この標準情報(TR)は, 2000年12月にWorld Wide Web Consortium(W3C)から公表されたXHTML™ Basic勧告を翻訳し, 技術的内容を変更することなく作成した標準情報(TR)である。
XHTML基本の文書型は, XHTMLホスト言語の文書型であるために必要なモジュールの最小セットを含み, さらに画像, フォーム, 基本表及びオブジェクトのサポートを含む。それは, XHTML機能のフルセットをサポートしないウェブクライアント, 例えば, 携帯電話, PDA, ページャ, セットトップ箱などのウェブクライアントのために設計されている。その文書型は, 内容編集をするには充分なものになっている。
XHTML基本は, 拡張可能な共通ベースとして設計されている。例えば, 従来のHTML 4のイベントシステムよりももっと共通的なイベントモジュールを追加でき, それは, スクリプトモジュールなどのXHTMLモジュール化からの追加モジュールによって拡張できる。XHTMLは, 各種の利用者エージェントがサポートする共通言語として役立つことを目標とする。
文書型定義は, "Modularization of XHTML" [XHTMLMOD]で定義されるとおり, XHTMLモジュールを用いて, 実装される。
HTML 4は, ウェブ内容を編集するための強力な言語であるが, その設計は, 機能(feature)の全集合の(電力, メモリ, その他における)実装コストを含み, 小規模装置に適合するための配慮はない。資源に制約のある民生用装置は, 一般的にはHTML 4の機能の全集合を実装することはできない。 ワールドワイドウェブにアクセスするために全機能装備のコンピュータを要求することは, オンライン情報及びオンラインサービスへの民生用装置アクセスから, 大部分の利用者を除外することになる。
HTMLをサブセット化するには多くの方法があるので, 組織及び会社によって規定されるほとんど同じ多くのサブセットが存在する。機能の共通ベースセットなしには, 広範囲なウェブクライアント用のアプリケーションを開発することは容易でない。
XHTML基本の動機は, (デスクトップコンピュータ, テレビなどの)コミュニティを越えて共有でき, 簡単な内容編集には充分に利用できるXHTML文書型を提供することにある。 XHTML基本の文書を新しい文書型の妥当文書の集合に入れる等の方法で, XHTML基本を拡張することによって, 新しいコミュニティ全体にわたる文書型を定義できる。 したがって, XHTML基本の文書は, 最大個数のウェブクライアントで表示できる。
XHTML基本の文書型定義は, XHTMLのモジュール化[XHTMLMOD]が規定するXHTMLモジュールに基づいて実装される。
情報家電が, 特定利用の対象となっている。それらは, その実行のために設計された機能(function)にとって必要な機能(feature)をサボートしている。さまざまな情報家電の例を次に示す。
これらのクライアントのための既存のHTMLのサブセット及び変形には, コンパクトHTML[CHTML], 無線マーク付け言語[WML]及び"モバイルアクセス用のHTML 4.0ガイドライン"[GUIDELINES]がある。 これらの文書型に見られる共通機能(common features)を次に示す。
HTML機能のこの集合が, XHTML基本の設計の起点であった。 多くの内容開発者は, これらのHTML機能を知っているので, それらは, "XHTMLのモジュール化"[XHTMLMOD]に示される方法に従って他の言語からのマーク付けモジュールと結合できる便利なホスト言語を構成する。 例えば. XHTML基本は, 従来のHTML 4のイベントシステムよりももっと共通的なイベントモジュールを用いて拡張でき, 又はスクリプトモジュールなどの, XHTMLモジュール化からの追加モジュールによって拡張できる。
将来の言語の機能を制限することは, XHTML基本の意図するものではない。 しかし, HTML 4の機能(フレーム, 高度な表, event handlers属性の固定集合, その他)は, デスクトップコンピュータ型のクライアントのために開発されたので, それらは, 多くの非デスクトップ装置には不適当であることが立証されている。XHTML基本は, 拡張されて組み込まれる。HTML 4の機能(function)のほとんど同じ部分集合又は大きすぎる集合ではなくて, 共通の基本的な機能(feature)集合からXHTMLを拡張することは, 拡大縮小可能性にとって望ましく, ウェブ上の相互接続性に関しても望ましい。
HTML 4の充実した機能性と比べると, XHTML基本は, 1歩後退のように見えるかもしれないが, 実際には, HTML 4にあるものを必要としないクライアントにとっては, 及び多くを必要とせずに一つのXHTMLサブセットを得る内容開発者にとっては, それは2歩前進となる。
この1.3では, なぜ, あるHTML機能が, XHTML基本の一部でないかを示す。
style
要素はサポートされていない。
外部のスタイルシートは, 推奨される。
link
要素は, 外部のスタイルシートを含むのに使用できる。
div
要素, span
要素, 及びclass
属性は, スタイル情報を構造に取り付けるためにサポートされる。
構造と表示との間の分離は, 利用者エージェントに対して, それがスタイルシートをサポートしていれば, スタイルシートをダウンロードすることを可能にする。スタイルシートをサポートしない利用者エージェントは, 外部のスタイルシートを無視できる。
media
属性は, 適切なスタイルシートを選択するのに使用できる。
詳細については, HTML 4.01規定の"Media types"の節([HTML4], 14.2.4)を参照されたい。
script
要素及びnoscript
要素は, サポートされない。
通常, 小規模装置がもつメモリ及びCPUパワーには制約がある。スクリプトプログラムの実行は, サポートされないこともある。たとえスクリプトが実行されなくても, 内容は読出し可能でなければならない。
スクリプトプログラムを呼び出すのに使用するevent handler属性は, サポートされない。 イベントは, 装置依存とする。incoming-callイベントは, テレビでは起こりそうにない。 共通イベント操作機構は, イベント名を文書型定義に組み込むよりも適切と言えよう。
多くの簡単なウェブクライアントは, 固定ピッチでないフォントを表示できない。双方向テキスト, ボールドフォント, 及び他のテキスト拡張要素は, サポートされない。
装置に適した表示を生成するためにスタイルシートを使用することは, 推奨される。
基本XHTMLフォーム([XHTMLMOD], 5.5.1)は, サポートされる。 局所ファイルシステムをもつ装置だけが, フォームの中でファイル入力型及び画像入力型を利用できるので, それらは基本フォームには含まれない。内容開発者は, 利用者がある装置(例えば, 携帯電話から)からの多くの文字を入力できないことがあることも念頭におく必要がある。
基本XHTML表([XHTMLMOD], 5.6.1)はサポートされるが, 表を小規模装置に表示することが困難であることもある。内容開発者は, アクセス可能な表の生成([WCAG10], Guideline 5)のために, ウェブ内容アクセス可能性ガイドライン1.0(Web Content Accessibility Guidelines 1.0)に従うことを推奨する。基本表モジュールでは, 表の入れ子は禁止されることに注意されたい。
フレームはサポートされない。フレームは, 画面インタフェースに依存し, 電話, ページャ, 時計などの小規模家電には適用できないこともある。
適合XHTML基本の文書は,この規定で必須として示された機能だけを要求する文書とする。それら文書は,次の基準のすべてを満たさなければならない。
<html>
でなければならない。
http://www.w3.org/1999/xhtml
,でなければならない。
<!DOCTYPE html PUBLIC "-//W3C//DTD XHTML Basic 1.0//EN" "http://www.w3.org/TR/xhtml-basic/xhtml-basic10.dtd">
利用者エージェントは,XHTML 1.0規定の"利用者エージェント適合性"([XHTML1]の3.2)に適合しなければならない。
XHTML基本の文書型は,XHTMLモジュールの集合として定義される。すべてのXHTMLモジュールは,"XHTMLのモジュール化"[XHTMLMOD]の規定で定義される。
XHTML基本は,次のXHTMLモジュールから構成される。
body, head, html, title
abbr, acronym, address, blockquote, br, cite, code, dfn, div, em,
h1, h2, h3, h4, h5, h6, kbd, p, pre, q, samp, span, strong, var
a
dl, dt, dd, ol, ul, li
form, input, label, select, option, textarea
caption, table, td, th, tr
img
object, param
meta
link
base
(*) = このモジュールは,必須のXHTMLホスト言語モジュールとする。
XML 1.0 DTDは,附属書Bで利用可能とする。
備考 HTMLのevent handler属性はXHTML基本には含まれないので,フォームの外部のフォーム制御は,利用者が期待するとおりには機能しないかもしれない。
XHTML基本は,それ自体として,すなわち,テキスト,リンク及び画像を伴った単純なXHTML言語として使用できるが,その単純な設計は,ホスト言語として使用することを意図している。ホスト言語には,一つの文書型へとまとめられるすべての語い(彙)の混合が含まれる。XHTMLは大部分のウェブ開発者が使用するものなので,これをホスト言語とすることは自然なことである。
他の言語からのマーク付けがXHTML基本に追加される場合には,その結果生じる文書型は,XHTML基本の拡張となる。内容開発者は,XHTML基本のために開発することができるし,その拡張を利用することもできる。XHTML基本の目指すことは,多様な種類の利用者エージェントがサポートする共通言語として役に立つこととする。
この標準情報(TR)の原規定は,W3C HTML作業グループによって準備された。そのメンバは次のとおり。
原規定への寄与,審議及び検討に参加してもらったので, Gary Adams (Sun Microsystems), Jonny Axelsson (Metastasis design), Peter Chen (Philips), Dan Connolly (W3C), John Cowan (Reuters), Martin J. Dürst (W3C), Johan Hjelm (Ericsson), Ian Jacobs (W3C), Susan Lesch (W3C), Louis Theran (Nokia), Quinton Zondervan (Lotus), W3C Mobile Access Interest Groupのメンバ, W3C Synchronized Multimedia Working Group, W3C WAI Protocols and Formats Working Group, 及び WAP Forum にも感謝する。