06* |
アセンダ |
b,d,f,h,k,l,tなどの文字の,xハイトよりも上に伸びている部分。 |
ascender |
ISO TR 9544参照。 |
03.06.01 |
アセンダライン |
アセンダの最上部を示す,ベースラインに平行な仮想の線。 |
ascender line |
|
03.07* |
ディセンダ |
g,j,p,q,yなどの文字の,ベースラインより下に伸びている部分。 |
descender |
ISO TR 9544参照。 |
03.07.01 |
ディセンダライン |
ディセンダの最下端を示す,ベースラインに平行な仮想の線。 |
descender line |
|
03.08* |
オーバシュート,オーバハング |
O,A,Vなどの,上部又は底部が円弧状又は鋭角的な字形を,ベースライン又はキャップライン(小文字の場合はxハイト)よりも少しはみ出してデザインすること。又は,その輪郭線を用いて形状を記述する方式のフォント(JIS X 4163参照)。 |
overshoot, overhang |
これらの文字を他の文字と同じ高さにそろ(揃)えてデザインすると,視覚的に小さく見える傾向がある。オーバシュートはそれを補正する。
キャップラインは,キャップハイトを通る,ベースラインに平行な仮想の線。 |
03.09 |
右付き |
(1) 文字を仮想ボディの右寄りにデザインすること。 (2) (1)に従ってデザインした文字。 |
right script |
|
03.10 |
左付き |
(1) 文字を仮想ボディの左寄りにデザインすること。 (2) (1)に従ってデザインした文字。 |
left script |
|
03.11* |
上付き |
(1) 文字を仮想ボディの上寄りにデザインすること。 (2) (1)に従ってデザインした文字。 |
superscript |
|
03.12* |
下付き |
(1) 文字を仮想ボディの下寄りにデザインすること。 (2) (1)に従ってデザインした文字。 |
subscript |
|
03.13 |
中心付き |
(1) 文字を仮想ボディの字幅方向の中心にデザインすること。 (2) (1)に従ってデザインした文字。 |
mid-allocation |
文字の近くにつけて注意を促したり,その部分を強調する場合の圏点などに使用。 |
03.14* |
ルビ |
文字の近くにつけてその文字の読み,意味などを示す小さな文字。 |
ruby |
原則として縦書きの場合は右側,横書の場合は上側に添える。
ルビの組み方には,中付きルビ,肩付きルビ,モノルビ,グループルビ(割りルビ)などがある。ルビ文字の大きさで分類すると二分ルビ,三分ルビなどがある。 |
03.15 |
文字サイズ |
文字の大きさ。ディジタルフォントでは仮想ボディの行送り方向の高さと等しい。 |
character size |
文字大きさを表す単位としては,JISのポイント(1ポイント=0.3514mm)及びQ数(1Q=0.25mm)が主に用いられている。新聞用活字は, 1U(0.011inch)を文字サイズの単位とする。 |
03.15.01 |
Q数 |
仮想ボディの大きさを表す単位。 |
Q |
1mmの4分の1の大きさで,quarterの頭文字をとってQで表す。 |
03.15.02* |
ポイント |
仮想ボディの大きさの単位。1ポイントは0.3514mmに等しい。 |
point |
ポイント制は,いくつかある(フルニエ式,ディドー式など)が,我が国では,アメリカ式ポイント制を常用している。校正・編集作業では,“ポ”と表記する。 |
03.15.03 |
倍数 |
全角の字数によって表した組版指定用の単位。 |
multiple |
和文組版では,使用する文字の全角の倍数で,組版の寸法,込め物の大きさなどを表す。
欧文組版では,1パイカ(12ポイント)の倍数で表す。 |
03.15.04 |
ユニット |
欧文フォントなどのプロポーショナルフォントの横幅を提示したり字間又は語間のスペースを測る際に用いる単位。 |
unit |
1エムの分割数。 |
03.15.05 |
全角 |
高さと幅の比が1である文字の大きさの相対単位。 |
zenkaku |
欧文文字のエムに相当する。 |
03.15.06* |
エム |
欧文における文字サイズを示す正方形の幅。 |
Em |
本来は,欧文文字のMが高さと幅との比がおよそ1であることから,エムを全角として扱ってきた。ISO TR 9544参照。 |
03.15.07 |
半角,二分(にぶん) |
全角の2分の1の長さ。 |
hankakau |
縦組における8ポイント二分のスペースは,幅が8ポイントであり,高さが4ポイントである。 |
03.15.08* |
エン |
欧文の文字サイズの半分の幅。 |
En |
本来は,欧文文字のNが高さと幅との比がおよそ1/2であることから,エンを半角として扱ってきた。ISO TR 9544参照。 |
03.15.09 |
二分四分(にぶしぶ) |
全角の4分の3の長さ。 |
(3/4)zenkaku |
二分+四分。 |
03.15.10 |
三分(さんぶん) |
全角の3分の1の長さ。 |
(1/3)zenkaku |
|
03.15.11 |
四分(しぶん,しぶ) |
全角の4分の1の長さで,スペース,約物などの大きさを表す。 |
(1/4)zenkaku |
|
番号
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用語
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定義
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対応英語
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参考
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04.01 |
グレースケールフォント |
白・黒の2値以外に中間調も用いて形状を表現する方式のフォント。 |
grayscale font |
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04.02* |
アウトラインフォント |
任意の座標点間を直線又は曲線で結び,輪郭線を構成することで形状を表現するフォント。 |
outline font |
アウトラインフォントでは,曲線表現のために円弧を用いる場合がある。 |
04.02.01 |
円弧 |
円周の一部分。 |
arc |
|
04.02.02* |
ベジェ曲線 |
3次のパラメタをもつ次の等式から算出する近似曲線
x(t)=axt3+bxt2+cxt+X0
y(t)=ayt3+byt2+cyt+Y0
点(X0,Y0)を開始点とし,
点(X3,Y3)を終了点とする。
これらと関連して,
制御点(X1,Y1)及び(X2,Y2)がある。 |
Bézier curve |
ベジェ曲線は,
点(X0,Y0)から点(X1,Y1)への線区間と
点(X0,Y0)で接し,点(X2 ,Y2)から点(X3,Y3)への線区間と
点(X3,Y3)で接する。 |
04.02.03 |
拡張ベジェ曲線 |
ベジェ曲線の式にふくらみを制御する係数を導入し,始点終点間の曲線のふくらみを変化できるようにした近似曲線。 |
modified bezier curve |
複数のベジェ曲線での表現が,一つの拡張ベジェ曲線で可能になる。 |
04.02.04 |
コニック曲線 |
円すい(錐)曲線。 |
conic curve |
円,だ(楕)円,放物線,及び双曲線がある。 |
04.02.05 |
スプライン曲線 |
スプライン関数を用いて生成した曲線。 |
spline curve |
スプライン関数は,複数の点を通過する曲線で,各点の間の区間ごとに別の多項式で定義され,区間相互がなめらかに接続している。
元来,スプライン関数は造船などの分野で,木材などの弾力のある材料を重りで変形させて得られるなめらかな曲線形状を数学的に近似する目的で考案され,種々の形式の関数が用いられるようになった。 |
04.02.06 |
Bスプライン曲線 |
Bスプライン基底関数を用いて生成した曲線。 |
B-spline curve |
ベジェ曲線と同様に,多角形の頂点を制御点として曲線を表現する。特定区間だけで0でない値をとる正規化されたBスプライン基底関数を用いるので,制御点の効果が局所化される利点がある。
ベジェ曲線と比較して,曲率まで連続でなめらかに接続する曲線を表現しやすい。 |
04.02.07 |
ノンゼロワインディング規則 |
ある点が多角形の内部に含まれるか否かを判定する方法。 |
non-zero winding rule |
ある点から多角形の外に水平の仮想の線分を引いたとき,その線分と交わるすべての辺について,その線分の下側から上側に向かって交わる場合を-1とし,上側から下側に向かって交わる場合を1とする数の総和が0でないとき,その点は多角形の内部に含まれる。 |
04.03 |
ストロークフォント |
グリフ形状を,その画線の骨格線のベクトルによって表現する方式又はその方式を用いたフォント。 |
stroke font |
|
04.04 |
ビットマップフォント |
2値のビットの集合が形成するパターンとしてグリフの形状を表現するフォントデータ形式。 |
bitmap font |
|
04.04.01 |
ランレングスデータ |
連続する白又は黒の1次元連結画素の個数でビットマップを圧縮するデータ記述方法で記述されたデータ。 |
run-length data |
|
04.05 |
ドットフォント |
画素の集合が形成するパターンとしてグリフの形状を表現するフォントデータ形式。 |
dot font |
|
04.06* |
グリフ座標系 |
グリフ形状及びグリフ配置量を定義するのに用いる2次元デカルト座標系(JIS X 4161参照)。 |
glyph coordinate system |
|
04.07* |
区間 |
単一の描画命令で生成した曲線又は直線(JIS X 4163参照)。 |
segment |
|
04.08 |
データ点 |
文字の形状表現を行うための座標点。 |
data point |
|
04.08.01 |
データ点属性 |
座標点を処理する際に特定の働きをさせるために,データ点にもたせる情報。 |
attribute of data point |
例えば,“輪郭の開始点”,“直線又は曲線とのなめらかな接続点”の属性がある。 |
04.09* |
ステム |
グリフ形状を構成する主要な画線。主として欧文フォントに用いる。JIS X 4163では漢字にも適用している。 |
stem |
JIS X 4163参照。 |
04.09.01* |
ステム幅整合 |
装置独立の輪郭線表現における公称幅の異なるグリフステムの集合を,ビットマップ表現へ変換するに際して,強制的に同じ幅にするための機構。 |
stem snap |
JIS X 4163参照。 |
04.10* |
ヒンティング |
ラスタ装置上での表示のためのラスタ化に際して,グリフの均整及び特徴を保存するための,グリフの幾何形状に付加する手続き指定情報又は宣言的な指定情報。 |
hinting |
JIS X 4163参照。 |
04.10.01* |
ヒント域 |
グリフごとに適用されるヒント演算子に関する一対のオペランドが定義した位置の間の範囲(両端を含む)。 |
hint zone |
ヒント域の外側の境界は,ステムなどのグリフ形状の極点であるパス区間端点の正確な位置を指定する。JIS X 4163参照。 |
04.10.02* |
欧文フォントの基準位置 |
主に平らな形の字形先端がそろ(揃)う,並び位置。(図4.1を参照) |
flat position |
平らな形状が何であるかは,書体デザイナの美的判断による。字形先端がほとんど平らであれば,基準位置にそろ(揃)えるのがよい。
基準位置の概念は,CENTREALIGNのALIGNNAME属性の値をもつフォント,又はTOP-TO-BOTTOMのWRMODENAME属性の値をもつフォントには, 一般的に適用しない。JIS X 4163参照(図4.1を参照)。 |
04.10.03* |
欧文フォントの並び位置 |
主に字形の先端がY方向にそろ(揃)う位置のY座標値。 |
alignment position |
JIS X 4163参照(図4.1を参照)。 |
04.10.04* |
欧文フォントの並び域 |
二つの並び位置の間の範囲。 |
alignment zone |
JIS X 4163参照(図4.1を参照)。 |
04.10.05* |
仮想ステム |
Y方向のグリフ上端及びベースライン位置をそろ(揃)えるためにグリフの上端及び下端に想定する水平方向のヒント域。 |
ghost stem |
JIS X 4163参照。 |
番号
|
用語
|
定義
|
対応英語
|
参考
|
07.01 |
和文書体 |
日本語を表示するための書体。 |
Japanese typeface |
書体を構成する文字は,漢字,仮名,欧文,約物,記号などを含む。仮名,欧文については,他の書体と組み合わせて使用することも多い。 |
07.01.01 |
明朝体 |
細い横線及び太い縦線から構成され,横線の終筆部及び角にウロコ状のアクセントがある代表的和文書体。 |
Mincho |
中国では明朝体のことをそう(宋)体と呼ぶ。 |
07.01.02 |
そう(宋)朝体 |
そう(宋)朝時代に創案された木版用のかい(楷)書体に類似した書体。横線が右上がりであることを特徴とする。 |
Socho |
図7.1 そう(宋)朝体の例
|
07.01.03 |
ゴシック体 |
文字の線の太さが縦横ともほぼ同じで,起筆部及び終筆部に特別なエレメントをもたない書体の中で代表的な和文書体。 |
Gothic (Japanese) |
明朝体とならんで代表的な和文書体。欧文でいうゴシックとは,デザインが全く異なり,サンセリフ系である。米国でサンセリフをゴシックと呼ぶことがあったので,そのように呼ばれる。
打ち込み・止めに若干の毛筆の名残りを留めているゴシック体もある。 |
07.01.04 |
丸ゴシック体 |
画線の端及び角が丸いゴシック体。 |
round Gothic (Japanese) |
画線の端が丸い丸ゴシック体に対比して,画線の角が丸いゴシック体のことを角丸ゴシック体ということもある。 |
07.01.05 |
てん(篆)書体 |
線幅の変化がほとんどなく,上から下へ運筆して垂れ下がった要素をもつ書体。 |
Tensho style |
てん(篆)書には,中国の周時代に作られた金文様式の大てん(篆)及びそれをしん(秦)時代に簡易化した小てん(篆)がある。現在では印鑑などに用いる。 |
07.01.06 |
隷書体 |
はたく(波磔)の筆法の特徴をもつ書体。 |
Reisho style |
隷書は,中国のしん(秦)時代に小てん(篆)を簡素化して速く書けるようにした書体。和文用には,仮名文字もあり,年賀状,商号,ロゴなどに用いる。
図7.2 隷書体の例
|
07.01.07 |
かい(楷)書体 |
一点一画を直線的に正しくきちんと書いた特徴をもつ書体。 |
Kaisho style |
かい(楷)書は中国のぎ(魏),しん(晋),唐時代に広く使われるようになった書体である。漢字の正体という意味で正かい(楷)書ともいう。正式な案内状,年賀状などに用いる。
図7.3 かい(楷)書体の例
|
07.01.08 |
教科書体 |
毛筆の余分な筆さばきを抑え,字体を分かりやすくしたかい(楷)書系の書体。 |
Kyokasho style |
明治時代に尋常小学校低学年用に教育的見地から作られた。現在でも小学校低学年用教科書などで用いる。 |
07.01.09 |
行書体 |
文字を構成する点画のつながりがなめらかである書体。 |
Gyosho style |
行書は,漢字又は仮名を速く書くときの運筆の要素が加わった書体であり,文字自体の骨格はかい(楷)書に近く可読性はよい。年賀状,あいさつ(挨拶)状などに用いる。
図7.4 行書体の例
|
07.01.10 |
草書体 |
行書をさらに崩した筆法の特徴をもつ書体。 |
Sosho style |
草書は,隷書などを簡素化して書写した結果生まれた。可読性が低いため,印刷書体としてはあまり用いない。
“草”は,“急いで書く”,“下書きとして書く”の意味をもつ。
図7.5 草書体の例
|
07.01.11 |
江戸文字 |
江戸時代に興行の看板,番付などに用いられた書体の総称。 |
Edo style |
勘亭流,寄席文字,かご(篭)文字,ひげ(髭)文字,相撲文字,ちょうちん文字,角字などがある。 |
07.01.12 |
古印体 |
古い印章の書体に似せた書体。画線にかすれ又は虫食いを施し,古めかしい雰囲気を出した書体。 |
Koin style |
落かん(款)などに使うが,見出しなどにも用いる。
図7.6 古印体の例
|
07.01.13 |
アンチック体 |
起筆部が肉太で,画線の太さが一様でない, 平仮名及び片仮名のための書体。 |
antique |
和文書体の種類が少なかった時代に,見出しなどに変化を付けるために作られた。 |
07.02 |
欧文書体 |
ラテンアルファベットを表示するための書体。 |
Roman typeface |
この書体を適用する文字は,記号,約物などを含む。 |
07.02.01 |
人文主義書体,ベネティアン |
14〜15世紀のペン書法に基づく,ローマン様式の書体。 |
humanist, Venetian |
縦画と横画との太さの差が少なく,中心軸が左に倒れ,曲線部分,クロスストロークは傾いて,ブラケットセリフをもつなどの形状的特徴をもつ。代表的なものにCentaur, Cloisterなどがある。 |
07.02.02 |
ギャラルド,オールドスタイル |
16世紀のアルダス マヌティウス,クロード ギャラモンドなどが用いた活字様式の書体。 |
Garalde, old style Roman |
形状的に,人文主義書体よりも縦画と横画との差が大きい。代表的なものにGaramond, Bemboなどがある。 |
07.02.03 |
過渡期書体 |
17世紀から18世紀初頭のローマンの特徴をもつ書体。 |
transitional |
ギャラルドと比較すると曲線部分の中心軸は垂直かわずかに左に傾いている。代表的なものに,Foumier, Baskervilleなどがある。 |
07.02.04 |
ディドン,モダンスタイル |
18世紀後半から19世紀に広く用いられたローマン様式の書体。 |
Didone, modern, Roman, classicist |
縦画と横画との差が大きく,曲線部分の中心軸は垂直で小文字のアセンダは水平であり,セリフにブラケットのないものもある。代表的なものにBodoni, Walbaum, Corvinusなどがある。 |
07.02.05 |
スラブセリフ,エジプシャン |
縦画と横画との差が極めて小さく,く(矩)形のセリフをもつ,19世紀に現れたローマン様式の書体。 |
slab-serif, Egyptian |
代表的なものに,Rockwell, Clarendon, Stymieなどがある。セリフについては図7.12を参照。 |
07.02.06 |
リニアル,サンセリフ |
19世紀に現れたセリフのない書体又はその様式の書体。 |
lineale, sans serif |
さらにグロテスク,ネオグロテスク,ジェオメトリック及びヒュマニストの四つに細分される。 |
07.02.06.01 |
グロテスク |
19世紀にデザインされたリニアルの書体又はその様式の書体。 |
grotesque |
ステムの太さに幾分のアクセントがあり,曲線部分に滑らかさを欠く場合もある。代表的なものにGrotesque, News Gothicなどがある。 |
07.02.06.02 |
ネオグロテスク |
20世紀初めに現れ,1950年代に数多くデザインされたリニアルの一様式。 |
neo-grotesque |
グロテスクよりは画線は視覚的に均等で,曲線部は滑らかである。本文書体としての使用も考慮してデザインされている書体も多い。代表的なものに,Univers, Helveticaなどがある。 |
07.02.06.03 |
ジェオメトリック |
20世紀初頭に現れた,幾何形態を字形要素とした書体。 |
geometric |
直線,円,円弧,く(矩)形などから構成される。代表的なものに,Gill Sans, Futuraなどがある。 |
07.02.06.04 |
ヒュマニスト |
石彫りのローマンの大文字と人文主義又はギャラルドの小文字とをベースとしたリニアルの一様式。 |
humanist |
画線にコントラストがある場合もあり,本文書体としての使用も考慮した書体も多い。代表的なものに,Optima, Syntaxなどがある。 |
07.02.07 |
グリフィック |
彫刻文字の様式に類似した書体。 |
glyphic |
主に見出しに使われる。代表的なものに,Neuland, Albertusなどがある。 |
07.02.08 |
スクリプト |
手書き筆記体様式の書体。 |
script |
主に見出し社交状の印刷物に使う。代表的なものに,Palace Script, Mistralなどがある。 |
07.02.09 |
グラフィック |
筆書的ではなく,造形的なデザインの書体。 |
graphic |
代表的なものにLibra, Cartoon, Old Englishなどがある。 |
07.02.10 |
ローマン |
直立体で横線は細く,縦線が太く,かつ,セリフが付いているのが特徴の代表的欧文書体。 |
Roman |
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07.02.11 |
イタリック |
右に傾いた筆書系の欧文書体。 |
Italic |
スラントは,光学的又は電気的に字形を斜めにすることであって,イタリックとは区別する。イタリアのアルダスが16世紀に開発した。 |
07.02.12 |
ゴシック |
手写本用にペン書きされた規範となる書体として確立され,活字化された書体 |
Gothic |
伝統的なゴシックは,ブラックレターとも呼ばれる。米国では,サンセリフの太さの均一な装飾のない書体(リニアル)をゴシックという。 |
07.02.13 |
カーシブ |
ペンの筆法に基づく欧文書体。 |
cursive |
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07.02.14 |
ブラシュ |
毛筆の筆法に基づく欧文書体。 |
brush |
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07.02.15 |
タイプライタ書体 |
(1) 主にタイプライタで用いる欧文書体。 (2) タイプライタの印字を模した書体。 |
typewriter typeface |
タイプライタでは,主に1inchの中に10文字収まるパイカ(pica)又は1inchの中に12文字収まるエリート(elite)が用いられる。 |
07.03 |
タイプスタイル |
ある書体のファミリを成す字形様式。 |
type style |
欧文書体のイタリック,ボールド,コンデンス,エキスパンドなどをいう。 |
07.04 |
スモールキャップ |
欧文の大文字だけをxハイトとほぼ同じ高さに作った書体。 |
small cap |
章の始めの語句,年号を示すA.D., B.C.などに用いる。 |
07.05 |
イニシャルキャップ |
章の始め又は段落の始めに使う,サイズの大きい(時には飾りの付いた)欧文書体の大文字字形の文字。 |
initial cap |
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07.06 |
オーナメント |
イニシャルキャップ,見出しなどに使われる飾りの付いた書体。 |
ornamented letter,decorated letter |
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07.07 |
モジュール |
欧文書体をデザインするときの基準となる寸法の集合。 |
module |
ベースライン,キャップライン,ミーンライン,ディセンダラインなどとして示す。 |
07.08 |
中文書体 |
中国語を表示するための書体。 |
Chinese typeface |
この書体を構成する文字は主に漢字であり,その字体には簡体(簡化文字)及び繁(はん)体がある。 |
07.09 |
ハングル書体 |
朝鮮語(チョソノ)をハングルで表示するための書体。 |
Hangul typeface |
ハングルは,母音と子音とを組み合わせて1字を構成する文字である。
文字デザインには,全字形としてデザインする方法,及び個々にエレメントとしてデザインした母音と子音とを組み合わせる方法がある。 |
07.10 |
本文書体 |
書籍,雑誌などの本文に使うことを目的とした書体。 |
text typeface,book typeface |
和文では明朝体,欧文ではローマンが多く,可読性を重要視した書体である。3〜5mmの大きさで使うことが多い。 |
07.11 |
見出し書体 |
見出しに使うことを目的とした書体。 |
display typeface |
可読性よりも訴求力を重要視した書体である。見出し以外にちらし,看板などにも使う。 |
07.12 |
新聞書体 |
新聞の本文,見出しなどで使うことを目的とした書体。 |
newspaper typeface |
日本では本文用新聞書体は偏平は明朝体で,ふところを大きくとり可読性を高めている。 |
07.13 |
装飾書体 |
造形的なデザイン効果に重点をおいた書体。 |
ornamental |
基本となる字体に,花柄,模様などを加えて作った書体。江戸文字もこの一種である。 |
07.14 |
シャドウ |
文字を陰影だけで表現し,立体感を出した書体。 |
shadow |
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07.15 |
アウトライン |
文字を輪郭線で表わした書体。 |
outline, open |
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07.16 |
インライン |
文字のストロークの幅の中央付近に線を加え,骨格を強調した書体。 |
inline |
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07.17 |
アウトラインシャドウ |
アウトラインに陰影を付けて立体的な感じを表現した書体。 |
outline shadow |
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07.18 |
ステンシル |
型紙(ステンシル)で転写したようなデザインの書体。 |
stencil |
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07.19 |
リバース |
背景色の仮想ボディに対し文字の線画部分が白く抜けいている書体。 |
reverse |
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07.20 |
毛筆書体 |
毛筆で書いた感じを残した書体の総称。 |
brush style typeface |
あいさつ(挨拶)状,案内状などに使用されている。毛筆書体には隷書体,行書体,草書体,かい(楷)書体などがある。 |
07.21 |
硬筆書体 |
鉛筆,万年筆,フェルトペン,ボールペンなどのような先の堅い筆記具で書いた感じを残した書体の総称。 |
pen style typeface |
個人が手書きで使用している文字の感じに近く,漫画,ちらしなどに用いる。 |
07.22 |
ポップ書体 |
フェルトペンの手書きスタイルを残した販促用に使用する書体の総称。 |
pop style typeface |
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07.23 |
ストローク |
一筆で書ける文字の部分。 |
stroke |
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07.24 |
エレメント |
字形を構成する要素。 |
element |
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07.24.01 |
漢字のエレメント |
漢字の字形を構成する要素。 |
kanji element |
名称及び分類は一定していないが,ここでは代表的なエレメント及びその部分の名前を図7.7に示す。
複合的なエレメントとしては,へん(偏),つくり(旁),かんむり(冠)(やねともいう。),あし(脚)[くつ(沓)ともいう。],にょう(にゅうともいう。),垂れ,構えなどがある。
代表的な複合エレメントを図7.8に示す。 |