インタネット等を用いたWeb環境の普及によって, 国際的な文書交換が日常化し, さらに1文書中に複数の言語(またはスクリプト)を含む文書の交換が多くなっている。このような文書の交換に際しても, 従来の活版印刷等と同様の品質の可視化出力が望まれる。
ISO/IEC JTC1は, 可視化出力のためのグリフに関して, それが無限集合になることを前提として, 利用者の登録に基づくグリフ識別子のコンセプトを導入し, その登録手続きを標準化している(ISO/IEC 10036)。グリフ識別子で指定されたグリフ像を必要なタイプフェース(書体)で指定のレンダリングを施せるように, フォントリソースのデータ構造を標準化している(ISO/IEC 9541[JIS X 4151〜4153])。
このデータ構造は, ラテン系グリフだけでなく, 漢字圏のグリフ, アラビックグリフ等への配慮も払われており, それらを含む混植に必要な属性定義も行われている。しかしそれらを実際の処理系に適用して, 多言語のグリフを含むフォーマット済み文書を記述し交換するためには, 詳細な属性定義, 属性の選択範囲等の規定が不足している。
この調査研究においては, 平成9年度に行ったアジア諸国の文字表現調査研究等の成果を参照して, 多言語文書のフォント情報交換に必要な各種属性規定をまとめ, それを国際規格としてISO/IEC JTC1に提案する。
(1) アジア諸国の文字表現に関するこれまでの調査研究によって収集した混植等における各種レンダリングのサンプルデータを整理し, 必要に応じて統計処理などの手法を用いて, フォント属性としての指針を求める。
(2) それをフォントリソースの体系の中に組み入れられるように, 標準的な記法を用いて規格としてドラフトする。
(3) アジア諸国のフォントエキスパートに対してその規格素案のレビューを求め, コメントをいただく。そのコメントに基づいて規格素案を修正し, ISO/IEC JTC1に提案する。
アジア諸国のフォントエキスパートによるレビューと議論の場としては, JTC1の文書関連規格のアジアへの適用性の議論の場として5年間の実績のある日中韓文書処理会議(CJK-DOCP[JTC1/WG4 informal liaison])の利用が適当と思われる。
課題 H10前半 H10後半 H11前半 H11後半 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− (1) −−−−−> −−−−−−−−> −−−−−> (H9成果に基づく) (追加データ) | | | | | | V V V V (2) | WD1 WD2 Comm Draft DIS作成 | | | | | | | | | V V | | V | | | | (3) CJK-DOCP CJK-DOCP | CJK-DOCP | CJK-DOCP | にinform レビュー | 再レビュー | コメント | V V | V JTC1/WG4に Vote Comments Vote Proj提案
06-16, 10:00-12:00, 作業計画策定 07-22, 10:00-12:00, 追加フォント属性の検討 08-25, 14:00-17:00, 組版関連フォント属性の検討, MLIT-3 paperドラフト 09-25, 14:00-17:00, MLIT-3 presentation準備 11-02, 14:00-17:00, SC34 meeting提案文書準備 11-30, 14:00-17:00, SC34 meeting報告 12-28, 14:00-17:00, CJK-DOCP meeting準備 02-01, 10:00-12:00, 3rd WD/AM3ドラフト 03-02, 14:00-17:00, 3rd WD/AM3ドラフト
多言語をサポートするフォント情報の規格充実を目的として, 現状のISO/IEC 9541が対応していない次の機能の標準化を行う。
これらの課題を3フェーズに分けてアプローチを行う。
国際的な予備的検討は, MLITシンポジウム, 日中韓文書処理会議(CJK-DOCP)などで行い, 成果は, JTC1/SC34に提出して, ISO/IEC 9541のAmendments(Propertyのvaluesは, 9541の追加Annex)又は追加partとする。
フォント規格検討WGで検討した多言語文書のフォント情報交換に必要な各種属性に対する東アジア諸国のユーザ要求(付録A.7.4参照)を確認するため, 次の文書を1st WD 9541-1/AM3として位置付け, 第3回のMLIT (International Symposium on Standardization of Multilingual Information Technology)に提出して, そこで規定されるフォントリソース属性の意味と記述方法を説明した。
1998年10月7日にハノイで開催されたMLIT-3 conferenceには, China, Laos, Malaysia, Mongolia, Myanmar, Nepal, Philippines, Srilanka, Thailand等の東アジア諸国からエキスパートが集まり, 積極的な議論が行なわれた。
各種属性に対するあらかじめ想定したユーザ要求は確認され, その国際規格化への期待が強調された。JTC1/SC34に対する今後の参加を希望したエキスパートが現れたことも, MLIT-3での本件のプレゼンテーションの成果と言えよう。
MLIT-3で確認したアジア諸国のユーザ要求に基づいて, さらにフォント規格検討WGにおいて議論したISO/IEC 9541に対する拡張を国際規格に反映させるため, 1998年11月にChicago, USで開催されたISO/IEC JTC1/SC34会議にこの課題をSC34/Japan経由で提出した。
このISO/IEC JTC1/SC34会議に関する詳細は, SC34/JapanのWebページの
http://www.y-adagio.com/public/committees/wg8_jap/discussion/1998/sc34-2/2-2/rpsc34.htmに掲載してある。
次のresolution(SC34 N023)のとおり, NP手続きではなく, SubdivisionによるAM3 to ISO/IEC 9541のprojectの設立が決まった。JTC1へのendorseがあるが, 実際にはもう活動を開始できる状態である。(1999年1月のJTC1総会でこのプロジェクトは承認された。)
Resolution 4: SC 34 Project Subdivision
SC 34 approves the following subdivision of Project 34.27.01:
New amendmant to 9541-3をsubdivisionで対処すべきか, NP提案を出すべきか, NPとすれば, SCが出すのが適当かNBが出すべきか, またNPとすれば, 従来のSC内での事前NP手続きが必要かを, ChairmanのJ. Masonに問い合せた。これに, 参考のため, MLIT-3に提出した寄書の部分的修正版である次の文書を添付した。
- Preliminary Discussions on Additional Font Properties Required for Multilingual Document Interchange (pr_disc.htm)
- New Work Item Proposal (Preliminary) (np_drft.htm)
このレターに対して, J. Masonから, Chicago会議でSecretariatと相談したいとの回答を得た。
なおこの添付文書(np_drft.htm)に示したPurpose and justificationの記述が, Resolution 4(SC34 N023)のRationaleに転載された。
Opening Plenaryで従来のFont Project JTC1.18.27の活動報告を行い, この報告の中で, ISO/IEC 9541の新Amendmentの要求があること, MLIT-3でそれを確認したこと, を報告した。
WG2(フォントとスタイル指定)の中のFont Groupでの議論の結果, ISO/IEC 9541の新AMをSubvivisionで行うことにして, その承認をSC34の Closing plenaryで求める決定をした。
Font Groupの報告を承認するとともに, ISO/IEC 9541の新AMをSubvivisionで行うことをResolution(SC34 N023)で明記した。
AM3 to 9541-1のPDAMテキストを次回の会議(1999-04, in Spain)までに用意する。その前に, CJK DOCP(1999-01, Taipei)において東アジアのフォントエキスパートとの議論を行う。
ISO/IEC JTC1/SC34で承認されたプロジェクトで扱うISO/IEC 9541-1 AM3の素案をフォント規格検討WGで検討してきた。この内容に対してさらに日本以外の国(特に東アジア諸国)のエキスパートによってレビューを受けるため, 1999年1月に台北で開催された第12回日中韓文書処理会議(CJK-DOCP)にその素案を提出し, 議論の場をもった。
この日中韓文書処理会議に関する詳細は, CJK-DOCPのWebページの
http://www.y-adagio.com/public/committees/cjk_docp/mtg_12/mtg12_dc.htmに掲載してある。
日本からの9541-1 PDAM3(Interlinear Objectに関する提案)をはじめとして, 日本, 中国, Thaiの言語処理/組版規則, スタイル指定に関する発表が行われ, 活発な議論が展開された。
まず, 1998年10月のハノイでのMLIT-3シンポジウムで発表した内容を説明し,ISO/IEC JTC1/SC34のシカゴ会議でもその必要性が認められ, SC34のSubdivisionとして9541-1 PDAM3の審議が承認されたことを報告した。ここまでの検討では, 日本語文書に見られるルビ, 送り仮名, 返り点, 圏点ごとに個別のプロパティを定義している。
これをさらに一般化した形で日本以外のアジア圏の国々の文書にも適用させるために"Proposal of generic interlinear object model (行間オブジェクト共通モデルの提案)"を作成した。今回のCJK DOCP会議で奥井がこの内容について説明した。
これに対し, アメリカやドイツの研究者から次のようなコメントが出た。
1,2 に対しては, これらのプロパティがフォーマット後の値として持つものであることを説明。3 については, 1文字の場合は, その位置に関らず現在のプロパティによってInterlinear objectとして処理が可能であることを説明した。ただし, 返り点で1個所に複数の文字が置かれることがあるかどうかについては要調査とした。
CJK-DOCPでは各国のエキスパートからコメントが提出され, これらを反映したISO/IEC 9541-1/AM3の3rd WDを作成することになった。 その内容は日本の要求にも合致するものである。
3rd WD 9541-1/AM3(またはその改訂版)を1999年4月のISO/IEC JTC1/SC34会議に提出して, PDAMテキストとして受理してもらい, PDAM手続きを開始することの承認をとる。 その投票結果を反映してDAM3テキストを作成し, 次の手続きに入る。 技術的な詳細検討は, さらに日中韓文書処理会議およびMLITシンポジウムで議論する。
これらの手続きを行なうために委員を派遣する予定のある国際会議の開催予定を表3.3.1に示す。
表3.3.1 委員派遣予定の国際会議 期間 会議名 1999-04 JTC1/SC34 1999-07 13th CJK-DOCP 1999-11 MLIT-4 1999-12 JTC1/SC34 20000-1 14th CJK-DOCP
フォント属性と密接な関係にある文書のスタイル指定およびフォーマティングについても, 多言語文書に対する国際的検討は未だ充分ではない。今後の多言語文書情報交換の重要課題として念頭におく必要がある。